再生医療を目的としたアデノウイルスベクターによるES細胞への効率的な遺伝子導入・発現系の開発

文献情報

文献番号
200614073A
報告書区分
総括
研究課題名
再生医療を目的としたアデノウイルスベクターによるES細胞への効率的な遺伝子導入・発現系の開発
課題番号
H16-創薬-089
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
川端 健二(独立行政法人医薬基盤研究所)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 政策創薬総合研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
3,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
ES 細胞を目的の細胞に分化させるには胚葉体(embryoid body; EB) とよばれる中間体を介する。昨年、アデノウイルス (Ad) ベクターを用いた EB への高効率遺伝子導入法について報告した。そこで、本年度はこの Ad ベクターを用いて EB に機能遺伝子を導入することにより、目的の細胞に効率よく分化させることが可能かどうかについて検討した。
研究方法
E14 マウス ES 細胞は LIF 含有培地にてフィーダー細胞上で培養し、3-5 日ごとに継代した。EB はハンギングドロップ法により作製した。Adベクターの作成は improved in vitro ライゲーション法により行った。Ad ベクターによる遺伝子導入は 2日間ハンギングドロップを行うことでES細胞からEBを形成させ、その後3日間浮遊培養したDay5 EBに対して10,000 VP/cellの濃度でAd ベクターを1.5 時間作用させ、遺伝子発現を解析した。脂肪細胞への分化誘導はハンギングドロップを2日間行ってEBを形成させ、続いて3日間all-trans-retinoic acid (RA)含有培地で培養した。その後RAを除いた培地で2日浮遊培養して、7日目にゼラチンコートした12穴プレートに4EB/wellで播種して分化誘導培地で培養した。
結果と考察
RSV、CMV、CA、EF-1α各 4種のプロモーターを有する LacZ 発現 Ad ベクターを、ハンギングドロップ後 5 日目の EB に対して作用させた結果、CA プロモーターを有した Ad ベクターを作用させた場合に最も高い遺伝子発現を示し、EB には CA プロモーターを有する Ad ベクターが最適であることが示された。脂肪細胞分化のマスターレギュレーターである PPARγ遺伝子を Ad ベクターを用いて EB に導入し、ES 細胞から脂肪細胞に分化させた結果、従来の脂肪細胞分化誘導法と比較し効率良く脂肪細胞へと分化誘導できることが示された。今後、この技術を用いて他の機能遺伝子を導入することにより、血液細胞や骨芽細胞などにも分化させることが可能であると考えられ、再生医療への応用に向けたさらなる研究進展が望まれる。
結論
(1)最適化された Ad ベクターを用いることにより、EB に対し高効率に遺伝子導入できることが明らかとなった。
(2)最適化された Ad ベクターを用いて PPARγ遺伝子を EB に導入することにより、効率よく脂肪細胞に分化させることが可能であった。

公開日・更新日

公開日
2007-04-02
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2010-09-08
更新日
-

文献情報

文献番号
200614073B
報告書区分
総合
研究課題名
再生医療を目的としたアデノウイルスベクターによるES細胞への効率的な遺伝子導入・発現系の開発
課題番号
H16-創薬-089
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
川端 健二(独立行政法人医薬基盤研究所)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 政策創薬総合研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
多くの細胞で効率の良い遺伝子導入が可能であることが知られているアデノウイルス (Ad) ベクターを用いて、ES 細胞および胚葉体 (EB) への効率良い外来遺伝子導入実験系を開発し、それを用いて再生医療へ向けた ES 細胞の分化誘導系を確立することを目的とする。
研究方法
E14 マウス ES 細胞は LIF 含有培地にてフィーダー細胞上で培養し、3-5 日ごとに継代した。EB は mES 細胞をペトリディッシュの蓋に付着させ(ハンギングドロップ法)、5 日間培養することにより作製した。Ad ベクターの作製は in vitro ライゲーション法により行った。Ad ベクターによる遺伝子導入は、ES 細胞に対しては 3,000VP/cell、EB に対しては 10,000VP/cell の濃度で Ad ベクターを作用させた。脂肪細胞への分化は、ハンギングドロップを 2 日間行って EB を形成させ、続いて 3 日間 all-trans-retinoic acid (RA) 含有培地で培養した。その後 RA を除いた培地で 2 日浮遊培養して、7 日目に分化誘導培地で培養した。
結果と考察
4 種のプロモーターを有する Ad ベクターを用いて検討した結果、ES 細胞には EF-1αプロモーターが、EB には CA プロモーターが最適であることが明らかとなった。また、最適化された Ad ベクターを用いることにより、ES 細胞の分化を自由に制御できる可能性を示した。Ad ベクターを用いて PPARγ 遺伝子を EB に導入することにより、従来の方法と比較し効率良く脂肪細胞へと分化誘導できることを示した。今後、これらの技術を用いて他の機能遺伝子を導入することにより、血液細胞や骨芽細胞など他の系列の細胞種にも分化させることが可能であると考えられ、再生医療への応用に向けたさらなる研究進展が望まれる。
結論
(1)ES 細胞および EB に最適な Ad ベクターを開発した。
(2)最適化された Ad ベクターを用いて ES 細胞および EB に機能遺伝子を導入することにより、効率よく分化を制御できることを明らかにした。

公開日・更新日

公開日
2007-04-02
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2010-09-08
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200614073C

成果

専門的・学術的観点からの成果
再生医療への応用が期待されている ES 細胞は遺伝子導入が困難であるため、自由に分化制御できないことが問題となっている。そこで、本研究では ES 細胞および胚葉体に対し、効率よく遺伝子導入可能なアデノウイルスベクターを開発した。また、このベクターを用いることにより、ES 細胞の分化を実際に制御できることも明らかにした。
臨床的観点からの成果
本研究ではマウス ES 細胞に最適なアデノウイルスベクターを開発した。ヒトへの臨床応用を考慮すると、ヒト ES 細胞に対する安全でかつ効率のよい遺伝子導入法を開発する必要がある。今後、本研究で得られたマウス ES 細胞に関する知見を元に、ヒト ES 細胞の効率よい遺伝子導入法および分化誘導法の開発が期待される。
ガイドライン等の開発
独立行政法人医薬基盤研究所ではヒト ES 細胞を取り扱うための所内研究倫理委員会を既に4回開催しており、その中で、本研究で得られた知見も議論されている。間もなくヒト ES 細胞の使用機関としての申請を文部科学省にする段階にきている。
その他行政的観点からの成果
本研究により得られた成果は今後の ES 細胞を用いた再生医療への応用に極めて有用であると考えられ、国民の健康・福祉の向上にもつながると考えられる。
その他のインパクト
2005年日本薬学会で発表した「ES 細胞に対する高効率アデノウイルスベクターの開発」がバイオテクノロジー・ジャパンのホームページに掲載された(URL: http://biotech.nikkeibp.co.jp/bionewsn/detail.jsp?newsid=&id=20029416)。

発表件数

原著論文(和文)
1件
原著論文(英文等)
2件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
4件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
K.Kawabata, F.Sakurai, T.Yamaguchi et al.
Efficient gene transfer into mouse embryonic stem cells with adenovirus vectors.
Molecular Therapy , 3 (12) , 547-554  (2005)
原著論文2
K.Kawabata, F.Sakurai, N.Koizumi et al.
Adenovirus vector-mediated gene transfer into stem cells.
Molecular Pharmaceutics , 2 (3) , 95-103  (2006)

公開日・更新日

公開日
2015-05-26
更新日
-