ヒト細胞を供給源とした再生医療の早期実現化を目指す有効性、安全性の検証システムの確立

文献情報

文献番号
200614062A
報告書区分
総括
研究課題名
ヒト細胞を供給源とした再生医療の早期実現化を目指す有効性、安全性の検証システムの確立
課題番号
H16-創薬-073
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
梅澤 明弘(国立成育医療センター)
研究分担者(所属機関)
  • 黒田 雅彦(東京医科大学 病理学)
  • 岡本 英治(サミット・グライコリサーチ株式会社 製品開発部)
  • 原 英二(徳島大学ゲノム機能研究センター タンパク情報分野)
  • 小杉 好紀(株式会社ピリオドック 遺伝子工学)
  • 石橋 卓也(東洋紡績株式会社 細胞工学)
  • 黒丸 修(中外製薬株式会社富士御殿場研究所 創薬研究第一部)
  • 澁谷 功(大塚製薬株式会社 細胞生物学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 政策創薬総合研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
27,600,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 ヒト細胞移植における有効性、安全性の検証システムを確立するために、細胞表面糖鎖解析に用いるレクチンの組換え体化並びに遺伝子改変化の研究を進める。また、ヒト正常細胞の分裂寿命を規定する分子メカニズムを明らかにし、正常な細胞機能を保持したまま分裂寿命の延長を可能にすることにより、細胞移植における安全性の検証システムを確立する。
研究方法
 ヒト正常線維芽細胞における細胞老化の誘導に重要な働きをしているp16/RB-経路の作用機序を調べる。また、p16INK4a遺伝子の発現を化学発光により正確かつ高感度に検出出来るベクターを開発する。また、ヒト間葉系細胞を認識する組換え体レクチンの作成を行った。組換え体レクチンの糖結合活性は表面プラズモン共鳴法(SPR)、赤血球凝集活性及びフローサイトメトリー(FACS)で測定した。
結果と考察
 ヒト正常線維芽細胞の細胞老化ではp16/RB-経路と増殖因子が協調してROSの産生を促進するために染色体分配並びに細胞質分裂の進行も抑制されていた。このため、細胞老化が誘導されると、その後でp16/RB-経路を遮断しても老化細胞は増殖を再開出来なかった。p16蛋白発現を化学発光によりモニター出来る細胞を用いることにより、DNA障害を誘発する刺激がp16蛋白の発現を誘導することを見出した。また、組換え体レクチンMAHを用いて、チップ上に固相化したSialyl-Tへの結合をSPRで測定したところ、結合活性が確認された。FACS測定においても、細胞表面への結合が確認された。
 細胞老化が誘導されるとROSの産生が上昇するため細胞周期の複数のチェックポイントが活性化される。このことは老化細胞が安定に増殖停止を起こす原因となっていると考えられるが、遺伝子異常を引き起こす原因にもなっている。また、換え体レクチンの利用は、天然レクチンよりも再現性や結合性に優れた糖鎖解析を可能にする。


結論
p16蛋白の発現を化学発光によりモニター出来る細胞を用いることで、ヒト正常細胞の分裂寿命を規定する分子メカニズムを明らかにし、正常な細胞機能を保持したまま分裂寿命の延長を可能にする薬剤等のスクリーニングシステムを構築することができることになり、当初の目的が達成された。また、組換え体MAHは赤血球凝集法やSPR、FACSで糖結合活性が認められた。本技術によって作出されるリコンビトレクチンの利用により、天然レクチンを用いた従来法よりも再現性や結合性に優れた糖鎖解析が可能になることが期待される。

公開日・更新日

公開日
2007-04-17
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2010-09-08
更新日
-

