患者個別化薬物治療のための遺伝子タイピング法及びメタボロミクス的手法の開発に関する研究

文献情報

文献番号
200614034A
報告書区分
総括
研究課題名
患者個別化薬物治療のための遺伝子タイピング法及びメタボロミクス的手法の開発に関する研究
課題番号
H16-創薬-039
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
斎藤 嘉朗(国立医薬品食品衛生研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 宝田 裕(東洋紡績(株))
  • 森 篤雄(第一化学薬品(株))
  • 丹羽 卓朗(三菱ウェルファーマ(株))
  • 岩崎 一秀(ファイザー(株))
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 政策創薬総合研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
6,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 医薬品の有効性及び副作用発現に影響を及ぼす薬物代謝酵素等の遺伝子多型を機能解析により同定し、これらのタイピング系を開発する。また、環境要因により変化する代謝活性をバイオマーカーの変化から予測する方法を開発する。これらにより患者毎の薬物代謝酵素等の活性予測法確立に資する。
研究方法
 CYP3A4の1多型及びCYP2D6の2多型につき、それぞれ昆虫細胞及び酵母細胞系で酵素を大量発現し、複数の基質につきインビトロ活性測定を行った。3遺伝子の計14多型につきパイロシーケンシング法により、また3遺伝子の計12多型につきNAP(Nuclease Activated Probe)-ligation法とDNAチップ検出を組み合わせた方法により、タイピング系を開発した。環境要因により発現が変化するCYP3Aの活性指標を探索するため、ラットを用い、誘導剤PCN及びデキサメサゾン(DEX)投与による肝臓中のCYP3A1発現レベルの変化を測定すると共に、尿中の生体内代謝物のメタボノミクス解析を行った。
結果と考察
 CYP3A4*16多型は5種の基質に対し、いずれも活性低下をもたらしたが、Km値及びVmax値の変化には基質間で差が認められ基質特異性が明らかとなった。CYP2D6*10及び*36は共に蛋白発現レベルの低下をもたらしたが、活性低下は*36で顕著であった。
 NFE2L2等で推定された頻度3-5%以上のハプロタイプを同定するためのタグ多型計14種につき、パイロシーケンシング法によるタイピング系を開発した。CYP2C9, CYP2C19, 及びCYP2D6の、機能変化を伴う計12種の遺伝子多型につき、NAP-ligation法とDNAチップ検出を組み合わせたタイピング法を開発した。
 バイオマーカー探索では、対照群に比べPCN及びDEX投与を行ったラット群で、CYP3A1 mRNAレベルが20-30倍増加し誘導が確認された。またPCN、DEX投与及び対照群の尿のクロマトグラムにつき主成分分析を行い、これら3群を明確に分離することができた。薬剤投与群と対照群の間で有意差が見られる化合物のピークを発見した。
結論
 CYP3A4*16及びCYP2D6*10, *36につき、基質特異性を含め、多型の機能影響を詳細に明らかにした。6遺伝子の重要多型につきタイピング系を開発した。CYP3A1を誘導する薬剤群投与を識別しうる化合物のピークを発見した。

公開日・更新日

公開日
2007-04-06
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2010-09-08
更新日
-

