細胞医療に用いられる細胞組織利用医薬品の品質・安全性評価技術の開発

文献情報

文献番号
200614035A
報告書区分
総括
研究課題名
細胞医療に用いられる細胞組織利用医薬品の品質・安全性評価技術の開発
課題番号
H16-創薬-040
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
山口 照英(国立医薬品食品衛生研究所 生物薬品部)
研究分担者(所属機関)
  • 森田 育男(東京医科歯科大学大学院 医歯学総合研究科 分子細胞機能学分野)
  • 服部 秀志(大日本印刷株式会社 研究開発センター 先端技術研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 政策創薬総合研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
5,180,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
幹細胞学や発生学の急速な進歩やバイオテクノロジー応用技術の発展により、ヒトまたは動物の細胞や組織を培養、加工し、様々な疾患の治療に用いる細胞組織利用医薬品の開発が急速に進んでいる。本研究では、細胞組織利用医薬品の品質や安全性の確保、また有効性等を適切に評価できる試験法の開発を行うとともに、より安全性が高く高品質の製品の実用化に向けた基盤技術の開発も行うことを目的としている。
研究方法
1)血管内皮前駆細胞(EPC)のThrombopoietin(TPO)受容体の発現とTPOに対する応答性についての検討。
2)光触媒を用いたパターン化技術を応用したin vitroヒト毛細管作成技術の確立とそのin vivoでの機能評価。
3) 生体に直接使用できる基盤を用いた毛細血管作成法の検討。
結果と考察
1) 血管内皮前駆細胞(EPC)の有用性確保に関する研究として、TPOがEPCの誘導促進効果を示すこと、EPCの特性指標であるIL-8がOut-growth Endothelial Cellの走化性を促進することを明らかにした。EPCがTPO受容体を持ち、TPO依存性の増殖能をもつことはEPCの特性指標としての新たな知見であるとともに、また、EPCの細胞治療薬としての有用性確保の観点から貴重な情報となる。
2) 血管内皮細胞やOEC等の細胞治療薬の生物活性や有用性評価法の一環として、マイクロパターニング技術を応用した毛細血管形成とそのin vivoでの有用性について詳細な検討を行った。作製した基盤を利用してin vitroで血管内皮細胞をパターン化することにより毛細血管を形成させ、下肢虚血モデルマウスに移植することにより、血流のみならず運動機能の速やかな回復が認められた。また、EPCやOECを用いて機能的な毛細管の形成を解析したところ、EPCでは毛細管への統合が認められず、OECとは機能的に異なることが明らかになった。これらの結果は開発した新規毛細管作製法が、血管としての機能的な評価に有用なツールとなることを示すものである。
結論
AC133陽性細胞から分化した非常に初期にEPCはTPO受容体を発現し、TPO依存性の増殖能を持つことを明らかにした。下肢虚血モデルマウスを用いた検討によりマイクロパターニング技術を応用したin vitroで毛細管形成法が、EPCやOECの機能評価に非常に有用であることを示した。

公開日・更新日

公開日
2007-04-03
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2010-09-08
更新日
-

文献情報

文献番号
200614035B
報告書区分
総合
研究課題名
細胞医療に用いられる細胞組織利用医薬品の品質・安全性評価技術の開発
課題番号
H16-創薬-040
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
山口 照英(国立医薬品食品衛生研究所 生物薬品部)
研究分担者(所属機関)
  • 森田 育男(東京医科歯科大学 医歯学総合研究科 分子細胞機能学分野)
  • 服部 秀志(大日本印刷株式会社  研究開発センター 先端技術研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 政策創薬総合研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
幹細胞学や発生学の急速な進歩やバイオテクノロジー応用技術の発展により、ヒトまたは動物の細胞や組織を培養、加工し、様々な疾患の治療に用いる細胞組織利用医薬品の開発が急速に進んでいる。本研究では、細胞組織利用医薬品の品質や安全性の確保、また有効性等を適切に評価できる試験法の開発を行うとともに、より安全性が高く高品質の製品の実用化に向けた基盤技術の開発も行うことを目的としている。
研究方法
1)血管内皮前駆細胞(EPC)の誘導系の確立とその特性解析。
2)EPC産生サイトカインの解析。
3)光触媒を用いたパターン化技術を応用したin vitroヒト毛細管作成技術の確立、及びEPCやout-growth EPC(OEC)の機能評価への適用。
4)生体に直接使用できる基盤を用いた毛細血管作成法を確立するために種々の基材の検討。
結果と考察
AC133陽性細胞から誘導されたEPCは、誘導初期にThrombopoietin(TPO)受容体の発現が認められ、またTPO依存的増殖能があることを明らかにした。また、EPCの特性指標としてCD31強陽性、高IL-8産生能、コネキシン37強陽性、Lox-1 弱陽性、VE-Cadherin陰性を同定した。より効率的なOEC誘導系を明らかにすると共に、誘導したOECはIL-8への遊走促進作用を持つことが明らかにした。EPCのTPO依存的増殖能や高いIL-8産生能は本研究で得られた新たな知見であり、EPCの重要な特性指標となること考えられ、またその有用性確保においても重要な意味を持つものと考えられる。
細胞のマイクロパターニングが可能な微細加工基盤作製技術を確立し、in vitroで自在にパターン化された毛細血管網を形成する方法を確立した。in vitroで作成した血管は、免疫不全マウスの下肢血管狭窄モデルを用いたin vivoでの解析より、血流や運動能の回復から生体内で血管として十分に機能するものであった。また、この方法は採取した細胞の血管新生能の評価系としても応用可能であった。
結論
EPCの増幅法ならびに特性指標に関する新たな知見を得た。また、微細加工基盤作製技術を確立してin vitroで細胞のマイクロパターニングを可能にし、in vitroで形成された毛細血管の細胞治療薬としての有用性を明らかにすると共に、本法が細胞の機能評価系として応用できる可能性を示した。

