文献情報
文献番号
200614040A
報告書区分
総括
研究課題名
抗フリーラジカル療法を目指した基盤研究と創薬への応用
課題番号
H16-創薬-046
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
綱脇 祥子(国立成育医療センター)
研究分担者(所属機関)
- 塩田 清二(昭和大学 医学部)
- 松永 政司(日生バイオ株式会社 遺伝子栄養研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 政策創薬総合研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
8,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
食細胞以外にも活性酸素生成酵素(Nox酵素群)が続々と発見され、今後、フリーラジカルに起因する病態の解明と抗フリーラジカル療法の確立は益々重要になるであろう。本年度は、1)冠動脈血管内皮細胞の活性酸素生成系に対するTNF-alphaの影響、2)神経ペプチド(PACAP)の脳虚血性神経細胞死抑制作用、頭部損傷に対する抗フリーラジカル剤エダラボンの治療効果、3)フリーラジカルの関与する関節リウマチに対する核タンパク摂取の有用性を検討した。
研究方法
1)冠動脈血管内皮細胞の活性酸素(H2O2)生成活性に対するTNF-alphaの影響はスコポレチン法で解析した。Nox酵素各構成因子の発現は、mRNAおよび蛋白質レベルで解析した。2)PACAP-KOマウスの血中酸化ストレス度は、活性酸素代謝物(ROM)として求めた。脳内のO2-検出は、エチジウム法を用いた。エダラボンはラット頭部損傷モデルの大腿動脈より投与した。3)リウマチ様関節炎を自然発症するHTLV-I Tgマウスに、無核タンパク(NF群)、核タンパク(NP群)餌を摂取させた後、体重、関節に於ける肥厚、組織学的変化、IgG沈着、蛋白質の酸化、更に、血中ROMを解析した。
結果と考察
1)川崎病は全身性の急性血管炎であり、冠動脈瘤発症の鍵を担うTNF-alphaがヒト冠動脈血管内皮細胞からの自発的H2O2生成活性を増強することが分かった。その責任因子として、Nox4、Nox2、p67の関与が考えられた。この亢進した血管内皮細胞のH2O2生成が、他の血管壁構築細胞にも酸化ストレスを与えて障害を起こし、ひいては動脈瘤を発症させると考えられる。2)PACAPは生体内で内因性抗酸化物質の調節因子としての作用を持ち、エダラボンは体内のフリーラジカル量を減少させて頭部外傷を軽減することが示された。3)核タンパクを摂取させたNP群は、ヒト関節リウマチの主徴である体重減少、関節に於ける肥厚、組織学的変化、IgG沈着、蛋白質の酸化、更に、血中ROM、何れもNF群より抑制されていた。
結論
1)川崎病発症期に血中濃度が上昇するTNF-alphaがヒト冠動脈内皮細胞の自発的な活性酸素生成能を増強した。2)神経ペプチド(PACAP)が脳海馬領域の酸化ストレスを抑制し、エダラボンが頭部外傷を軽減させた。3)核タンパクの餌負荷が、リウマチ様関節炎に対して改善効果を持つ事が明らかになった。
公開日・更新日
公開日
2007-04-03
更新日
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