臨床薬理学的視点による薬効ゲノム情報活用のための基盤研究

文献情報

文献番号
200614039A
報告書区分
総括
研究課題名
臨床薬理学的視点による薬効ゲノム情報活用のための基盤研究
課題番号
H16-創薬-045
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
東 純一(大阪大学)
研究分担者(所属機関)
  • 横田 総一郎(国立病院機構刀根山病院)
  • 坂谷 光則(国立病院機構近畿中央胸部疾患センター)
  • 高嶋 哲也(大阪府立呼吸器・アレルギー医療センター)
  • 奥田 恭久(結核予防会大阪府支部大阪病院)
  • 渡邉 裕司(浜松医科大学)
  • 景山 茂(東京慈恵会医科大学・総合医科学研究センター)
  • 伊藤 継孝(薬効ゲノム情報株式会社)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 政策創薬総合研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
16,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
ファーマコゲノミクス(PGx)情報に基づいたエビデンスを創出するために、その指針となる成果を提供すること、および、それら臨床研究を支える基盤を整備することを目的とした。
研究方法
臨床的な表現型として肝障害を取り上げ、結核治療薬イソニアジドと高尿酸治療薬ベンズブロマロンを対象医薬品とし、最適なPharmacogenomics(PGx)臨床試験にむけた諸問題を検討した。遺伝子解析に関わる文書同意が得られた被験者に対し候補分子の遺伝的多型を解析し、臨床試験時の肝機能の変化等との関連を解析した。
結果と考察
それぞれの薬剤毎にエビデンスの創出に向けた方法論を検討した。ベンズブロマロンはPGx探索試験として臨床薬理試験を行い、CYP2C9とURAT1の遺伝子多型について、その体内動態に対する影響を明らかにした。一方、イソニアジドについては、NAT2遺伝情報を用いる結核治療法の有用性を評価するため、肺結核患者を対象に多施設ランダム化比較試験を引き続き実施した。独自構築したPGx臨床試験管理システムを運用して円滑に試験運営できた。
PGx探索試験の結果より、ベンズブロマロンによる肝障害が代謝物ではなく親化合物に起因する可能性が示唆された。CYP2C9*3保有者はベンズブロマロンの血漿中濃度の上昇による副作用発現リスクの増加が懸念された。一方、イソニアジド/NAT2のPGx臨床試験では、構築した実施体制や整備した基盤は、円滑な試験運営と今後の試験遂行に有用であることが判明した。ヨーロッパとの2極で共同企画したグローバル臨床試験や薬剤経済学的検討により、提唱する治療法の有用性を国際的に検証しうる手応えを得た。
結論
本研究では、モデル研究としてPGxの探索試験から検証試験までの一連の臨床研究方法を鳥瞰し、今後のPGx試験の指針となる方法論を確立し、実施基盤の構築を行った。向後、PGx情報を取り入れる臨床開発試験においても、迅速な対応、運用が可能な基盤となるモデルシステムが構築できた。

公開日・更新日

公開日
2007-04-16
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2010-09-08
更新日
-

