siRNA発現ライブラリーによる新興・再興感染症の原因ウイルスの複製に必須な遺伝子の検索および創薬への応用

文献情報

文献番号
200614055A
報告書区分
総括
研究課題名
siRNA発現ライブラリーによる新興・再興感染症の原因ウイルスの複製に必須な遺伝子の検索および創薬への応用
課題番号
H16-創薬-064
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
森川 茂(国立感染症研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 鈴木 要介((株)ジェノファンクション)
  • 高崎 智彦(国立感染症研究所)
  • 水谷 哲也(国立感染症研究所)
  • 倉根 一郎(国立感染症研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 政策創薬総合研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
2,300,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
細胞遺伝子に対する網羅的なsiRNA発現ライブラリーを用いてSARS・西ナイル熱・ヒトサル痘などの重篤な新興・再興ウイルス感染症に係るウイルスの増殖、ウイルスによる細胞死に関与する細胞遺伝子を同定し、これらの発現を効率良く阻害するsiRNAを新しい抗ウイルス薬として開発する基礎データを得ることを目的とする。
研究方法
レンチウイルスベクターによる網羅的な細胞遺伝子に対するsiRNA libraryを導入した細胞に、ワクチニアウイルス、デングウイルスを感染させ、あるいはSARSウイルスN蛋白を発現して細胞障害活性の抑制効果を検討した。
結果と考察
各種ウイルス感染 siRNA発現細胞ライブラリーは、ワクチニアウイルス感染では細胞変性効果の遅延が、デングウイルスでは細胞変性効果の増強が認められた。SARSウイルスN蛋白発現系では細胞死の遅延が見られた。ワクチニアウイルス感染、SARS-N蛋白発現、致死的紫外線照射により得られた細胞死抑制siRNAは、それぞれの系で異なった。このことは、細胞死に関わる細胞遺伝子がウイルスにより異なるためと考えられる。
結論
レンチウイルスベクターを用いて作製したsiRNA発現細胞ライブラリーでは、ワクチニアウイルスによる細胞変性効果を遅延できることが明らかとなり、その効果のあるsiRNAの候補を得ることができた。また、SARSウイルスのN蛋白質や紫外線照射による実験でも、これら刺激に対して効果のあるsiRNAの配列の候補を得た。しかし、デングウイルスを用いたときには、逆にsiRNAライブラリー発現細胞への細胞障害性が増強した。

公開日・更新日

公開日
2007-04-16
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2010-09-08
更新日
-

文献情報

文献番号
200614055B
報告書区分
総合
研究課題名
siRNA発現ライブラリーによる新興・再興感染症の原因ウイルスの複製に必須な遺伝子の検索および創薬への応用
課題番号
H16-創薬-064
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
森川 茂(国立感染症研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 鈴木 要介((株)ジェノファンクション)
  • 高崎 智彦(国立感染症研究所)
  • 水谷 哲也(国立感染症研究所)
  • 倉根 一郎(国立感染症研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 政策創薬総合研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
細胞遺伝子に対する網羅的なsiRNA発現ライブラリーを用いてSARS・西ナイル熱・ヒトサル痘などの重篤な新興・再興ウイルス感染症に係るウイルスの増殖、ウイルスによる細胞死に関与する細胞遺伝子を同定し、これらの発現を効率良く阻害するsiRNAを新しい抗ウイルス薬やウイルスベクター対策法を開発する基礎データを得ることを目的とする。
研究方法
レンチウイルスベクターによる網羅的な細胞遺伝子に対するsiRNA libraryを導入した細胞に、種々のウイルスを感染させ、あるいはSARSウイルスN蛋白を発現して細胞障害活性の抑制効果を検討した。西ナイルウイルス等のベクターとなる蚊のウイルス感染等に対するsiRNA効果を検討した。
結果と考察
細胞のmRNAに対するsiRNAをレンチウイルスベクターで発現する細胞ライブラリーを構築した。ワクチニアウイルスの感染や紫外線照射では細胞死が遅延された細胞から、その効果に関連する可能性のあるsiRNA配列が得られた。デングウイルスを感染させると、siRNA発現細胞では細胞死が増強された。SARSウイルスのN蛋白質を発現すると細胞死が誘導されるが、細胞死が遅延した細胞では分子シャペロンの機能を有するHsp40等のsiRNA等が同定された。また、より多くの遺伝子をカバーするsiRNAライブラリーから候補siRNA発現カセットを回収して再度細胞へtransductionする系を確立した。西ナイルウイルスのベクターである蚊の細胞では、JNKシグナル伝達系の活性化は、ウイルス感染を促進し、アポトーシスを抑制することが明らかになり、JNKの阻害剤やsiRNAにより蚊の幼虫の脱皮が阻害されることを明らかにした。
結論
siRNAは特定の遺伝子発現を阻害できる。プラスミドを用いたsiRNA libraryの研究では実験系に問題点が多く、ウイルスの増殖や細胞死に関与するsiRNAを特定することはできなかったが、レンチウイルスベクターに改良後、ワクチニアウイルスによる細胞変性効果を遅延できることが明らかとなり、その効果のあるsiRNAの候補を得ることができた。SARSウイルス感染細胞内でのシグナル伝達経路を解明し、西ナイルウイルスのベクターである蚊のJNKのsiRNAの効率的導入法により幼虫の脱皮過程を阻害することができた。

公開日・更新日

公開日
2007-04-16
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2010-09-08
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200614055C

成果

専門的・学術的観点からの成果
プラスミドを用いた細胞遺伝子の網羅的siRNA libraryの研究では実験系に問題点が多く、ウイルスの増殖や細胞死に関与するsiRNAを特定することはできなかったが、レンチウイルスベクターに改良後ワクチニアウイルスによる細胞変性効果を遅延できることが明らかとなり、その効果のあるsiRNAの候補を得ることができた。SARSウイルス感染細胞内でのシグナル伝達経路を解明し、西ナイルウイルスのベクターである蚊のJNKのsiRNAの効率的導入法により幼虫の脱皮過程を阻害することができた。
臨床的観点からの成果
本研究は、臨床的な応用までの研究を行なっていないため該当しない。
ガイドライン等の開発
特になし
その他行政的観点からの成果
特になし
その他のインパクト
特になし

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
4件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
5件
学会発表(国際学会等)
4件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Mizutani T, Fukushi S, Ishii K, et al.
Mechanisms of establishment of persistent SARS-CoV-infected cells
Biochem Biophys Res Commun , 347  (2006)
原著論文2
Mizutani T, Fukushi S, Iizuka D, et al.
Inhibition of Cell Proliferation by SARS-CoV infection in Vero E6 cells.
FEMS Immunology and Medical Microbiology , 46  (2006)
原著論文3
Mizutani T, Fukushi S, Saijo M, et al.
Regulation of p90RSK phosphorylation by SARS-CoV infection in Vero E6 cells
FEBS Lett. , 580  (2006)
原著論文4
Tajima, S., Nukui, Y., Ito, M.,
Nineteen nucleotides in the variable region of 3’ non-translated region are dispensable for the replication of dengue type 1 virus in vitro
Virus Res. , 116  (2006)

公開日・更新日

公開日
2015-05-26
更新日
-