個体特性に着目した食品成分の骨粗鬆症に対する予防効果に関する研究

文献情報

文献番号
200614044A
報告書区分
総括
研究課題名
個体特性に着目した食品成分の骨粗鬆症に対する予防効果に関する研究
課題番号
H16-創薬-051
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
石見 佳子(独立行政法人国立健康・栄養研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 内山成人(大塚製薬株式会社佐賀栄養製品研究所)
  • 岡純(東京家政大学家政学部)
  • 上原万里子(東京農業大学応用生物科学部)
  • 戸田登志也(フジッコ株式会社)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 政策創薬総合研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
3,450,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は、閉経期女性の骨量減少に対する大豆イソフラボンの効果を個体特性を考慮に入れ検証し、より効果的な骨粗鬆症の予防法を確立することである。現在イソフラボンの骨に対する作用は、ダイゼインの代謝産物であり、活性の本体であると考えられているエクオール(Eq)の産生に影響を受けることが示唆されているが、Eqの腸管における産生には個体差があることが報告されている。そこで、閉経期女性を対象に、大豆イソフラボンの介入試験を行ない、Eqの産生能と骨量減少を抑制する効果について相関関係の有無を検討する。
研究方法
閉経後1-5年を経過した健常女性をプラセボ群及び大豆イソフラボン配糖体(フジフラボンP40、75mg/日;アグリコン換算47mg/日)摂取群の二群に分け、二重盲検無作為割付比較試験を行う。今年度はプラセボ群47名(4名離脱)、イソフラボン群46名の1年目の結果について解析を行なった。
また、2年目の骨密度、血中骨代謝マーカー、血中及び尿中イソフラボン濃度の測定等を行った。被験者の人権擁護のための配慮およびインフォームドコンセントは十分に行った。
結果と考察
1. 介入1年後の被験者の身体組成及び栄養素摂取量は両群間で有意な差は認められなかった。
2.糞便による判定でEq産生が認められた者のうち、尿中にEqが検出された者は介入前で78%、介入1年後で71%であった。
2. 1年間のイソフラボン摂取により、血中Eq濃度はEq産生者で有意に上昇した。
3. 試験開始1年後の大腿骨骨密度はプラセボ群で有意に低下したが、イソフラボン群では頸部において有意な低下は認められなかった。1年間の骨密度の変化率は両群間に有意な差は認められなかった。
4.イソフラボン群のEq産生者の大腿骨近位部の骨密度の低下率は非産生者に比べて有意に低かった。
5. 介入1年後の血中各種ホルモン濃度は群間に有意な差は認められなかった。
以上の結果より、イソフラボンの骨代謝に対する影響は、個人のEq産生能を考慮する必要がある可能性が示唆された。
結論
閉経後女性を対象とした大豆イソフラボン(アグリコン換算47mg/日)の1年間の介入は、骨密度には大きく影響しないが、ダイゼインの代謝産物であるEq産生能を考慮して解析を行なうと、Eq産生者の大腿骨近位部の骨密度の低下率は、非産生者に比べて有意に低いことが明らかになった。

公開日・更新日

公開日
2007-04-03
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2010-09-08
更新日
-

