臍帯血移植患者へのドナーリンパ球輸注療法(DLI)の実用化

文献情報

文献番号
200614042A
報告書区分
総括
研究課題名
臍帯血移植患者へのドナーリンパ球輸注療法(DLI)の実用化
課題番号
H16-創薬-048
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
藤原 成悦(国立成育医療センター)
研究分担者(所属機関)
  • 清水則夫(東京医科歯科大学)
  • 森尾友宏(東京医科歯科大学)
  • 清河信敬(国立成育医療センター)
  • 熊谷昌明(国立成育医療センター)
  • 麦島秀雄(日本大学医学部)
  • 加藤剛二(名古屋第一赤十字病院)
  • 伊藤仁也(先端医療センター)
  • 寺嶋一夫(東京医科歯科大学)
  • 関根暉彬(株式会社リンフォテック)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 政策創薬総合研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
23,540,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
臍帯血移植患者に対して、活性化臍帯血T細胞を用いたドナーリンパ球輸注療法(臍帯血DLI)を実用化するために前臨床研究および臨床パイロット研究を行い、その結果に基づき臨床試験プロトコールを作成することを目的とした。
研究方法
1.臍帯血DLIの前臨床試験:NOD/SCIDマウスおよびNOGマウスを用いて作製したEBV感染症モデルに対して臍帯血DLIおよびドナー活性化DLIを実施した。
2.活性化臍帯血T細胞の遺伝子発現解析:Gene Chip法により網羅的に解析した。
3.臍帯血DLI安全管理法の整備:リアルタイムPCR法を応用し、半定量的な多種ウイルス同時検出法を開発した。
4.臍帯血中Tリンパ球前駆細胞定量法の確立:ヒトdelta-like 1遺伝子を強制発現させたマウス細胞TSt-4との共培養によりT前駆細胞より未熟T細胞を分化させた。
5.臍帯血DLIの臨床パイロット研究:IL-2および抗CD3抗体を用いる確立された培養法によりCD4細胞を調製し投与した。
結果と考察
1.前臨床試験:マウスのEBV感染症モデルにおいて、臍帯血DLIとドナー活性化DLIの安全性と有効性が示唆された。また、作用メカニズムとしてEBV特異的細胞傷害性T細胞の関与が示唆された。
2.活性化臍帯血T細胞の遺伝子発現解析:サイトカインなどの遺伝子発現において臍帯血由来細胞は末梢血由来細胞と若干異なる点があった。
3.安全管理法の整備:半定量的な多種ウイルス同時検出法を開発した。パルボウイルスB19を用いてウイルススパイク試験を実施した。
4.臍帯血中Tリンパ球前駆細胞定量法の確立:10検体の臍帯血について検討したところ、単核細胞中のT前駆細胞の頻度は1/861から1/4803までの幅があり、平均は1/2803であった
5.臨床パイロット研究:本年度は9症例において依頼により活性化CD4細胞を調製した。
6.臨床試験プロトコールの原案作成:臍帯血DLI臨床試験プロトコール案を作成した。今後、研究の進展に合わせ改訂作業を行う。
結論
臍帯血DLI実用化のための前臨床的研究として、臍帯血DLIおよびドナー活性化DLIのマウスモデルを作製・解析した結果、これらの治療法が安全で有効であることが示唆された。また、臍帯血DLIの安全管理法開発と臨床パイロット研究を継続して行った。

