新しい修飾技術を用いた再生医療用生物由来素材の開発

文献情報

文献番号
200614059A
報告書区分
総括
研究課題名
新しい修飾技術を用いた再生医療用生物由来素材の開発
課題番号
H16-創薬-069
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
岸田 晶夫(東京医科歯科大学)
研究分担者(所属機関)
  • 藤里 俊哉(国立循環器病センター研究所)
  • 白数 昭雄(ニプロ株式会社)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 政策創薬総合研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
5,700,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
現在、必要性の高い心臓弁、小口径血管、気管、食道などの比較的単純な組織構成の臓器の再生のための足場材料は、生体内分解吸収性の合成材料が用いられている。しかし、既存の材料は加工が困難で、物性が生体のものとは大きく異なる。これらを解決するために、申請者らは新しい処理法による脱細胞化生物組織および生物素材の積極的な応用を試みている。本研究では、優れた力学特性を有する生物由来組織の高機能化を実現するための、新しい加工法について検討を行った。
研究方法
生物素材の生体適合化処理方法の開発を目的に、生体組織スキャフォールドへの機能性分子の複合化について検討した。複合化する機能性分子としては、生体親和性の合成および天然高分子を用いた。種々の機能性分子のうちのいくつかを用いて、複合化の条件について物理化学的な評価を行い、物性、安定性、再現性について検討した。
結果と考察
昨年度までは、中性の水溶性条件でコラーゲンの架橋およびポリマー修飾ではEDCを用いていたが、ポリマー修飾の効率が低いという欠点があった。これの改良法として、エタノールと水の混合溶媒を用いて、EDC/NHSによるコラーゲンゲルの架橋のコントロールについて検討した。その結果、架橋率はNA=0.1(エタノール30% v/v)の時に最高値に到達し、その後低下することを見出した。
本研究で作製したコラーゲンゲル上への48時間後の細胞接着性は、グルタルアルデヒドで架橋したコラーゲンゲルと同様に高いものであった。このコラーゲンゲルをラットの皮膚の下に移植し、4週間後石灰化と炎症反応を調べた。その結果、皮膚の下に移植したコラーゲンゲルは石灰化と炎症を起こさないことが判明した。これから、ポリマー修飾したコラーゲンゲルは毒性や炎症反応も起こさない安全な移植材料であると考えられた。
結論
本研究で開発したハイドロゲルの生体適合性は、in vitro、in vivoにおいて良好な結果であった。本技術は、生物由来組織にも適用可能であり、特に炎症反応や石灰化を惹起しない修飾法として有用である。用いる修飾用高分子の種類によって、組織接着性あるいは非接着性を制御でき、新しい技術である脱細胞化組織や既存のコラーゲン製材料と組み合わせることによる、新しい再生医療用Scaffoldの開発が期待できる。

公開日・更新日

公開日
2007-04-16
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2010-09-08
更新日
-

