外科手術摘出ヒト組織を用いたオーダーメード医療の研究と遺伝多型を考慮したヒト肝細胞の代謝研究への応用に関する研究

文献情報

文献番号
200614067A
報告書区分
総括
研究課題名
外科手術摘出ヒト組織を用いたオーダーメード医療の研究と遺伝多型を考慮したヒト肝細胞の代謝研究への応用に関する研究
課題番号
H16-創薬-080
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
大野 泰雄(国立医薬品食品衛生研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 上川雄一郎(獨協医科大学薬理学教室)
  • 窪田敬一(獨協医科大学第二外科)
  • 山添康(東北大学大学院薬学研究科 医療薬科学専攻 薬物動態学分野)
  • 二宮真一(第一化学薬品(株)薬物動態研究所 研究開発部)
  • 嶋田薫(ファイザー(株) 中央研究所薬物動態研究第一研究室 薬物動態)
  • 山田泰弘(田辺製薬(株)薬物動態研究所 薬物動態グループ)
  • 小室勢津子(大日本住友製薬(株) 薬物動態研究所 )
  • 中村明生(日本新薬(株) 創薬研究所 )
  • 岡崎治(第一製薬(株)東京研究開発センター 創剤代謝研究所)
  • 三浦慎一(三共(株)薬物動態研究所 )
  • 加藤基浩(中外製薬(株)富士御殿場研究所 前臨床研究部)
  • 馬場隆彦(塩野義製薬(株)新薬研究所)
  • 曽川裕介(協和発酵工業(株) 医薬研究センター薬物動態研究所 分析代謝部門)
  • 森田繁道(サフィノアベンティスグループ アベンティスファーマ(株)研究開発本部 開発研究所 )
  • 神山佳輝(アステラス製薬(株)研究本部代謝研究所 )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 政策創薬総合研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
15,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
日本人の気管支喘息およびC型慢性肝炎患者の組織を用いて、疾病関連遺伝子の発現と病態およびその進展について検討するとともに、ヒト肝薬物代謝能および誘導能再現のための新規評価系の構築を行う。
研究方法
研究試料は倫理的に妥当な形で、また、提供者の同意のもとで入手した。研究は施設ごとの倫理委員会の承認を得て行った。アデノウィルスは、各施設の『遺伝子組換え実験安全委員会』および『病原体等安全管理委員会』の承認を得た後に細胞を入手した。
結果と考察
ヒト単球様白血病細胞THP-1のLTC4合成酵素遺伝子の発現レベルは、呼吸器疾患患者から得られた気管支肺胞洗浄液(BALF)刺激で抑制され、BALF中の炎症性細胞数と負の相関を示した。BALF中には病態を反映するサイトカインが含まれており、オーダーメイド医療の実践への活用が考えられた。
 日本人のC型慢性肝炎患者の肝生検試料55検体を用いて、肝繊維化ステージとCYP3A4、NTCP、OATP-CおよびOCT1遺伝子発現レベルの低下との相関を明らかにした。
 細胞内鉄イオンキレート剤によるINFγの応答性の検討から、両者の併用が肝細胞癌の有効な治療戦略となることが示唆された。
 アデノウイルスを用いてヒトPXRをマウス肝に発現させる新規CYP3A4誘導評価系を開発した。ヒトPXR活性化作用を有する薬物のCYP3A4誘導能を、本in vivoレポーターアッセイにより評価することに成功した。
 安定した新規薬物代謝評価試験系の確立に向け、肝癌由来細胞株による三次元培養法に適した条件を明らかにした。
 新規薬物代謝誘導評価試験系を確立した。ヒト肝細胞の中空糸モジュール培養法は長期間培養が可能であるため、HepaRG細胞を用いた評価系は細胞供給が安定で均質であるため、目的に応じた誘導試験系への適用が可能となった。薬物阻害試験への適用も可能なCYP3A4発現系を改良した。種々のCYP分子種発現系への実用化は、組み合わせにより遺伝多型を反映するCYPカクテルモデル構築の可能性を示唆しており、医薬品開発において極めて有用なツールになりうるものと期待される。
結論
日本人の気管支喘息患者とC型慢性肝炎患者の組織を用い、疾患関連遺伝子発現と病態および病態の進展度との関連性を明らかにした。薬物の代謝・誘導・阻害試験に適用可能な新規in vivo とin vitro評価試験系を構築した。

公開日・更新日

公開日
2007-04-16
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2010-09-08
更新日
-