文献情報

文献番号
200614044B
報告書区分
総合
研究課題名
個体特性に着目した食品成分の骨粗鬆症に対する予防効果に関する研究
課題番号
H16-創薬-051
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
石見 佳子(独立行政法人国立健康・栄養研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 岡 純(東京家政大学 家政学部)
  • 上原 万里子(東京農業大学 応用生物科学部)
  • 内山 成人(大塚製薬株式会社 佐賀栄養製品研究所)
  • 戸田 登志也(フジッコ株式会社)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 政策創薬総合研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は、閉経期女性の骨量減少に対する大豆イソフラボンの効果を個体特性を考慮に入れ検証し、より効果的な骨粗鬆症の予防法を確立することである。現在イソフラボンの骨に対する作用は、ダイゼインの代謝産物であり、活性の本体であると考えられているエクオール(Eq)の産生に影響を受けることが示唆されているが、Eqの腸管における産生には個体差があることが報告されている。そこで本試験では、閉経期女性を対象に大豆イソフラボンの介入試験を行ない、Eqの産生能と骨量減少を抑制する効果について相関関係の有無を検討した。
研究方法
閉経後1-5年を経過した健常女性をプラセボ群及びイソフラボン配糖体(フジフラボンP40、アグリコン換算47mg/日)摂取群の二群に分け、二重盲検無作為割付比較試験を行った。プラセボ群51名、イソフラボン群46名について1年間の試験を実施し、骨密度、身体組成、血中骨代謝マーカー、血中及び尿中イソフラボン濃度の測定を行った。身体組成はDXA法により測定した。被験者の人権擁護のための配慮およびインフォームドコンセントは十分に行った。統計解析にはSPSS(Ver14)を用いた。
結果と考察
1. 試験開始時及び1年後の被験者の身体組成、各種生体指標及び栄養素摂取量は両群間で有意な差は認められなかった。
2. 試験開始時に糞便を用いてEq産生能を評価した結果、産生者は60.4%であった。
3. 1年間のイソフラボン摂取により、血中Eq濃度はEq産生者で有意に上昇した。
4. 試験開始1年後の大腿骨骨密度はプラセボ群で有意に低下したが、イソフラボン群では頸部において有意な低下は認められなかった。1年間の骨密度の変化率は両群間に有意な差は認められなかった。
5.イソフラボン群のEq産生者の大腿骨近位部の骨密度の低下率及び体脂肪量の増加率は、非産生者に比べて有意に低かった。
6. 介入1年後の血中各種ホルモン濃度は群間で有意な差は認められなかった。
以上の結果より、イソフラボンの骨代謝に対する影響は、個々人のEq産生能を考慮する必要がある可能性が示唆された。
結論
閉経後女性を対象とした大豆イソフラボン(アグリコン換算47mg/日)の1年間の介入は、骨密度には大きく影響しないが、ダイゼインの代謝産物であるEq産生能を考慮して解析を行なうと、Eq産生者の大腿骨近位部の骨密度の低下率は、非産生者に比べて有意に低いことが明らかになった。

公開日・更新日

公開日
2007-04-12
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2010-09-08
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200614044C