公開日・更新日

公開日
2007-04-03
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2010-09-08
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200614035C

成果

専門的・学術的観点からの成果
細胞治療薬の品質・安全性評価法開発の一環として、血管内皮前駆細胞(EPC)やout-growth EPC(OEC)の解析を行い、EPCがTPO依存的増殖能を持つことや高いIL-8産生能を持つことを見いだした。これらの知見は、EPCの重要な特性指標となること考えられる。また、微細加工基盤作製技術を利用したin vitroで形成されたマイクロパターニング化された毛細血管網作成技術を確立し、有用性を明らかにすると共に、本法がEPCやOECの機能評価系として応用できることを示した。
臨床的観点からの成果
TPO依存的なEPCの増殖性は、効率的にEPCをin vitroで増幅できる可能性があり、臨床的にも有用な知見である。また、EPCが内皮細胞の誘導作用のあるIL-8を極めて大量に産生することは、EPCの臨床応用に際してその有用性や逆に望ましくない血管新生の両面から重要な意味を持つ。マイクロパターニング技術を利用したin vitro毛細血管網作製技術により、in vivoでも十分な機能を持つ血管系を形成出来ることが明らかになり、その臨床応用においても重要な意味を持つ。
ガイドライン等の開発
得られた個々の具体的成果が直接ガイドライン等の開発に利用されたことはない。しかし、細胞治療薬としての特性指標の確立法や安全性評価に関する手法などは、各種審議会審議や確認申請の専門協議等の科学的評価において有用な情報となっている。
その他行政的観点からの成果
得られた個々の具体的成果を取り上げたのではないが、「有効で安全な医薬品を迅速に提供するための検討会」(平成19年3月2日)において再生医療・細胞治療薬の開発に当たってのどのように特性解析を行うべきか、あるいは有効性指標の確立の重要性について専門家としての意見を述べたが、これらの考え方は本研究の基本的な目的となっているものである。
その他のインパクト
平成18年の日本薬学会において本研究の主任者がオーガナイザーとして再生医療のシンポジウムを開催したが、この開催に当たっては、細胞治療薬の特性解析や有用性の評価手法をどのように開発してくるべきかを一つの柱とした。

発表件数

原著論文(和文)
15件
原著論文(英文等)
21件
その他論文(和文)
3件
その他論文(英文等)
1件
学会発表(国内学会)
21件
学会発表(国際学会等)
20件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計6件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
1件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Kanayasu-Toyoda T, Fujino T, Yamaguchi T, et al.
HX531, a retinoid X receptor antagonist, inhibited the 9-cis retinoic acid-induced binding with steroid receptor coactivator-1 as detected by surface plasmon resonance.
J. Steroid Biochem Mol , 94 (4) , 303-309  (2005)
原著論文2
Ishii-Watabe,A., Kobayashi,T., Yamaguchi,T., et al.
Influences of the recombinant artificial cell adhesive proteins on the behavior of human umbilical vein endothelial cells in serum-free culture.
Biologicals  (2007)
原著論文3
Uchida,E. Kogi,M. Yamaguch,T. et al.
Optimization of the virus concentration method using polyethyleneimine-conjugated magnetic beads and its application to the detection of human hepatitis A, B and C viruses.
Journal of Virological Methods  (2007)
原著論文4
Kanayasu-Toyoda,T, Suzuki,T., Yamaguchi T., et al.
Granulocyte Colony-Stimulating Factor Promotes The Translocation of Protein Kinase Ci in Neutrophilic Differentiation Cells
Journal of Cellular Physiology , 211 , 189-196  (2007)
原著論文5
内田恵理子、石井明子、山口照英
遺伝子治療薬及び細胞治療薬のウイルス安全性確保
日本臨床ウイルス学会誌  (2007)
原著論文6
Xu JW, Morita I, Ikeda K, et al.
C-reactive protein suppresses insulin signaling in endothelial cells. ---Role of Syk tyrosine kinase Mol Endocrinol.
Mol Endocrinol  (2007)
原著論文7
Kojima T, Nakahama K, Morita I. et al.
Age- and cell cycle-dependent changes in EPC-1/PEDF promoter activity in human diploid fibroblast-like (HDF) cells. Mol.
Cell. Biochem. , 293 (1) , 63-69  (2006)
原著論文8
Nakamura M, Kobayashi A, Morita I, et al.
Biocompatible inkjet printing technique for designed seeding of individual living cells.
Tissue Engineering , 11 (11) , 1658-1666  (2005)

公開日・更新日

公開日
2015-05-26
更新日
-