熱帯病・寄生虫症に対する稀少疾病治療薬の輸入・保管・治療体制の開発研究

文献情報

文献番号
200614071A
報告書区分
総括
研究課題名
熱帯病・寄生虫症に対する稀少疾病治療薬の輸入・保管・治療体制の開発研究
課題番号
H16-創薬-084
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
名和 行文(宮崎大学)
研究分担者(所属機関)
  • 木村 幹男(国立感染症研究所感染症情報センター)
  • 中村 哲也(東京大学医科学研究所附属病院感染免疫内科)
  • 太田 伸生(東京医科歯科大学大学院医学研究科国際環境寄生虫学)
  • 有薗 直樹(京都府立医科大学大学院医学研究科寄生病態学)
  • 岡 慎一(国立国際医療センター・エイズ治療研究開発センター)
  • 坂本 知昭(国立医薬品食品衛生研究所薬品部)
  • 草野正弘(ノバルティスファーマ開発本部開発業務部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 政策創薬総合研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
13,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
近年の国際化の加速によりマラリアなどの輸入熱帯病が増加している。また食品媒介寄生虫症や性行為感染症としての赤痢アメーバ症など国内でも寄生虫症が問題化している。これら稀少疾病の治療に必要な薬剤の多くは国内未承認のため、入手が困難である。本研究はこのような稀少疾病治療薬の輸入・供給・治療体制を確立するとともに、研修会などを開催して、これら稀少疾病に対する医療現場の診断・治療能力向上を図ることを目的とする。
研究方法
過去2年間の疾病発生動向や現場のニーズに応じて薬剤を輸入し、治療対応にあたる。寄生虫症については、治療対応だけでなく、広く診断の受託を行い、レファレンスセンターとしての機能を充実する。主要な輸入薬剤については、その治療効果・副作用を解析し、成果を公表する。研究班ホームページで国内における稀少疾病の動向や診断・治療の最新情報、海外渡航時の注意などの情報を広く提供するとともに、メーリングリスト(Listserv)を活用して画像診断や症例検討を行い、熱帯病・寄生虫症のテレメディシンを構築する。前研究班が刊行した「寄生虫症薬物治療の手引き」の改訂を行い、冊子体および電子版を刊行する。また、研究成果普及のために市民公開講座開催を企画する。
結果と考察
2006年1月?12月期に計121例に保管薬剤で治療対応を行なった。マラリアが56例と最多であるが、赤痢アメーバ症が50例でマラリアと並び、国内での流行拡大を反映している。特に、メトロニダゾール注射液での治療を要する重症例が増加している。今年度は新たにトキソプラズマ治療薬2品目、アカントアメーバ角膜炎用点眼薬1品目を追加して計12品目を輸入し、抗マラリア薬など21品目を確保している。宮崎大学および京都府立医大での寄生虫症診断では、宮崎が相変わらず動物由来の回虫による幼虫移行症、肺吸虫症、糞線虫症などが多いのに対し、京都では赤痢アメーバ症、ランブル鞭毛虫症などの原虫性下痢症や、裂頭条虫症などが多く、それぞれ地理的特色が見られた。分担研究者2名が、抗マラリア薬合剤Riamet(Coartem)錠を製造している中国の製造工場2カ所を視察し意見交換や情報収集を行った。平成19年1月に「寄生虫症薬物治療の手引き」改訂第6版冊子体および電子版を刊行した。平成19年1月20日に市民公開講座を開催した。Listservによる画像診断や医療相談は今後も充実を図る。
結論
本研究は1980年以来形を変えながら継続しており、本研究班の略称「熱帯病治療薬研究班」の活動の医学的、社会的な意義は全国的に広く医療関係者に認知されている。

公開日・更新日

公開日
2007-04-03
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2010-09-08
更新日
-