公開日・更新日

公開日
2007-04-02
更新日
-

文献情報

文献番号
200614042B
報告書区分
総合
研究課題名
臍帯血移植患者へのドナーリンパ球輸注療法(DLI)の実用化
課題番号
H16-創薬-048
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
藤原 成悦(国立成育医療センター)
研究分担者(所属機関)
  • 清水則夫(東京医科歯科大学)
  • 森尾友宏(東京医科歯科大学)
  • 清河信敬(国立成育医療センター)
  • 熊谷昌明(国立成育医療センター)
  • 麦島秀雄(日本大学医学部)
  • 加藤剛二(名古屋第一赤十字病院)
  • 伊藤仁也(先端医療センター)
  • 寺嶋一夫(東京医科歯科大学)
  • 関根暉彬(株式会社リンフォテック)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 政策創薬総合研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
臍帯血移植患者に対して、活性化臍帯血T細胞を用いたドナーリンパ球輸注療法(臍帯血DLI)を実用化するために基礎研究、前臨床研究および臨床パイロット研究を行い、臨床試験実施に向けて理論的基盤を整備することを目的とした。
研究方法
1.臍帯血T細胞活性化培養法:ヒト血清とIL-2を加えたRPMI-1640培地と、抗CD3抗体を固相化したフラスコを用いて培養した。
2.活性化臍帯血T細胞の性状解析:①フローサイトメトリーによる細胞表面マーカーおよびT細胞抗原受容体(TCR)レパトワの解析、②ELISA法によるサイトカイン産生の検討、③Gene Chip法による網羅的遺伝子発現解析。
3.臍帯血DLIの前臨床試験:NOD/SCIDマウスおよびNOGマウスを用いて作製したEBV感染症モデルに対して臍帯血DLIおよびドナー活性化DLIを実施した。
4.臍帯血DLIの臨床パイロット研究:臍帯血移植後、生着不全や感染症をきたした3症例に対して、臍帯血DLIを行った。
結果と考察
1.培養法の検討:少量の臍帯血より、CD4陽性T細胞を10E9個程度まで活性化・増幅することが可能となった。
2.活性化臍帯血リンパ球の性状解析:培養後のT細胞はT細胞のフェノタイプを有し、IFN-γ、IL-8、TNF-α、IL-2、IL-10、RANTES、TGF-βを産生していた。成人ドナー由来と臍帯血由来を比較すると、サイトカイン遺伝子発現などに若干の相違が認められた。Vβ遺伝子発現の解析では、TCRレパトワの偏りは認められなかった。
3.前臨床試験:マウスのEBV感染症モデルにおいて、臍帯血DLIとドナー活性化DLIの安全性と有効性が示唆された。また、作用メカニズムとしてEBV特異的細胞傷害性T細胞の関与が示唆された。
4.臨床パイロット研究:臍帯血移植後に生着不全や感染症となった3症例において、臍帯血DLIの有効性と安全性が示唆された。
5.臨床試験プロトコールの原案作成:臍帯血DLIの臨床試験プロトコール案を作成した。今後、研究の進展に合わせ改訂作業を行う。
結論
臍帯血DLI実用化のための基礎研究、前臨床的研究、臨床パイロット研究を行い、その有効性と安全性を示唆する結果を得た。これにもとづき臨床試験プロトコール案を策定した。今後、研究の進展にあわせてこれを改訂し、臨床試験を実施したい。

公開日・更新日

公開日
2007-04-02
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2010-09-08
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200614042C

成果

専門的・学術的観点からの成果
①DLIに必要とされる10億個程度の活性化CD4陽性T細胞を、少量の臍帯血から2~3週間の培養により調製するためのプロトコールを確立した。②活性化臍帯血リンパ球の性状を、細胞表面マーカー、サイトカイン産生、TCRレパトワ発現、遺伝子発現の全体像の観点から詳細に解析し、その特性を明らかにした。③ヒト化マウスを用いてEBV感染症モデルを作成した。これに対する臍帯血DLIの治療実験により、その安全性と有効性が示唆された。また、作用メカニズムとしてウイルス特異的細胞傷害性T細胞の関与が示唆された。
臨床的観点からの成果
①臍帯血移植後に生着不全や感染症となった3症例において臍帯血DLIの臨床パイロット研究を行った。3例のうち2例において、生着促進とリンパ球機能改善の作用が認められた。パイロット研究のレベルではあるが、臍帯血移植後の生着不全と感染症に対するあらたな治療オプションが追加されたことに意義がある。②臍帯血DLIの臨床試験プロトコールの原案を作成した。これにより臨床試験を実施するためのプロセスが開始された。
ガイドライン等の開発
当研究の性格上、ガイドライン等の制定は目標として含まれなかった。
その他行政的観点からの成果
臍帯血移植には骨髄移植と比べて多くの利点があるため、厚生労働行政のレベルでその普及を図ることは、国民の医療・福祉の向上につながると考えられる。その一方で、臍帯血移植には、移植後の再発、生着不全、感染症などに対してDLI治療が不可能であるという短所があるが、その短所を解消するという目標の達成に近づきつつある本研究の成果は、行政レベルにおける臍帯血移植の普及促進に根拠を与えるものと考えられる。
その他のインパクト
平成18年度政策創薬総合研究推進事業による研究成果発表会、「造血幹細胞移植と感染症対策」
—臍帯血移植・エイズ・活性化T細胞輸注療法をめぐって—を、平成19年2月3日、ベルサール西新宿において開催した。6名の発表者からは、本研究の成果が分かりやすく提示され、75名の参加者が活発な議論に加わった。これにより、本研究の成果の普及・啓発が促進された。

発表件数

原著論文(和文)
3件
原著論文(英文等)
45件
その他論文(和文)
15件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
77件
学会発表(国際学会等)
2件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
1件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Watanabe, S., Terashima,K., Ohta, S., et al.
Hematopoietic stem cell–engrafted NOD/SCID/IL2R_null mice develop human lymphoid systems and induce long-lasting HIV-1 infection with specific humoral immune responses.
Blood , 109 (1) , 212-218  (2007)
原著論文2
Imadome, K., Shimizu, K., Arai, A. et al.
Coexpression of CD40 and CD40 ligand in Epstein-Barr virus-infected T and NK cells and their role in cell survival
J. Infect. Dis. , 192 , 1340-1348  (2005)

公開日・更新日

公開日
2015-05-26
更新日
-