文献情報

文献番号
200614059B
報告書区分
総合
研究課題名
新しい修飾技術を用いた再生医療用生物由来素材の開発
課題番号
H16-創薬-069
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
岸田 晶夫(東京医科歯科大学)
研究分担者(所属機関)
  • 藤里 俊哉(国立循環器病センター研究所)
  • 白数 昭雄(ニプロ株式会社)
  • 高野 久輝(国立循環器病センター研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 政策創薬総合研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
再生医療用の新しい材料の必要性に対応するため、申請者らは新しい処理法による脱細胞化生物組織および生物素材の積極的な応用を試みている。本研究では、優れた力学特性を有する生物由来組織の高機能化を実現するための新しい加工法の開発を目的とした。これにより、複雑な構造でも造形する必要がなく、あるいは生体と同等の力学特性を有する再生医療用素材を高機能化することができ、新規な再生医療用素材として広範な応用が期待できる。
研究方法
脱細胞化法の最適化、コラーゲンを用いた機能性材料の開発、およびそれらの化学修飾法について検討を行った。
結果と考察
本研究の基盤技術である超高静水圧処理による脱細胞化組織の調製について、超高静水圧処理の最適化を検討し、30℃以下での低速加圧で組織構造にダメージを与えずに脱細胞化できることを明らかにした。また、得られた脱細胞化組織をエタノールで処理すると石灰化の要因と考えられるリン脂質が除去できた。超高静水圧印加処理によって、7000気圧以上にて細菌除去が可能であることが示され、さらに、ウイルス除去についても、ブタのゲノム中のPERV配列のDNA量は、洗浄工程後には検出限界以下まで減少した。さらに、コラーゲン製マトリクスを用いて、in vitro、in vivoでの検討を行った。ブタ皮膚コラーゲン溶液から作製したコラーゲン繊維用いて不織布を作製し、熱架橋後、ヘパリンを含有させ、人工血管を作製した。これをミニブタ下行大動脈に移植した。経過は良好で、死亡例はなかった。これらの生物由来スキャフォールドへの機能性分子の複合化を検討した。MPCポリマーの修飾については、コラーゲンゲルをEDC/NHSにて化学的に架橋し、さらにEDC/NHSにて活性化したMPCポリマーを化学的に修飾した。得られたコラーゲンゲルは、従来のコラーゲンゲルに比べて力学強度・成形性が向上し、コラゲナーゼへの耐性も示された。また、ラット皮下埋入試験においても良好な生体適合性が示された。また、デキストラン、ハイドロキシアパタイトを用いることで素材の細胞接着性を変化させることができた。さらに、プラスミドベクターを修飾した脱細胞化組織への再細胞化においては、細胞への遺伝子導入が可能であった。
結論
脱細胞化組織の有用性とその高機能化について検討し、再生医療の目的に応じた材料が提供できることを示した。

公開日・更新日

公開日
2007-04-20
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2010-09-08
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200614059C

成果

専門的・学術的観点からの成果
超高圧処理を用いた脱細胞化法について最適化条件を見いだし、循環器系組織以外の組織への応用の可能性を開いた。また、コラーゲンを用いた新しい再生医療用組織体の調製法を開発し、評価を行った。さらに生体適合性高分子による生体組織の修飾法について検討し、新しい反応法を提案した。
臨床的観点からの成果
超高圧の滅菌の効果の応用として、組織バンクに保存されているホモグラフト組織の滅菌法としての応用を検討している。
ガイドライン等の開発
国際的な連係の元に脱細胞組織の安全性評価のためのガイドライン作成について検討中。連携先候補として、英国Leeds大学Ingham教授を考えている。
その他行政的観点からの成果
本研究の成果を基に、分担研究者の藤里が科学技術振興調整費による再生医療についてのガイドライン作製プロジェクトに参加している。
その他のインパクト
2004年12月28日の日経産業新聞1面の特集「創造主義宣言超テク国への道・第5部・異才が開く」に、分担研究者の藤里俊哉が紹介された。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
16件
その他論文(和文)
9件
その他論文(英文等)
1件
学会発表(国内学会)
99件
学会発表(国際学会等)
23件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計8件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
1件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Kimura T, Fujisato T, Kishida A. et al.
Novel PVA-DNA nanoparticle prepared by ultra high pressure technology for gene delivery
Mater Sci Eng C , 24 , 797-801  (2004)
原著論文2
Nam K, Kimura T, Kishida A
Influence of cross-linking on physicochemical and biological properties of collagen-phospholipid hybrid gel
Trans Mater Res Soc Jpn , 31 (2) , 735-738  (2006)
原著論文3
Nam K, Kimura T, Kishida A
Preparation and characterization of cross-linked collagen-phosoholipid polymer hybrid gel
Biomaterials , 28 , 1-8  (2007)
原著論文4
KimuraT, Fujisato T, Kishida A, et al
Preparation of PVA/DNA hydrogels via hydrogen bonds with ultra high pressurization and controlled release of DNA from the hydrogels for gene delivery
J Artif Organs , 10 (2) , 77-83  (2007)
原著論文5
Nam K, Kimura T, Kishida A
Physical and biological properties of collagen-phospholipid polymer hybrid gels
Biomaterials , 28  (2007)

公開日・更新日

公開日
2015-05-26
更新日
-