霊長類ES細胞の無フィーダー、無血清培養を用いた新しい未分化維持増殖培養法と血液細胞分化制御系の開発

文献情報

文献番号
200614060A
報告書区分
総括
研究課題名
霊長類ES細胞の無フィーダー、無血清培養を用いた新しい未分化維持増殖培養法と血液細胞分化制御系の開発
課題番号
H16-創薬-070
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
湯尾 明(国立国際医療センター)
研究分担者(所属機関)
  • 近藤 靖(田辺製薬株式会社)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 政策創薬総合研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
8,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
霊長類胚性幹細胞(ES細胞)はその無限増殖能と多分化能から再生医療における有望な材料と期待されている。しかし、再生医療への応用のためには、異種動物由来成分の混入を回避する必要がある。即ち、牛胎児血清を用いない無フィーダー培養の確立が重要である。本研究では、主にカニクイザルES細胞を用いて、この様な課題に望んだ。
研究方法
未分化維持増殖培養においては、KSRとマトリゲルコート皿を用いた無血清、無フィーダー、無サイトカイン培養を試みた。本年度の血液細胞分化培養においては、前半の細胞凝集塊(又は胚様体)形成に引き続いて後半の無フィーダー平面培養に移行する無フィーダー培養を試みた。ES細胞は、カニクイザルES細胞を中心として、一部の実験においてはヒトES細胞を用いた。
結果と考察
未分化維持継代培養に関しては、サルES細胞とヒトES細胞の両方において、無血清・無フィーダー・無サイトカイン環境の中で長期にわたって安定した増殖と未分化維持・多能性維持が可能で、サルでは40継代以上、ヒトでは25継代以上の培養が可能で、凍結融解も状態に変化を認めなかった。また、昨年見出したマウスES細胞の未分化維持に効果のある低分子化合物について、サルES細胞においても未分化維持効果がみられた。一方、血細胞分化誘導に関しては、サルES細胞から無フィーダー環境において血液細胞、とりわけ好中球を効率よく分化誘導させる数種類の無フィーダー培養系が構築された。本年度は前半の細胞凝集塊形成に引き続き後半の無フィーダー平面培養に移行させる手法を確立した。最も優れた系においては、浮遊細胞の9割がCD45陽性血液細胞で、うち半数以上が芽球、10-40%が成熟好中球の形態を示した。これらの好中球は、好中球特異的な特殊染色が全て陽性で成熟好中球と考えられた。また、貪食能、活性酸素産生能、遊走能も、いずれも陽性で、十分な機能を有する好中球と考えられた。この様な、未分化血球と成熟好中球の共存する培養系は長期間維持することができた。また、凍結融解後も、同様な状態を保つことが出来た。
結論
サルES細胞を用いて、無血清・無フィーダー・無サイトカイン未分化維持培養を達成した。このように維持された未分化サルES細胞から高効率の無フィーダー血液細胞分化誘導法を確立した。

公開日・更新日

公開日
2007-04-02
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2010-09-08
更新日
-

文献情報

文献番号
200614060B
報告書区分
総合
研究課題名
霊長類ES細胞の無フィーダー、無血清培養を用いた新しい未分化維持増殖培養法と血液細胞分化制御系の開発
課題番号
H16-創薬-070
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
湯尾 明(国立国際医療センター)
研究分担者(所属機関)
  • 近藤 靖(田辺製薬株式会社)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 政策創薬総合研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
胚性幹細胞(ES細胞)はその無限増殖能と多分化能から再生医療における有望な材料と期待され、昨今は、霊長類ES細胞の研究が注目されている。しかし、再生医療への応用のためには、異種動物由来の成分(マウス由来フィーダー細胞やウシ胎児血清)の混入を回避する方策が急務である。本研究では、カニクイザルES細胞(一部ヒトES細胞)を用いて、無血清無フィーダーで未分化状態を維持することを目指すとともに、そこから無血清無フィーダー環境において血液細胞(2次造血)の分化誘導を試みた。
研究方法
未分化維持増殖培養においては、KSRとマトリゲルコート皿を用いた無血清、無フィーダー、無サイトカイン培養を試みた。血液細胞分化培養においては、前半の細胞凝集塊(又は胚様体)形成に引き続いて後半の無フィーダー平面培養に移行する無フィーダー培養を試みた。ES細胞は、カニクイザルES細胞を中心として、一部の実験においてはヒトES細胞を用いた。
結果と考察
未分化維持継代培養に関しては、サルとヒトES細胞の両方において、無血清・無フィーダー・無サイトカイン環境において、長期にわたって安定した増殖と未分化維持・多能性維持が可能で、凍結融解も可能であった。また、サルES細胞において未分化維持効果を有する複数の化合物を発見した。一方、血細胞分化誘導に関しては、サルES細胞から無フィーダー環境において血液細胞、とりわけ好中球を効率よく分化誘導させる数種類の無フィーダー培養系を構築した。すなわち、前半が細胞凝集塊形成を駆使する方法で、後半が無フィーダー平面培養である。最も優れた系においては、浮遊細胞の9割がCD45陽性血液細胞で、うち半数以上が芽球、10-40%が成熟好中球の形態を示した。これらの好中球は、好中球特異的な特殊染色が全て陽性で成熟好中球と考えられた。また、貪食能、活性酸素産生能、遊走能も、いずれも陽性で、十分な機能を有する好中球と考えられた。この様な、未分化血球と成熟好中球の共存する培養系は長期間維持することができた。また、凍結融解後も、同様な状態を保つことが出来た。
結論
サルES細胞を用いて、無血清・無フィーダー・無サイトカイン未分化維持培養を達成した。このように維持された未分化サルES細胞から高効率の無フィーダー血液細胞分化誘導法を確立した。

公開日・更新日

公開日
2007-04-02
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2010-09-08
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200614060C

成果

専門的・学術的観点からの成果
カニクイザルES細胞を用いて、無血清・無フィーダー・無サイトカイン環境において長期間の安定した未分化維持増殖培養を達成したことは、世界的にも類がない画期的な成果である。また、そのような未分化サルES細胞を用いて、無フィーダーで血液細胞とさらに好中球を高効率で分化誘導できたことも、世界に先駆けての画期的な成果である。以上の重要な成果は、カニクイザルES細胞に止まらず、ヒトES細胞にも応用されて順調に成功している。
臨床的観点からの成果
霊長類のES細胞での成果であり、ヒトでも確認がされつつあり、臨床応用に近づいている。また、研究課題そのものが牛胎児血清やマウスフィーダー細胞を排除するという臨床に向けての志向が強い研究課題であり、この点からも臨床的観点からの成果として重要であると考えられる。
ガイドライン等の開発
動物成分を排除した霊長類ES細胞の培養法のマニュアルが作成された.
その他行政的観点からの成果
ヒトES細胞の応用研究も開始され、ES細胞を用いた再生医療の実現へ向けての具体的な進展がみられた。
その他のインパクト
ヒトES細胞使用の大臣確認に際しては日経BPの取り上げられた。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
6件
学会発表(国際学会等)
2件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計1件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2015-05-26
更新日
-