成果

専門的・学術的観点からの成果
大豆イソフラボンは骨粗鬆症予防効果が期待されているが、日本人を対象とした疫学研究ではその有効性については必ずしも一致した見解は得られていない。これは対象者の個体差によるものであると考えらる。そこで本試験で、閉経後女性を対象に1年間の大豆イソフラボンの介入試験を行ったところ、その効果はダイゼインの代謝産物であるエクオールの腸内における産生能に依存することが明らかになった。この結果は、これまで不明であったヒトにおける大豆イソフラボンの骨代謝調節作用のメカニズムの解明に繋がるものと考えられる。
臨床的観点からの成果
高齢化社会を迎え、骨粗鬆症患者は2010年には1200万人を超えると予想されている。骨量は一旦低下すると回復は望めないことから、骨粗鬆症は予防が最も重要である。本試験は大豆イソフラボン(ダイゼイン)からエクオールへの代謝能をもつエクオール産生者は閉経後女性では約60%であり、産生者においては大豆イソフラボン摂取の骨代謝に対する有効性が確認された。従って、今後はエクオール産生菌の同定及び産生を高める食品素材の開発を行なうことにより、個体特性に基づくテーラーメイドの骨粗鬆症予防法の確立が期待できる。
ガイドライン等の開発
本研究では大豆イソフラボンの閉経後女性の骨代謝に対する有効性を評価すると同時に、安全性に関する評価も行なった。その結果、1年間の大豆イソフラボン配糖体(アグリコン換算47mg/日)の上乗せ摂取は、閉経後女性の血中女性ホルモン濃度及び甲状腺ホルモン濃度には影響しないことが明らかになった。大豆イソフラボンの安全性に関しては、内閣府食品安全委員会で評価が行なわれ、平成18年5月に報告書が提出されたが、本研究のこれらの結果は報告書に引用されたことから、本課題は厚生行政に直接貢献することができたと考える。
その他行政的観点からの成果
骨折によりQOL は著しく低下することから、骨粗鬆症の予防は高齢化社会において重要な課題である。本研究では1年間の大豆イソフラボン配糖体(アグリコン換算47mg/日)摂取が、閉経後女性の骨量減少に対して有効である可能性を示したことから、食生活の改善による骨粗鬆症に対する予防効果が期待され、高齢化社会におけるQOLの向上に寄与できると考えられる。さらに骨粗鬆症および高脂血症などの生活習慣病に関わる膨大な財政負担の削減にも繋がると予想される。
その他のインパクト
本試験において日本人閉経後女性の約60%がエクオール(Eq)産生者であり、その産生能は比較的安定であることが、24時間尿中のEq濃度を測定することにより判明した。また閉経後骨粗鬆症モデル動物においては、Eq産生を高めるフラクトオリゴ糖をイソフラボンと併用摂取することにより、骨量減少抑制作用が増強されること、また、その産生を抑制することにより骨作用が消失することが明らかになった。これらの結果と臨床試験を併せて、平成19年5月に第61回日本栄養・食糧学会のトピックスとしてプレス発表される。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
11件
その他論文(和文)
5件
その他論文(英文等)
1件
学会発表(国内学会)
4件
学会発表(国際学会等)
2件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
1件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Wu J, Wang X, Ishimi Y. et al.
Combined intervention of soy isoflavone and exercise prevents body fat elevation adn bone loss in ovariectomized mice
Metabolism , 53 , 942-948  (2004)
原著論文2
Fujioka M, Uehara M, Ishimi Y. et al.
equol, a metabolite of daidzein, inhibits bone loss in ovariectomized mice
J Nutr , 134 , 2623-2627  (2004)
原著論文3
Uesugi S, Watanabe S, Uehara M. et al.
Effects of isoflavone supplements on bone metabolic markers and climacteric symptoms in Japanese women
Biofactors , 22 , 221-228  (2004)
原著論文4
Koshihara M, Masuyama R, Uehara M. et al.
Effect of dietary calcium: Phosphorus ratio on bone mineralization and intestinal calcium absorption in ovariectomized rats
Biofactors , 22 , 39-42  (2004)
原著論文5
Koshihara M, Masuyama R, Uehara M. et al.
Reduction in dietary calcium/phosphorus ratio reduces bone mass and strength in ovariectomized rats enhancing bone turnover
Biosci Biotechnol Biochem , 69 , 1970-1973  (2005)
原著論文6
Matsuzaki H, Katsumata S, Uehara M. et al.
Effects of high calcium intake on bone metabolism in magnesium-deficient rats
Magnes Res , 18 , 97-102  (2005)
原著論文7
Wu J, Oka J, Ishimi Y. et al.
Cooperative iffects of isoflavone and exercise on bone and lipid metabolism in postmenopausal Japanese Women: a randomized placebo-controled trial
Metabolism , 55 , 423-433  (2006)
原著論文8
Wu J, Oka J, Ishimi Y. et al.
Effects of isoflavone and exercise on bone and lipid metabolism in postmenopausal Japanese women: One–year randomized placebo-controlled trial
J Bone Miner Res , 21 , 780-789  (2006)
原著論文9
Katsumata S, Matsuzaki H, Uehara M. et al.
Moderate magnesium-restricted diet affects bone formation and bone resorption in rats
Magnes Res , 19 , 12-18  (2006)
原著論文10
Katsumata S, Tsuboi R, Uehara M. et al.
Dietary iron deficiency decreases serum osteocalcin concentration and bone mineral density in rats
Biosci Biotechnol Biochem , 70 , 2547-2550  (2006)
原著論文11
Wu J, Oka J, Ishimi Y. et al.
Possible role of equol status in the effects of isoflavone in bone and fat mass in postmenopausal Japanese women: randomized placebo-controlled trial
Menopause , 14  (2007)

公開日・更新日

公開日
2015-05-26
更新日
-