文献情報

文献番号
200614062B
報告書区分
総合
研究課題名
ヒト細胞を供給源とした再生医療の早期実現化を目指す有効性、安全性の検証システムの確立
課題番号
H16-創薬-073
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
梅澤 明弘(国立成育医療センター)
研究分担者(所属機関)
  • 黒田 雅彦(東京医科大学 病理学)
  • 岡本 英治(サミット・グライコリサーチ株式会社 研究開発本部)
  • 原 英二(徳島大学ゲノム機能研究センター タンパク情報分野)
  • 小杉 好紀(株式会社ピリオドック 遺伝子工学)
  • 石橋卓也(東洋紡株式会社・細胞工学)
  • 黒丸 修(中外製薬株式会社富士御殿場研究所 創薬研究第一部)
  • 澁谷 功(大塚製薬株式会社・細胞生物学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 政策創薬総合研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 ヒト細胞を供給源とした再生医療の早期実現化を目指すためにそれぞれの細胞移植における有効性、安全性の検証システムを確立することを推進するために、細胞表面糖鎖解析に用いるレクチンの組換え体化並びに遺伝子改変化の研究を進める。また、ヒト正常細胞の分裂寿命を規定する分子メカニズムを明らかにし、正常な細胞機能を保持したまま分裂寿命の延長を可能にすることにより、細胞移植における特に安全性の検証システムを確立する。           
研究方法
 移植の供給源となる細胞のラベルをResovistを用いて行った。その評価は、MRイメージングを行うとともに、組織像との比較を行った。また、ヒト正常線維芽細胞における細胞老化の誘導に重要な働きをしているp16/RB-経路の作用機序を調べるために、p16INK4a遺伝子の発現を化学発光により検出出来るベクターを開発した。さらに、組換え体レクチンMAHのバキュロウイルス発現系でさせた。
結果と考察
 移植された細胞のモニタリングに、MRIおよび病理組織学的検討に用いる際の、Resovistによる細胞のマーキング法を新たに開発した。また、ヒト正常細胞の老化ではp16/RB-経路と増殖因子が協調してROSの産生を促進するために染色体分配並びに細胞質分裂の進行も抑制されていることを見出した。またさらに、組換え体レクチンMAHはSialyl-Tへの結合した。 
 本研究においてResovistによるMRI造影剤の可能性を追求し、再生医療にむけて新素材を応用することにより、医療面における安全性を保持したままで、移植後,数時間から1日といった治療後極めて早期に、MRIにより検証できる。このことは、極めて低侵襲性の,再生医療に対する検証システムが開発されることを意味する。また、細胞老化が誘導されるとROSの産生が上昇するため、遺伝子異常を引き起こす原因にもなっている可能性も考えられる。また、組換え体レクチンは、天然レクチンを用いた従来法よりも再現性や結合性に優れた糖鎖解析を可能にする。
結論
 鉄材であるResovistを用いることにより、極めて低侵襲性の再生医療に対する検証システムが開発された。また、p16蛋白の発現を化学発光によりモニター出来る細胞を用いることで、ヒト正常細胞の分裂寿命を規定する分子メカニズムを明らかにできることになり、当初の目的が達成された。また、間葉系細胞を規定するMAHを利用することは再生医療におけるバリーデーションシステム構築の一助になる。

公開日・更新日

公開日
2007-04-12
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2010-09-08
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200614062C

成果

専門的・学術的観点からの成果
組織細胞医療工学について、培養担体への細胞播種、細胞接着性評価、細胞のラベリングの多角的な手法を用いて、移植細胞の有効性・安全性の検証システムを構築できた。
臨床的観点からの成果
細胞移植後にSPIOによるMRI造影剤を用いた追跡システムを構築したことで、細胞移植後早期における低侵襲な有効性・安全性検証システムを構築できた。
ガイドライン等の開発
組織細胞医療工学について、「ヒト幹細胞等を用いる臨床研究に関する指針(平成18年9月)」の要求事項であるGMP基準に則った細胞調整を行い、細胞品質管理の標準化を図った。
その他行政的観点からの成果
組織細胞医療工学について、また細胞を利用するための医療機器開発における基盤的情報のデータベース構築からバイオインフォマティックス技術を確立できた。
その他のインパクト
本研究成果の一部は、国際誌への論文投稿を続けており、多くの研究者へ引用されている。また、NHKの科学・環境番組部より幹細胞を用いた基盤研究についての取材を受け、放映された。

