核酸封入ナノカプセルによるウイルス消毒薬、抗ウイルス薬の創薬に関する研究

文献情報

文献番号
200614054A
報告書区分
総括
研究課題名
核酸封入ナノカプセルによるウイルス消毒薬、抗ウイルス薬の創薬に関する研究
課題番号
H16-創薬-063
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
武田 直和(国立感染症研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 岡 智一郎(国立感染症研究所ウイルス第二部)
  • 日置 祐一(花王株式会社C&S事業部)
  • 徳田 一 (花王株式会社安全性評価研究センター)
  • 小沼 博隆(東海大学海洋学部水産学科)
  • 小澤 一弘(株式会社中部衛生検査センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 政策創薬総合研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
5,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
既存の消毒薬および、新規消毒薬を用いたノロウイルス(NoV)、サポウイルス(SaV)の効果的な不活化薬の検索と創薬、感染予防方法の構築を行うとともに、新規約剤のスクリーニングおよび実用化を目指した。
研究方法
NoV、SaVの構造蛋白をコードする遺伝子領域を発現する組換えバキュロウイルスを作製し、昆虫細胞による蛋白発現系によってウイルス様粒子(VLP)を作出した。さらに、その内部にレポーター遺伝子を組み込んだ疑似ウイルスナノカプセルの作出を試みた。VLPの崩壊と粒子数の減少の程度をTEMで観察し、消毒剤の効果を半定量化した。NoVのsarrogateとしてのネコカリシウイルス(FCV)の有用性を評価した。現在流行しているNoVの遺伝子型を把握することを目的として、過去1年間に検出されたNoVの遺伝子解析を行なった。マウスのロウイルスの分離を試みた。
結果と考察
極めて微量ではあるが、ほぼ均一な比重、形態を有する核酸内包疑似ウイルスの作出に成功した。遺伝子群Iに関してはGI/1を、遺伝子群IIに関してはGII/4とGII/14のVLPを大量に発現させ、TEMによる粒子形状と粒子数を指標に消毒剤の効果を評価した。SaVについては遺伝子群IVのVLPの作出と精製に成功した。しかし、SaVのVLPの収量はNoVのそれに比べ1/10程度であり、現状では本研究の用途に使用するには十分ではない。マウスのロウイルスの分離に成功した。NoV不活化のための薬剤評価に使用したVLPはGⅠ/4およびGⅡ/4であり、現在国内で流行しているGIおよびGIIの遺伝子型が含まれていることを確認した。
結論
核酸を内包したナノカプセルの作出にはさらなる条件検討が必要である。また、FCVを用いて過塩素酸ソーダ、エタノール、および過酸化水素水感受性試験を行い、感受性において株間に差異があることを明らかにした。TEM像におけるVLPの崩壊と粒子数の減少の程度から不活化効果の半定量的評価が可能となり、炭酸Naなどのアルカリ剤が有効であることが示唆された。NoV VLPの大量作製技術は確立したが、SaV VLPの実用化には収量の改善が必須である。

公開日・更新日

公開日
2007-04-03
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2010-09-08
更新日
-

文献情報

文献番号
200614054B
報告書区分
総合
研究課題名
核酸封入ナノカプセルによるウイルス消毒薬、抗ウイルス薬の創薬に関する研究
課題番号
H16-創薬-063
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
武田 直和(国立感染症研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 岡 智一郎(国立感染症研究所ウイルス第二部)
  • 日置 祐一(花王株式会社 C&S事業部)
  • 徳田 一(花王株式会社 安全性評価研究センター)
  • 小沼 博隆(東海大学海洋学部水産学科)
  • 小澤 一弘(株式会社 中部衛生検査センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 政策創薬総合研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
既存の消毒薬および、新規消毒薬を用いたノロウイルス(NoV)、サポウイルス(SaV)の効果的な不活化薬の検索と創薬、感染予防方法の構築を行うとともに、新規約剤のスクリーニングおよび実用化を目指した。
研究方法
NoVの新たな遺伝子型10株の全塩基配列を決定した。NoV、SaVの構造蛋白をコードする遺伝子領域を発現する組換えバキュロウイルスを作製し、昆虫細胞による蛋白発現系によってウイルス様粒子(VLP)を作出した。さらに、その内部にレポーター遺伝子を組み込んだ疑似ウイルスナノカプセルの作出を試みた。VLPの崩壊と粒子数の減少の程度をTEMで観察し、消毒剤の効果を半定量化した。NoVのsarrogateとしてのネコカリシウイルス(FCV)の有用性を評価した。現在流行しているNoVの遺伝子型を把握することを目的として、過去1年間に検出されたNoVの遺伝子解析を行なった。マウスのロウイルスの分離を試みた。
結果と考察
NoVはGI、GIIの2つの遺伝子群に分かれ、それぞれ14種類、17種類の互いに抗原性の異なる遺伝子型から構成されていた。これらNoVのデータベースを構築した。均一な比重、形態を有する核酸内包疑似ウイルスの作出に成功した。GI/1、GII/4、およびGII/14のVLPを大量に発現させ、TEMによる粒子形状と粒子数を指標に消毒剤の効果を評価した。SaVについては遺伝子群IVのVLPの作出と精製に成功した。しかし、SaVのVLPの収量はNoVのそれに比べ1/10程度であり、現状では本研究の用途に使用するには十分ではない。マウスのロウイルスの分離に成功した。NoV不活化のための薬剤評価に使用したVLPはGⅠ/4およびGⅡ/4であり、現在国内で流行しているGIおよびGIIの遺伝子型が含まれていることを確認した。
結論
核酸を内包したナノカプセルの作出にはさらなる条件検討が必要である。また、FCVを用いて過塩素酸ソーダ、エタノール、および過酸化水素水感受性試験を行い、感受性において株間に差異があることを明らかにした。TEM像におけるVLPの崩壊と粒子数の減少の程度から不活化効果の半定量的評価が可能となり、炭酸Naなどのアルカリ剤が有効であることが示唆された。NoV VLPの大量作製技術は確立したが、SaV VLPの実用化には収量の改善が必須である。

