文献情報
文献番号
200614068A
報告書区分
総括
研究課題名
変異を克服した画期的抗ウイルス薬の開発
課題番号
H16-創薬-081
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
野口 博司(静岡県立大学)
研究分担者(所属機関)
- 鈴木 康夫(中部大学 生命健康科学部)
- 佐藤 雅之(静岡県立大学 薬学部)
- 池田 潔(静岡県立大学 薬学部)
- 菅 敏幸(静岡県立大学 薬学部)
- 古田 巧(静岡県立大学 薬学部)
- 鈴木 隆(静岡県立大学 薬学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 政策創薬総合研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
9,300,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
変異が激しく、病原性の高いウイルスに関しては、ワクチン効果が期待できず、変異を克服した抗ウイルス薬の開発が必須となる。本研究は、これを達成するための基盤を創成する。
研究方法
インフルエンザウイルス(IFV)、ヒトパラインフルエンザウイルス(hPIV)、デングウイルス(DV):発育鶏卵または組織培養細胞により増殖、密度勾配遠心で精製した。ウイルスの生物活性:ウイルス特異的活性を指標とし、この阻止機能を調べた。創薬を目指した有機化学合成:ウイルス膜蛋白質に高親和性を持つカテキン類、新規シアル酸誘導体をデザインし、合成した。
結果と考察
(1)燕の巣シアロ糖鎖によるヒト、トリ、ブタIFV感染阻害:中国料理食材「燕の巣」可溶化液中にIFV感染を強く阻害するシアロ糖タンパク質を見いだした。そのN-結合型シアロ糖鎖構造を解析し、7種の構造を解明した。(2)DV糖鎖受容体の同定と受容体担持デンドリマーによる感染阻害:DVと結合する糖脂質を発見し、パラグロボシド (Galβ1-4GlcNAcβ1-3Galβ1-4Glc1-1’Ceramide) と同定した。これを担持した新規デンドリマーは全ての型(I-IV)のDV感染を阻害した。(3)新規抗IFV活性カテキンの合成:2,3-cis の立体構造を持つカテキン類の効率的な合成法を開発し、A 環部分に水酸基を持たない新規誘導体、ジデオキシEGCGの合成に成功した。(4)抗IFV活性を有するクロモグリク酸類縁体ライブラリーの生物有機化学的手法による構築:各種アシルCoAエステルと植物酵素(ダイオウ由来Ⅲ型ポリケタイド合成酵素等)を用いて様々なクロモグリク酸類縁体の構築を達成した。特許申請済み。(5)hPIV感染阻害剤の開発:抗hPIV-1活性を持つ新規シアル酸誘導体の合成に成功。(6)次世代抗ウイルス薬開発のための分子標的の機能解明と分子モデリングによる解析:高病原性H5N1型IFVの受容体結合性は、HAのわずか2カ所のアミノ酸残基の変異に伴い、ヒト型に変化すること、hPIVのHAーNAスパイクの2カ所のアミノ酸残基は、hPIV-1および3型のシアロ糖鎖受容体への結合性を規定していることを見いだした。今回、見いだされた抗ウイルス活性分子の多くは、ウイルス受容体への結合を阻止するものである。これらはウイルスの変異を克服した抗ウイルス薬開発の強力なシーズとなり得る。
結論
防疫上重要なウイルスの感染・流行機構などの基礎研究に加えて、ウイルスのヒト間流行監視・診断法の開発、感染阻害分子の探索を行い、重要な知見を得た。
公開日・更新日
公開日
2007-04-05
更新日
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