天然抗酸化剤を利用した創薬化学

文献情報

文献番号
200614057A
報告書区分
総括
研究課題名
天然抗酸化剤を利用した創薬化学
課題番号
H16-創薬-067
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
福原 潔(国立医薬品食品衛生研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 鈴木 聡(持田製薬株式会社)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 政策創薬総合研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
1,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
多様な生理活性を有している天然抗酸化物の構造に着目し、これらの構造を医薬品シーズとした新しい生活習慣病の予防または治療薬を開発することを目的としている。今年度はレスベラトロールを医薬品シーズとした新規抗酸化物質の開発と、カテキンおよびレスベラトロールを産業応用すべく製剤化を行った。
研究方法
1) カテキンの高含量茶葉の開発およびレスベラトロール高含量植物の探索を行った。さらに事業化に向けた製剤化を行った。
2) レスベラトロールの水酸基のオルト位にメチル基を導入した誘導体の合成を行い、抗酸化能と遺伝毒性(染色体異常)について検討を行った。
結果と考察
1) 安全で強力な抗酸化作用を有する生活習慣病予防物質の開発を目的としてレスベラトロールの水酸基のオルト位にメチル基が導入された誘導体を5種類合成した。抗酸化活性を解析した結果、4’位水酸基のオルト位にメチル基を導入するとガルビノキシルラジカルに対する水素移動反応速度(ラジカル消去能)はレスベラトロールと比べて14倍に増加し、両オルト位にメチル基を導入するとさらに強力なラジカル消去活性を示した。また、染色体異常の誘発はメチル基の導入によって大きく低下することがわかった。
2) メタボリックシンドロームの予防に有効な抗酸化物質について事業化を目的とした製剤化を検討した。その結果、緑茶を乳酸菌にて発酵させて茶葉の風味を改善しカテキン含量を高めた原料を開発し、本原料に便通改善作用のある植物繊維を混合した製剤を作成した。また、レスベラトロール高含量植物であるブドウの新芽の抽出物を用いて製剤化を行った。さらに本製剤を評価しうる新たなモニタリング技術を調査し、これらを組み合わせた生活習慣病予防技術について提案した。
結論
天然抗酸化物質の生活習慣病に対する予防効果に着目して、広く国民に信頼される有効性●安全性が保証された特定保健用食品、あるいは生活習慣病の予防または治療に有効な医薬品の開発に資する研究を行い、平成18年度は以下の成果が得られた。
1) レスベラトロールの4’位のオルト位にメチル基を導入すると抗酸化能が飛躍的に増強し、また、染色体異常の頻度がレスベラトロールと比較して大きく低下することがわかった。
2) カテキンとレスベラトロールの事業化を目的とした高含量原料の開発と製剤化に成功した。

公開日・更新日

公開日
2007-04-12
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2010-09-08
更新日
-

文献情報

文献番号
200614057B
報告書区分
総合
研究課題名
天然抗酸化剤を利用した創薬化学
課題番号
H16-創薬-067
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
福原 潔(国立医薬品食品衛生研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 鈴木 聡(持田製薬株式会社)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 政策創薬総合研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
多様な生理活性を有している天然抗酸化物の構造に着目して、これらの構造を医薬品シーズとした新しい生活習慣病の予防または治療薬を開発することを目的とする。
研究方法
1) 生活習慣病の予防に有効な抗酸化成分の探索を行う。また事業化の可能性のある成分に関しては、資源確保、製造方法、品質確保ならびに機能性試験と安全性試験について検討し、製剤化を行った。
2) 葡萄果皮に含まれているレスベラトロールについて、水酸基の数と位置の異なる誘導体を合成し、遺伝毒性について検討した。また、レスベラトロールを創薬テンプレートとした安全性の高い抗酸化物質の開発を行い、レスベラトロールのメチル誘導体を合成した。
3) 緑茶に含まれるカテキンを創薬テンプレートとした誘導化を行い、平面型カテキンを合成して抗酸化能と癌細胞に対する作用を検討した。
結果と考察
1) 可食性植物からの抗酸化成分としてカフェ酸誘導体と没食子酸誘導体、フラボノイド配糖体を明らかにした。また、天然抗酸化成分の製剤化について検討を行い、緑茶を乳酸菌にて発酵させた原料に便通改善作用のある植物繊維を混合した製剤と、レスベラトロール高含量植物であるブドウの新芽の抽出物を用いた製剤を作成した。さらに本製剤を評価しうる新たなモニタリング技術を調査し、これらを組み合わせた生活習慣病予防技術について提案した。
2) レスベラトロールは4’位の水酸基が抗酸化作用の本体であり、また、遺伝毒性発現にも関係していることが明らかとなった。そこで安全で強力な抗酸化作用を有する予防物質の開発を目的として4’位水酸基のオルト位にメチル基を導入したレスベラトロール誘導体を合成した。本化合物は抗酸化作用が飛躍的に増強し、遺伝毒性が大幅に減少した。
3) カテキンの立体構造を平面に固定した平面型カテキン誘導体を開発した。本化合物は強力な抗酸化能を有するとともに、抗酸化剤の毒性であるプロオキシダント効果が軽減していることがわかった。また、癌細胞に対してはアポトーシスを誘導して増殖抑制効果を示した。
結論
天然抗酸化物質の生活習慣病に対する予防効果に着目して、可食成分からの抗酸化成分の探索、および代表的なカテキンとレスベラトロールについて事業化を目的とした製剤化を行った。また、天然抗酸化物質を創薬テンプレートとした予防物質の開発を検討し、レスベラトロールのメチル誘導体および平面型カテキン誘導体の新規合成を行った。

