文献情報
文献番号
200614053A
報告書区分
総括
研究課題名
脂質輸送を制御する生活習慣病予防薬開発のための基礎的研究
課題番号
H16-創薬-061
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
最上 知子(国立医薬品食品衛生研究所)
研究分担者(所属機関)
- 横山 信治(名古屋市立大学大学院医学研究科)
- 藤本 康之(帝京大学薬学部)
- 坂井薫(三菱ウェルファーマ(株)創薬第二研究所)
- 島田浩志(三菱ウェルファーマ(株)創薬第二研究所)
- 松倉竹雄(あすか製薬(株) )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 政策創薬総合研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
10,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
血管壁マクロファージなどにコレステロールが蓄積すると動脈硬化の原因となる。HDL(High Density Lipoprotein)はコレステロールを細胞外に運び出し、胆汁酸への転換・排泄の場である肝臓に輸送する機能を持つ。本研究では、[1]末梢細胞でのHDL産生、[2]肝臓でのコレステロール・胆汁酸排出の促進により動脈硬化性疾患を防ぐ新たな方法を探るとともに、[3]コレステロールの胆汁酸への転換促進がもたらす抗肥満・抗糖尿病作用の機序を明らかにする。
研究方法
膜トランスポーターATP-binding cassette transporter A1(ABCA1)の発現増加によるHDL形成の促進を図り、肝臓でのコレステロール・胆汁酸排出の促進に関与する脂質メディエーターを同定する。また、コレステロールの胆汁酸への転換を促進する胆汁酸吸着樹脂による抗肥満・抗糖尿病作用を解明する。
結果と考察
[1]HDL産生の促進:1)ABCA1と相同性の高いABCA7の機能について、HDL新生能を検討した。2)炎症性蛋白質であるSerum Amyloid A (SAA)がapoA-Iと同様のHDL新生能を持つこと、3)免疫抑制剤cyclosporineがprobucolと同様にABCA1の活性阻害と分解抑制を同時に行うことが示された。4)カルシウムアンタゴニストverapamilのABCA1遺伝子プロモーター活性化を担う核内転写因子を見いだした。5)低用量のプロブコールのHDL上昇作用機序を解析した。6)ヒト肝由来培養細胞から単離した脂肪滴に、アシルCoAを基質とする中性脂質合成活性を検出した。
[2] 肝臓でのコレステロール・胆汁酸排泄の促進と抗肥満・抗糖尿病作用: 1)FXRリガンド胆汁酸の構造活性相関を検討し、C-7β位の置換基導入によるFXR-コアクチベーター会合減少・転写活性低下作用を見いだした。2)胆汁酸吸着樹脂投与は高脂肪食負荷マウスで強い抗肥満作用・抗糖尿病作用を示し、褐色脂肪組織の熱産生関連遺伝子の増加によるエネルギー代謝亢進作用が示唆された。
[2] 肝臓でのコレステロール・胆汁酸排泄の促進と抗肥満・抗糖尿病作用: 1)FXRリガンド胆汁酸の構造活性相関を検討し、C-7β位の置換基導入によるFXR-コアクチベーター会合減少・転写活性低下作用を見いだした。2)胆汁酸吸着樹脂投与は高脂肪食負荷マウスで強い抗肥満作用・抗糖尿病作用を示し、褐色脂肪組織の熱産生関連遺伝子の増加によるエネルギー代謝亢進作用が示唆された。
結論
動脈硬化抑制の新手法を探るために、HDL形成におけるABCA1/A7の遺伝子転写制御や炎症性タンパクSerum Amyloid Aの役割、免疫抑制剤cyclosporineの影響を明らかにし、肝臓からのコレステロール・胆汁酸排泄に関わるFXRリガンドの構造活性相関に関する新知見を得た。また、胆汁酸吸着樹脂に熱産生関連遺伝子発現増加作用を見いだした。
公開日・更新日
公開日
2007-04-26
更新日
-