文献情報

文献番号
200614071B
報告書区分
総合
研究課題名
熱帯病・寄生虫症に対する稀少疾病治療薬の輸入・保管・治療体制の開発研究
課題番号
H16-創薬-084
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
名和 行文(宮崎大学)
研究分担者(所属機関)
  • 木村幹男(国立感染症研究所感染症情報センター)
  • 中村哲也(東京大学医科学研究所附属病院感染免疫内科)
  • 太田伸生(東京医科歯科大学大学院医学研究科国際環境寄生虫学)
  • 有薗直樹(京都府立医科大学大学院医学研究科寄生病態学)
  • 岡 慎一(国立国際医療センター・エイズ治療研究開発センター)
  • 坂本 知昭(国立医薬品食品衛生研究所薬品部)
  • 草野 正弘(ノバルティスファーマ開発本部開発業務部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 政策創薬総合研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
近年の国際化の加速によりマラリアなどの輸入熱帯病が増加している。また食品媒介寄生虫症や性行為感染症としての赤痢アメーバ症など国内でも寄生虫症が問題化している。これら稀少疾病の治療に必要な薬剤の多くは国内未承認のため、入手が困難である。本研究はこのような稀少疾病治療薬の輸入・供給・治療体制を確立するとともに、研修会などを開催して、稀少疾病に対する医療現場の診断・治療能力向上を図ることを目的とする。
研究方法
近年の輸入熱帯病・寄生虫症発生動向や現場のニーズ、海外の治療指針の動向などに応じて稀少疾病治療薬を輸入し、治療対応にあたる。寄生虫症については診断の受託も行い、レファレンスセンターとしての機能を充実する。主要な輸入薬剤については、その治療効果・副作用を解析し、成果を公表する。研究班ホームページで国内の稀少疾病の動向や診断・治療の最新情報、海外渡航時の注意などの情報を一般に提供するとともに、メーリングリストを活用して画像診断や症例検討を行い、熱帯病•寄生虫症のテレメディシンを構築する。前研究班が刊行した「寄生虫症薬物治療の手引き」の改訂を行い、冊子体・電子版を刊行する。また、研究成果を社会に還元するために、医療従事者向け研修会や市民公開講座の開催を企画する。
結果と考察
事業期間中、毎年約100例を超える症例に対し、保管薬剤で治療対応を行なった。マラリアが約60例/年で最多であるが、赤痢アメーバ症が毎年増加してマラリアと肩を並べている。特に、メトロニダゾール注射液での治療を要する重症例が増加している。クリプトスポリジウム症、トリパノソーマ症、リーシュマニア症、トキソプラズマ症、アカントアメーバ角膜炎などの治療薬を新規導入し、抗マラリア薬を中心に稀少疾病治療薬計21品目を確保している。寄生虫症診断では、宮崎大学で動物由来の回虫による幼虫移行症、肺吸虫症、糞線虫症などが多いのに対し、京都府立医大では赤痢アメーバ症、ランブル鞭毛虫症や裂頭条虫症などが多く、地理的特色が見られた。分担研究者を毎年海外派遣し、情報収集に努めた。「寄生虫症薬物治療の手引き」を改訂し、第6.0版冊子体および電子版を刊行した。平成16、17年度には医療従事者向け研修会を、また、平成18年度には市民公開講座を開催した。Listservによる画像診断や医療相談は着実に増加しており、国際化に伴って相談内容も、必要とされる薬剤も多様化している。
結論
本研究は1980年以来形を変えながら継続しており、本研究班の略称「熱帯病治療薬研究班」の活動の医学的、社会的な意義は全国的に広く医療関係者に認知されており、継続が望まれている。

公開日・更新日

公開日
2007-04-03
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2010-09-08
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200614071C

成果

専門的・学術的観点からの成果
本研究班は輸入熱帯病や寄生虫症など稀少疾病の治療に必要な国内未承認薬について、国内での患者発生動向や海外情報に基づいて輸入●保管●治療対応を行うための組織構築を目的としている。そのため、いわゆるIFの高い原著は少ないが、医療従事者向けの総説や特集記事などを多数執筆し、薬物療法の手引きを刊行するなど、臨床現場のレベルアップに貢献している。
臨床的観点からの成果
本研究班が輸入●保管している抗マラリア薬で毎年約60名程度の輸入マラリア症例に対応しており、特に重症熱帯熱マラリア患者の救命に貢献している。また近年増加している赤痢アメーバ症について、特に重症例へのフラジール点滴薬により、これまでに30例近くに治療対応し、救命、完治の成果をあげている。これまでに20例の肝蛭症について診断●治療対応している。クリプトスポリジウム症、リーシュマニア症、トリパノソーマ症など、極めて希有な疾患への治療対応も行った。
ガイドライン等の開発
本研究班が刊行している「寄生虫症薬物療法の手引き」は国内の標準的マニュアルとして臨床現場で愛用されており、WEB版は日本寄生虫学会、日本熱帯医学会、日本旅行医学会、日本感染症学会、日本細菌学会などのホームページからのリンクにより、多数のアクセスがある。代表研究者名和行文は薬事●食品衛生審議会専門員として指名を受けている。
その他行政的観点からの成果
本研究は1980年の熱帯病治療薬研究班を母体として連綿と継続している事業であり、これまでに導入した未承認稀少疾病治療薬のうち8品目の保険適応、薬価収載に貢献した。現研究班の事業期間に新たに承認された薬剤はないが、先に保険適応された糞線虫症治療薬イベルメクチンに対し、2006年8月に疥癬に対する適応が追加承認された。また、旧来用いられた副作用の強い日本住血吸虫治療薬スチブナールについて、メーカーに協力して薬価削除に貢献した。
その他のインパクト
2005年2月に医療従事者向け研修会 「輸入感染症・寄生虫症診療の最前線」を、2006年2月)に同じく医療従事者向け研修会「医療従事者に必要な寄生虫症・輸入感染症の知識」を開催した。また、2007年1月には研究成果等普及啓発事業としてヒューマンサイエンス振興財団主催市民公開講座「海外渡航での感染症のリスクに備えるには?」を開催した。