公開日・更新日

公開日
2007-04-03
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2010-09-08
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200614054C

成果

専門的・学術的観点からの成果
ノロウイルスは遺伝学的に大きく二つのグループ、遺伝子群IとII、に分類され、さらにそれぞれが15と18の遺伝子型を持つ極めて多様な集団として伝播を繰り返していることが明らかになっている。本研究での成果を含め、これまでに23種、18遺伝子型のノロウイルス様組換え粒子(VLP)を作出し、それらの高力価血清との交差血清反応から各々のVLPの抗原性を明らかにした。また、VLPの大量培養と精製法、それを用いた高力価血清作製法を確立した。
臨床的観点からの成果
ノロウイルスはいまだに増殖のための細胞培養系も実験動物系もないウイルスであることから薬剤の不活化条件や効果を評価する方法が限られている。本研究では培養可能なネコカリシウイルスで得られた各種薬剤の不活化条件をノロウイルスに外挿するためのマラメーターを検討した結果、薬剤の効果とVLPの電子顕微鏡下における形態学的な変化がよく相関することを明らかにした。
ガイドライン等の開発
平成18年9月11日に開催された食品安全委員会、微生物(第18回)・ウイルス(第11回)合同専門調査会において、カキを主とする二枚貝中のノロウイルス食品健康影響評価のためのリスクプロファイルが審議された。本研究で得られた情報をリスクプロファイルの作成に提供した。

その他行政的観点からの成果
本研究班での研究結果に基づき、「ノロウイルスに関するQ&A(最終改定:平成19年3月7日)」の改定において情報を提供した。
その他のインパクト
ノロウイルスGII/4がわが国における急性胃腸炎大流行の主要な遺伝子型であることを明らかにした。ターゲットをGII/4に絞った消毒薬、迅速診断試薬の開発、およびワクチン開発が必須である。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
30件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
21件
学会発表(国際学会等)
8件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
1件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Katayama K., Hansman GS., Oka T. et al.
Investigation of Norovirus replication in a human cell line.
Arch Virol , 151 (7) , 1291-1308  (2006)
原著論文2
Wu FT., Oka T., Katayama K. et al.
Genetic diversity of noroviruses in Taiwan between November 2004 and March 2005.
Arch Virol , 151 (7) , 1319-1327  (2006)
原著論文3
Hansman GS., Natori K., Shirato-Horikoshi H. et al.
Genetic and antigenic diversity among noroviruses.
J Gen Virol , 87 (4) , 909-919  (2006)
原著論文4
Oka T, Yamamoto M, Katayama K. et al.
Identification of the cleavage sites of sapovirus open reading frame 1 polyprotein.
J Gen Virol , 87 (11) , 3329-3338  (2006)
原著論文5
Oka T, Katayama K, Hansman GS et al.
Detection of human sapovirus by real-time reverse transcription-polymerase chain reaction.
J Med Virol , 78 (10) , 1347-1353  (2006)
原著論文6
Shirato-Horikoshi H, Ogawa S, Wakita T et al.
Binding activity of norovirus and sapovirus to histo-blood group antigens.
Arch Virol , 152 , 457-461  (2007)
原著論文7
Okada M, Tanaka T, Oseto M et al.
Genetic analysis of noroviruses associated with fatalities in healthcare facilities.
Arch Virol , 151 , 1635-1641  (2006)
原著論文8
Guntapong R, Hansman GS, Oka et al.
Norovirus and Sapovirus Infection in Thailand.
Jpn J Infect Dis , 57 , 276-278  (2004)

公開日・更新日

公開日
2015-05-26
更新日
-