公開日・更新日

公開日
2007-04-12
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2010-09-08
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200614057C

成果

専門的・学術的観点からの成果
天然抗酸化物質として代表的なカテキンとレスベラトロールについて、これらの構造を創薬テンプレートとした予防物質の開発を行い、平面型カテキン誘導体とレスベラトロールのメチル誘導体を新規に合成した。平面型カテキン誘導体は強力な抗酸化能を示し、癌細胞に対してアポトーシスを誘導した。レスベラトロールのメチル誘導体は強力な抗酸化能とともにレスベラトロールにみられる遺伝毒性が大きく軽減していることがわかった。
臨床的観点からの成果
脂肪細胞に対する天然抗酸化剤の作用に着目し、肥満の進行ひいては生活習慣病への移行を抑制する食品素材開発および、天然抗酸化物質を創薬テンプレートとした優れた抗酸化物質の開発を試みた。肥満の質を評価できる新たなモニタリング方法やITを駆使した生活指導法を通じて、今後これらを組み合わせることにより、新たなる医療産業の構築と少子高齢化に向けた国民のQOL向上ならびに医療費の削減をめざした予防医学の実現が期待される。
ガイドライン等の開発
2006年6月に医療制度改革法案が成立し、2008年から40歳から74歳の国民に対する生活習慣病健診・保健指導の義務化が確実となった。これに伴い、メタボリックシンドロームの予防等を目的とした保健機能成分が積極的に開発されることが予測される。本研究では保健機能成分の安全性・評価に関する行政対応の観点から、天然抗酸化物質の選定、資源確保、製造方法並びに評価方法(機能性・安全性・ヒトでのモニター方法)について検討を行った。
その他行政的観点からの成果
緑茶成分のカテキンおよび葡萄の果皮に含まれているレスベラトロールについて安全性評価を行った結果、カテキンは既に動物実験で高容量摂取によるDNA障害が報告されているが、今回、ある条件下では活性酸素を発生することを明らかにした。また、レスベラトロールは染色体異常を誘発することを明らかにした。これらの結果は生活習慣病の予防効果報告されている機能性食品成分の安全性の評価に資する有効な情報となる。
その他のインパクト
国民の健康増進を図るには予防医学の推進が急務の課題であり、その為には食生活を中心とした生活習慣の改善とともに、近年話題となっている機能性食品成分の摂取についても有効性と安全性について十分な評価を行った上で推進することが必要である。本研究では、さらに医療の現場においても積極的な利用が可能な予防物質の創薬について検討を行い、カテキンおよびレスベラトロールを創薬テンプレートとした優れた新規抗酸化物質を開発した。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
4件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
12件
学会発表(国際学会等)
3件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
K. Fukuhara, S. Oikawa, H. Okuda et.al.
9-Nitroanthracene derivative as a precursor of anthraquinone for photodynamic therapy
Bioorg. Med. Chem.  (2007)
原著論文2
W. Hakamata, H. Okuda, K. Fukuhara, et.al.
Planar catechin analogues with alkyl side chains, as a potent antioxidant and an α-glucosidase inhibitor
J. Am. Chem. Soc. , 128 , 6524-6525  (2006)
原著論文3
K. Fukuhara
A planar catechin analogue as a new type of synthetic antioxidant
Genes and Environment , 28 , 41-47  (2006)
原著論文4
K. Fukuhara, M. Nagakawa, H. Okuda, et.al.
Structural Basis for DNA Cleaving-Activity of Resveratrol om the Presence of Cu(II)
Bioorg. Med. Chem. , 14 , 1437-1443  (2006)

公開日・更新日

公開日
2015-05-26
更新日
-