発表件数

原著論文(和文)
20件
原著論文(英文等)
36件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
21件
学会発表(国際学会等)
5件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計2件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
1件
その他成果(普及・啓発活動)
1件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Oikawa K, Ishida T, Imamura T et al.
Generation of the novel monoclonal antibody against TLS/EWS-CHOP chimeric oncoproteins that is applicable to one of the most sensitive assays for myxoid and round cell liposarcomas.
Am J Surg Pathol , 30 (3) , 351-356  (2006)
原著論文2
Tetsuya O, Oikawa K, Ymada K et al.
Unscheduled overexpression of human WAPL promotes chromosomal instability.
Biochem Biophys Res Commun. , 356 (3) , 699-704  (2007)
原著論文3
Takahashi A, Ohtani N, Yamakoshi K et al
Mitogenic signalling and the p16INK4a-Rb pathway cooperate to enforce irreversible cellular senescence.
Nat Cell Biol. , 8 (11) , 1291-1297  (2006)
原著論文4
Murao K, Kubo Y, Ohtani N et al
Epigenetic abnormalities in cutaneous squamous cell carcinomas: frequent inactivation of the RB1/p16 and p53 pathways.
Br J Dermatol , 155 (5) , 999-1005  (2006)
原著論文5
Zannetti C, Mondini M, De Andrea M et al
The expression of p16INK4a tumor suppressor is upregulated by human cytomegalovirus infection and required for optimal viral replication.
Virology , 349 (1) , 79-86  (2006)
原著論文6
Suzuki M, Yamada T, Kihara-Negishi F et al
Site-specific DNA methylation by a complex of PU.1 and Dnmt3a/b.
Oncogene , 25 (17) , 2477-2488  (2006)
原著論文7
Laman H, Funes JM, Ye H et al.
Transforming activity of Fbxo7 is mediated specifically through regulation of cyclin D/cdk6.
EMBO J , 24 (17) , 3104-3116  (2005)
原著論文8
Han J, Tsukada Y, Hara E et al.
Hepatocyte growth factor induces redistribution of p21(CIP1) and p27(KIP1) through ERK-dependent p16(INK4a) up-regulation, leading to cell cycle arrest at G1 in HepG2 hepatoma cells.
J Biol Chem. , 280 (36) , 31548-31556  (2005)
原著論文9
Kuroda M, Oikawa K, Yoshida K et al.
Effects of 3-methylcholanthrene on the transcriptional activity and mRNA accumulation of the oncogene hWAPL.
Cancer Lett. , 221 (1) , 21-28  (2005)
原著論文10
Kuroda M, Kiyono T, Oikawa K, et al.
The human papillomavirus E6 and E7 inducible oncogene, hWAPL, exhibits potential as a therapeutic target.
Br J Cancer. , 92 (2) , 290-293  (2005)
原著論文11
Kuroda M, Oikawa K, Ohbayashi T et al
A dioxin sensitive gene, mammalian WAPL, is implicated in spermatogenesis.
FEBS Lett. , 579 (1) , 167-172  (2005)
原著論文12
Yoshida K, Oikawa K, Takanashi M
Detection of fusion genes in sarcomas using paraffin-embedded tissues. Neuropathology.
Neuropathology. , 25 (3) , 263-268  (2005)
原著論文13
Kuroda M, Tanabe H, Yoshida K et al.
Alteration of chromosome positioning during adipocyte differentiation.
J Cell Sci. , 117 (24) , 5897-5903  (2004)
原著論文14
Oikawa K, Ohbayashi T, Kiyono T et al.
Expression of a novel human gene, human wings apart-like (hWAPL), is associated with cervical carcinogenesis and tumor progression.
Cancer Res. , 64 (10) , 3545-3549  (2004)
原著論文15
Maehara K, Yamakoshi K, Ohtani N et al.
Reduction of total E2F/DP activity induces senescence-like cell cycle arrest in cancer cells lacking functional pRB and p53.
J Cell Biol. , 168 (4) , 553-560  (2005)
原著論文16
Oshiro H, Ebihara Y, Serizawa H et al.
Idiopathic retroperitoneal fibrosis associated with immunohematological abnormalities.
Am J Med , 118 (7) , 782-786  (2005)

公開日・更新日

公開日
2015-05-26
更新日
-