文献情報

文献番号
200614067B
報告書区分
総合
研究課題名
外科手術摘出ヒト組織を用いたオーダーメード医療の研究と遺伝多型を考慮したヒト肝細胞の代謝研究への応用に関する研究
課題番号
H16-創薬-080
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
大野 泰雄(国立医薬品食品衛生研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 上川雄一郎(獨協医科大学薬理学教室)
  • 窪田敬一(獨協医科大学第二外科)
  • 山添康(東北大学大学院薬学研究科 医療薬科学専攻 薬物動態学分野)
  • 二宮真一(第一化学薬品(株)薬物動態研究所 研究開発部)
  • 嶋田薫(ファイザー(株) 中央研究所薬物動態研究第一研究室 薬物動態)
  • 山田泰弘(田辺製薬(株)薬物動態研究所 薬物動態グループ)
  • 小室勢津子(大日本住友製薬(株) 薬物動態研究所 )
  • 寺内嘉章(大日本住友製薬(株) 薬物動態研究所 )
  • 中村明生(日本新薬(株) 創薬研究所 薬物動態研究部一課)
  • 岡崎治(第一製薬(株)東京研究開発センター 創剤代謝研究所)
  • 三浦慎一(三共(株)薬物動態研究所 )
  • 加藤基浩(中外製薬(株)富士御殿場研究所 前臨床研究部)
  • 馬場隆彦(塩野義製薬(株)新薬研究所)
  • 曽川裕介(協和発酵工業(株) 医薬研究センター薬物動態研究所 分析代謝部門)
  • 田代 智(協和発酵工業(株) 医薬研究センター薬物動態研究所 分析代謝部門)
  • 森田繁道(サフィノアベンティスグループ アベンティスファーマ(株)研究開発本部 )
  • 神山佳輝(アステラス製薬(株)研究本部代謝研究所 開発代謝第二研究室)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 政策創薬総合研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
外科手術摘出組織等を用いて疾病関連遺伝子の発現と病態、発症との関連性と疾病時における薬物動態関連遺伝子発現の変動、薬物代謝及び誘導能の新規評価系、および中国人肝組織の日本への提供の妥当性について検討する。
研究方法
ヒト組織利用研究は施設ごとの倫理委員会の承認を得て行った。中国上海市のヒト組織の日本への提供の法的・倫理的妥当性について関係者と提供社への問い合わせと実地調査を基に検討した。
結果と考察
 気管支喘息患者末梢血好酸球からのLTC4の放出は喘息患者で明らかに高く、ステロイド剤は放出を強く抑え、薬物の効果予測試験に利用できる可能性が示唆された。呼吸器疾患患者の気管支肺胞洗浄液には病態を反映するサイトカインが含まれていた。
 肝癌切除後早期再発マーカーとして、肝細胞癌組織中Ecad-mRNA発現の低下、OPN-mRNA発現の亢進が有用と考えられた。癌細胞株の増殖が鉄キレート剤とIFNγの併用により抑制され、アポトーシスも増加し、肝細胞癌の治療戦略と期待された。
 C型慢性肝炎患者の繊維化ステージと薬物動態関連遺伝子の発現低下が関連していた。慢性C型肝炎疾患時における薬物療法選択に有用と思われた。
 CYP2C19の欠損したPM凍結遊離ヒト肝細胞を用いた検討の結果、臨床と同様の代謝の個人差が再現された。
 新規ヒト代謝誘導能検索系として、不死化ヒト肝細胞Fa2N-4 細胞、ヒト肝様細胞HepaRG細胞及びヒト肝細胞中空糸モジュールTESTLIVERの多施設バリデーションを行い、 CYP活性の誘導評価に有用であることが判明した。
 HepG2を三次元高密度培養に供することで、CYP3A4の発現誘導能が著しく改善された。CYP3A4遺伝子を組み込んだアデノウィルスをHepG2細胞に感染させた細胞ではCYP3A4活性を強く発現した。本CYP導入技術を活用することで、遺伝子多型モデルの作成が可能である。CYP3A4を組み込んだアデノウィルスをマウスに導入したin vivoレポーターアッセイ系でヒト型誘導能を検出できた。
 中国ヒト組織提供機関からのヒト肝臓は倫理的、法的に概ね妥当と思われたが、いくつか不明確なところが残った。
結論
気管支喘息およびC型肝炎患者の組織における疾患関連遺伝子発現と病態との関連性を示した。新規の薬物代謝・誘導能評価系を評価・構築した。

公開日・更新日

公開日
2007-04-16
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2010-09-08
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200614067C

成果

専門的・学術的観点からの成果
大学等の病院との連携により多くの日本人ヒト組織を入手し、疾患と各種パラメータの発現との関係を明らかにできた。3種の薬物代謝酵素誘導能試験系の得失を明らかにした。新規の誘導能評価系や代謝評価のための新規試験法を開発した。良質な肝細胞を大量に得られると期待した中国からのヒト組織入手については、法的な問題から、実現出来なかった。
臨床的観点からの成果
病態関連因子の同定は今後の治療に有用と思われる。薬物動態関連試験法のバリデーションによるそれらの特性の明確化や新規試験法の開発は企業での医薬品開発に有益である。
ガイドライン等の開発
特になし。
その他行政的観点からの成果
中国からのヒト組織入手の法的問題を明らかにし、国の研究機関が中国との違法な取引を行ったことは、国際問題発生を未然に防止したことになる。
その他のインパクト
研究成果をまとめ、“摘出ヒト組織,細胞を用いた非臨床研究”(大野泰雄等 編)としてエル,アイ,シー 社(東京)より出版した(2005) .また、主任研究者である大野泰雄は日本組織移植学会より依頼され、学術年会で"ヒト組織を用いた薬物動態研究"について招待講演を行った(2006.8.26).

発表件数

原著論文(和文)
2件
原著論文(英文等)
15件
その他論文(和文)
1件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
22件
学会発表(国際学会等)
8件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2015-05-26
更新日
-