可溶性ウイルス受容体等を利用した抗ウイルス剤の開発に関する研究

文献情報

文献番号
200614051A
報告書区分
総括
研究課題名
可溶性ウイルス受容体等を利用した抗ウイルス剤の開発に関する研究
課題番号
H16-創薬-059
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
田口 文広(国立感染症研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 星野 洪郎(群馬大学医学部)
  • 柳 雄介(九州大学大学院医学研究院)
  • 森山 雅美(慶応義塾大学医学部)
  • 福島 正和(大鵬薬品工業株式会社製薬センター)
  • 望月 英典(東レ株式会社医薬研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 政策創薬総合研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
8,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
可溶性ウイルス受容体や合成受容体ペプチドは、ウイルスの変異に拘わらずウイルスを中和するため、様々なウイルス感染症における有望な治療薬の候補である。本研究の目的は、これらの製剤によるウイルス感染防御法確立のための基盤的研究であり、ウイルスと受容体の相互認識機構の解明を行う。
研究方法
マウス肝炎ウイルス(MHV)の可溶性受容体(soMHVR)をバキュロウイルスで発現し、精製soMHVRのMHV感染促進活性を検討した。麻疹ウイルス受容体結合するH蛋白を精製して結晶化し、X線解析により構造を決定した。HIVコレセプターFPRL1のリガンドfMet-Leu-Pheペプチドの感染阻止活性を調べた。
結果と考察
1nMでMHV中和活性を示すsoMHVRは、50nMの濃度でMHVの受容体非発現細胞への感染を促進する作用があることが明らかにされた。soMHVRを抗ウイルス剤として開発する場合、感染促進活性を除く必要があることが示唆された。麻疹ウイルスH蛋白の受容体SLAMとの相互作用がbetaシート5の限られた領域に存在することが明らかにされ、ウイルスと受容体結合の阻害物質の設計が可能となり、新たな抗ウイルス剤開発への道が開かれた。HIV感染は実験室株のみならず臨床分離株もFPRL1のリガンドfMet-Leu-Pheにより阻止されることが明らかにされ、抗HIV剤開発への高い可能性が示唆された。
結論
soMHVRはMHV中和活性を示し、抗ウイルス剤の有力な候補であるが、MHV感染促進活性があり、この活性を抑える構造に改変する必要がある。麻疹ウイルスH蛋白の構造解析から、受容体との結合を阻止する薬剤の開発が可能となった。HIVコレセプターのリガンドペプチドが感染を抑えることから、コレセプターとの結合を阻止する新たな抗HIV剤開発が期待される。

公開日・更新日

公開日
2007-04-16
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2010-09-08
更新日
-

文献情報

文献番号
200614051B
報告書区分
総合
研究課題名
可溶性ウイルス受容体等を利用した抗ウイルス剤の開発に関する研究
課題番号
H16-創薬-059
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
田口 文広(国立感染症研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 星野 洪郎(群馬大学医学部)
  • 柳 雄介(九州大学大学院医学研究院)
  • 森山 雅美(慶応義塾大学医学部)
  • 福島 正和(大鵬薬品工業株式会社製薬センター)
  • 曽根 三郎(東レ株式会社医薬研究所)
  • 望月 英典(東レ株式会社医薬研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 政策創薬総合研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
可溶性ウイルス受容体や合成受容体ペプチドは、ウイルスの変異に拘わらず中和するため、ウイルス感染症における有望な治療薬の候補である。本研究では、これらの製剤によるウイルス感染防御法確立を目的とし、ウイルスと受容体の相互作用の解明を行う。
研究方法
マウス肝炎ウイルス(MHV)の可溶性受容体(soMHVR)、SARSウイルス(SARS-CoV)可溶性受容体(soACE2)を発現、精製し、ウイルス中和活性等を検討した。マウスSLAMを麻疹ウイルス(MV)受容体ヒトSLAMで置換えた(KI)マウスを作製し、MVに対する感受性を検討した。SLAMに結合するMVH蛋白を結晶化し、X線解析により構造を決定した。ヘパラン硫酸(HS)のHTLV-1受容体活性を検討した。HIVコレセプターFPRL1のリガンドfMet-Leu-Pheの感染阻止活性を調べた。
結果と考察
soMHVR、soACE2はMHV、SARS-CoVを中和するが、前者は、MHVの受容体非発現細胞への感染を促進することが明らかにされた。ヒトSLAM遺伝子を持つKIマウスではウイルス増殖は認められなかったが、interferon 受容体ノックアウトのKIマウスでは感染が認められた。MVH蛋白の受容体SLAMとの相互作用がbetaシート5の限られた領域に存在することが明らかにされた。ヒト細胞のHTLV-1に対する感受性を決定する因子としてヘパラン硫酸プロテオグリカンが同定された。HIVのコレセプターとしてFPRL1を同定した。HIV感染は実験室株のみならず臨床分離株もFPRL1のリガンドfMet-Leu-Pheにより阻止されることが明らかにされた。
結論
コロナウイルスの可溶性受容体は中和活性を示すが、ウイルス感染促進活性があり、この活性の無い可溶性受容体への改良が重要であると考えられる。MV感受性のKIマウスが作成され、野生株MVを用いた感染実験による麻疹の発症機構解明や抗MV剤のスクリーニングに有用であり、抗MV剤開発の貴重な基盤的研究である。MVH蛋白の構造解析から、受容体との結合を阻止する薬剤の開発が可能となった。HSがHTLV-1受容体として機能することが明らかとなり、HSの特異的糖鎖構造についての検討が必要である。HIVコレセプターのリガンドペプチドが感染を抑えることから、コレセプターとの結合を阻止する新たな抗HIV剤開発が期待される。

公開日・更新日

公開日
2007-04-16
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2010-09-08
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200614051C

成果

専門的・学術的観点からの成果
コロナウイルス、麻疹ウイルス及びヒトレトロウイルスの受容体結合阻止によるウイルス感染防御機構に関する基礎的な研究が行われた。本研究では、可溶性受容体、受容体結合性蛋白等を利用した抗ウイルス剤開発の新たな方向が示され、斬新な抗ウイルス戦略の一手段として今後の研究が期待される。
臨床的観点からの成果
本研究では臨床試験、研究を行なっていない.
ガイドライン等の開発
特になし
その他行政的観点からの成果
特になし
その他のインパクト
特になし

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
36件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
3件
学会発表(国内学会)
56件
学会発表(国際学会等)
18件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Fukushi S, Mizutani T, Saijo M
Vesicular stomatitis virus pseudotyped with severe acute respiratory syndrome coronavirus spike protein.
J Gen Virol , 86  (2005)
原著論文2
Nakagaki K, Nakagaki K and Taguchi F.
Receptor-independent spread of a neurotropic murine coronavirus MHV-JHMV in mixed neural culture.
Adv. Exp. Med. Biol. , 581  (2006)
原著論文3
Watanabe R, Matsuyama S and Taguchi F
Receptor-independent infection of murine coronavirus:analysis by spinoculation.
J. Virol. , 80  (2006)

公開日・更新日

公開日
2015-05-26
更新日
-