文献情報

文献番号
200614039B
報告書区分
総合
研究課題名
臨床薬理学的視点による薬効ゲノム情報活用のための基盤研究
課題番号
H16-創薬-045
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
東 純一(大阪大学)
研究分担者(所属機関)
  • 横田 総一郎(国立病院機構刀根山病院)
  • 坂谷 光則(国立病院機構近畿中央胸部疾患センター)
  • 高嶋 哲也(大阪府立呼吸器・アレルギー医療センター)
  • 奥田 恭久(結核予防会大阪府支部大阪病院)
  • 渡邉 裕司(浜松医科大学)
  • 景山 茂(東京慈恵会医科大学・総合医科学研究センター)
  • 伊藤 継孝(薬効ゲノム情報株式会社)
  • 大橋 京一(浜松医科大学(現 大分大学))
  • 岩田 宙造(薬効ゲノム情報株式会社)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 政策創薬総合研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は、ファーマコゲノミクス(PGx)情報に基づいたエビデンスを創出するために、その指針となる成果を提供すること、および、それら臨床研究を支える基盤を整備することである。
研究方法
臨床的な表現型として肝障害を取り上げ、その対象医薬品は、結核治療薬イソニアジド、高尿酸治療薬ベンズブロマロン、肺性高血圧治療薬ボセンタン、および鎮痛解熱薬アセトアミノフェンの4種とした。疫学調査の結果に基づき、最適なPharmacogenomics(PGx)臨床試験にむけた諸問題を検討した。遺伝子解析に関わる文書同意が得られた被験者に対し候補分子の遺伝的多型を解析し、臨床試験時の肝機能の変化等との関連を解析した。
結果と考察
4種の対象薬についてエビデンスの創出に向けた方法論を検討し、アセトアミノフェンとボセンタンは疫学的なPGx臨床研究に移行した。一方、PGx臨床試験のモデル研究として、ベンズブロマロン/探索的PGx臨床試験とイソニアジド/検証的PGx臨床試験を計画し、実施した。ベンズブロマロンでは、CYP2C9とURAT1の遺伝子多型について、その体内動態に対する影響を明らかにした。イソニアジドでは、実施基盤システムを構築し、これを運用してNAT2多型に基づいた結核治療法の多施設ランダム化比較試験を実施した。
ベンズブロマロン自体に肝障害を誘発する可能性が示唆され、CYP2C9*3保有者はベンズブロマロンの血漿中濃度の上昇による副作用発現リスクの増加が懸念された。一方、PGxランダム化試験管理システムは、円滑な試験運営に有用であることが判明した。今後、国内と平行してヨーロッパとの2極共同グローバル試験を推進し、薬剤経済効果も含め、総合的にゲノム与薬法を評価する。
結論
本研究では、モデル研究としてPGxの探索試験から検証試験までの一連の臨床研究方法を鳥瞰し、今後のPGx試験の指針となる方法論を確立し、実施基盤の構築を行った。向後、PGx情報を取り入れる臨床開発試験においても、迅速な対応、運用が可能な基盤となるモデルシステムが構築できた。

公開日・更新日

公開日
2007-04-17
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2010-09-08
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200614039C

成果

専門的・学術的観点からの成果
ファーマコゲノミクス(PGx)情報に基づく臨床的エビデンスを創出するため、PGx臨床試験の方法論を確立し、この試験を支える実施基盤や体制を構築・整備した。遺伝子多型に基づく薬物治療法の有効性と安全性とを検証的に検討し、それを評価するPGx臨床試験は、国内外にかかわらず殆んど例をみない。研究成果は国内外の学会からも注目され、日欧の国際共同PGx臨床試験への展開をみた。
臨床的観点からの成果
PGx情報を活用し、薬剤性肝障害を事前に回避するためのPGxバイオマーカ探索のための臨床試験を実施した。対象とした医薬品ベンズブロマロンの血漿中濃度は、CYP2C9*3保有者では高値となり、副作用発現リスクの予測が可能となる。イソニアジドでは、NAT2遺伝子型に基づく結核治療法の多施設ランダム化比較試験の実施計画書を日欧共同で策定し、着手した。遺伝子多型頻度には人種差が知られているが、これを考慮した科学的根拠を創出するための基盤が国際的に形成された。
ガイドライン等の開発
PGx臨床試験の方法論を確立し、これを具体的に構築した実施基盤システムは、向後、PGx情報を取り入れる臨床開発試験における基盤となる情報を提供するものである。
その他行政的観点からの成果
臨床研究の基盤が脆弱とされる我が国において、遺伝子多型情報を利用する前向き検証的PGx臨床試験を開始し、円滑に運営する基盤を構築した。整備したPGx臨床試験を支えるシステムは、他の臨床研究にも拡張可能である。これは臨床研究基盤の強化という行政方針を支えるもので、今後、急増すると考えられるPGx臨床試験の実施への情報提供としての貢献度は高い。
その他のインパクト
一般国民への啓発活動として、『市民公開講座「先生,このクスリはだいじょうぶでしょうか?」(H18年度厚生労働科学研究費補助金 政策創薬総合研究推進事業 研究成果等普及啓事業)H.18.12.1 於 京王プラザホテル(東京)』を開催し、350人もの参加があった。今回構築したPGx臨床試験実施システムは、将来的には公開する予定である。さらに、今回の臨床試験に際し開発した遺伝子判定機器は、臨床現場での利用を考慮に入れたもので、迅速、正確かつ廉価な遺伝子判定を可能とするもので、社会的インパクトも大きい。

発表件数

原著論文(和文)
3件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
13件
学会発表(国際学会等)
3件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
1件
市民公開講座「先生、このクスリは大丈夫でしょうか?―ヒトとクスリの相性について―」

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Kubota R, et al.
Tentative treatments for tuberculosis based on N- acetyltransferase gene polymorphism.
Jpn J Therapeutic Drug Monitoring , 22 (4) , 336-340  (2005)

公開日・更新日

公開日
2015-05-26
更新日
-