発表件数

原著論文(和文)
2件
原著論文(英文等)
7件
その他論文(和文)
45件
本研究班の特徴として、雑誌特集号などでの総説以来原稿が多く、医療従事者への啓蒙に役立っている
その他論文(英文等)
11件
本研究班の活動は国際的にも認められて、総説依頼原稿が多いのが特徴である。
学会発表(国内学会)
48件
感染症学会、臨床寄生虫学会、旅行医学会などで発表
学会発表(国際学会等)
8件
代表研究者名和は2006年11月に第5回国際食品媒介寄生虫症セミナーで基調講演、分担研究者木村は第16回国際熱帯医学マラリア会議で講演
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計1件
その他成果(特許の取得)
0件
Kita K, et al. 2006-122110A. A novel chemotherapy for leishmaniasis and Chagas disease. (2006)
その他成果(施策への反映)
1件
研究代表者名和は2001~2004に厚生労働省薬事・食品衛生審議会専門委員、引き続き2004から(独)医薬品医療機器総合機構専門委員
その他成果(普及・啓発活動)
4件
平成16、17年度は医療従事者向け講習会開催、平成18年度は研究成果等普及啓発事業として市民公開講座を開催、平成19年1月「寄生虫症薬物療法の手引き」改訂出版

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Miura T, Kimura M, Koibuchi T, et al.
Clinical characteristics of imported malaria in Japan: analysis at a referral hospital.
Am J Trop Med Hyg. , 73 , 599-603  (2005)
原著論文2
Matsumura T, Fujii T, Miura T, et al.
Questionnaire-based analysis of mefloquine chemoprophylaxis for malaria in a Japanese population.
J Infect Chemother. , 11 , 196-198  (2005)
原著論文3
日谷明裕、木村幹男
病院内での疥癬の集団発生におけるイベルメクチンの使用経験
日本臨床寄生虫学会誌 , 15 , 68-71  (2004)
原著論文4
Hitani A, Nakamura T, Ohtomo H, et al.
Efficacy and safety of atovaquone-proguanil compared wih mefloquine in the treatment of nonimmune patients with uncomplicated P. falciparum malaria in Japan.
J Infect Chemother , 12 , 277-282  (2006)
原著論文5
Yoshikawa H, Kimura M, Ogawa M, et al.
Laboratory-confirmed Mediterranean spotted fever in a Japanese traveler to Kenya.
Am J Trop Med Hyg , 73 , 1086-1089  (2005)
原著論文6
Kimura M, Sakamoto M, Adachi T, et al.
Diagnosis of febrile illnesses in returned travelers using the PC software GIDEON.
Travel Med Infect Dis , 3 , 157-160  (2005)
原著論文7
重松美加,菊池 均,木村幹男
渡航者感染症およびその取り組みの現状
化学療法の領域 , 21 , 1401-1407  (2005)
原著論文8
木村幹男,中村哲也,名和行文
研究班の薬剤保管体制と熱帯病・寄生虫症薬物治療の動向
クリニカル プラクティス , 23 , 1050-1053  (2004)
原著論文9
Nawa Y., Hatz C, Blum J.
Sushi delights and parasites: the risk of fishborne and foodborne parasitic zoonoses in Asia.
Clin Infect Dis , 41 (9) , 1297-1303  (2005)
原著論文10
Nakamura-Uchiyama F, Tokunaga Y, Suzuki A, et al.
A case of Ascaris suum visceral larva migrans diagnosed by using A. suum larval excretory-secretory (ES) antigen.
Scand J Infect Dis , 38 (3) , 221-224  (2006)

公開日・更新日

公開日
2015-05-26
更新日
-