文献情報

文献番号
200614034B
報告書区分
総合
研究課題名
患者個別化薬物治療のための遺伝子タイピング法及びメタボロミクス的手法の開発に関する研究
課題番号
H16-創薬-039
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
斎藤 嘉朗(国立医薬品食品衛生研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 宝田 裕(東洋紡績(株))
  • 森 篤雄(第一化学薬品(株))
  • 丹羽 卓朗(三菱ウェルファーマ(株))
  • 岩崎 一秀(ファイザー(株))
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 政策創薬総合研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 医薬品の有効性及び副作用発現に影響を及ぼす薬物代謝酵素等の遺伝子多型を機能解析により同定し、これらのタイピング系を開発する。また、環境要因により変化する代謝活性をバイオマーカーの変化から予測する方法を開発する。これらにより患者毎の薬物代謝酵素等の活性予測法確立に資する。
研究方法
 薬物代謝で重要な4遺伝子の7多型につき、野生型及び異型蛋白質を哺乳動物細胞や昆虫細胞等の発現系で調製し、インビトロ活性測定を行った。これらの多型を含め、薬物代謝・動態に関わる分子の中でも重要な16遺伝子の計74多型につき、7種の方法でタイピング系の開発・評価を行った。また環境要因により変動が大きいCYP3Aの活性指標と成り得る尿中バイオマーカーを同定するため、ラットを用いて、2種のCYP3A誘導剤投与による肝臓中CYP3A1 mRNAレベルの上昇と相関するピークをメタボノミクス解析により探索した。
結果と考察
 CYP3A4*16多型では、検討した5基質の全てで代謝活性の低下が見られたものの、Km値及びVmax値の変化には基質間で大きな差が認められた。CYP2D6*36多型ではヘム蛋白質当たりの酵素活性の低下が見られたが、CYP2D6*10多型では認められなかった。CYP1A2*8、*15、*16多型では、いずれもヘム蛋白質レベルの低下に基づく、大幅な酵素活性の低下が見られた。GRのK140N多型でも活性変化が明らかとなった。
 パイロシーケンシング法、インベーダー法、NAP-ligationとDNAチップ検出を組み合わせた方法等、多型の性質や対象多型数等に応じた方法を選択してタイピング法を開発し、正確に判定しうることを確認した。
 バイオマーカー探索では、対照群に比べPCN及びデキサメサゾン投与を行ったラット群で、CYP3A1 mRNAレベルが20-30倍上昇し誘導が確認された。またこれら3群の尿のクロマトグラムにつき主成分分析を行い、それぞれを明確に分離することができた。薬剤投与群と対照群の間で有意な差が見られる化合物のピークを発見した。
結論
 薬物代謝で重要な4遺伝子の7多型につき、基質特異性を含め、多型による機能変化を詳細に明らかにした。これらの多型を含め、16遺伝子の74多型につきタイピング系を7種の方法で開発・評価した。肝臓中のCYP3A1レベルと相関する化合物のピークをラット尿のメタボノミクス解析により見いだした。

公開日・更新日

公開日
2007-04-06
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2010-09-08
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200614034C

成果

専門的・学術的観点からの成果
 多くの遺伝子多型が同定されているものの、その蛋白質機能への影響まで明らかにされているものは少なく、重要な薬物代謝酵素等において詳細に解析した本研究の成果は貴重である。特に日本人で比較的頻度の高いCYP3A4*16多型の、代謝活性への影響の程度が、基質により異なることを明らかにしたことは、今後の臨床への応用の点からも意義深い。また、ラット肝のCYP3A1レベルと相関する生体内代謝物を、メタボロミクス解析で見いだしたことは初めてであり、当該化合物のヒトでの相関が期待される。
臨床的観点からの成果
 機能解析により、多型に基づく活性低下を明らかにした薬物代謝酵素CYP3A4、CYP2D6、CYP1A2は、総計で、臨床に用いられている医薬品の約6割の代謝に関与しており、これらの多型を有するヒトに当該医薬品を投与する際には、過度の薬物血中濃度上昇等の可能性が考えられるため慎重に投与すべきと判断され、本研究成果の臨床的意義は大きいと考えられる。また開発した有用多型のタイピング系は、臨床現場での利用も期待される。
ガイドライン等の開発
 本研究の成果である日本人で考慮すべき遺伝子多型の機能解析結果やその基質特異性、並びに多型タイピング法の評価等は、医薬品申請にあたっての薬理遺伝学的情報に関する今後のガイドライン作製に有用な基盤的情報を含むものである。
その他行政的観点からの成果
 特になし
その他のインパクト
 CYP1A2の3多型に関するインビトロ機能解析論文は、掲載雑誌(Drug Metabolism and Disposition誌)の表紙を飾るなど、高い評価を受けた。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
5件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
5件
学会発表(国際学会等)
2件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計1件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Y. Saito, N. Hanioka, K. Maekawa, et al.
Functional analysis of three CYP1A2 variants found in a Japanese population.
Drug Metab. Dispos. , 33 , 1905-1910  (2005)
原著論文2
S. Koyano, Y. Saito, S. Ozawa, et al.
Functional characterization of a K140N human glucocorticoid receptor variant.
Int. J. Pharmacol. , 1 , 316-323  (2005)
原著論文3
A. Soyama, Y. Saito, T. Kubo, et al.
Sequence-based analysis of the CYP2D6*36- CYP2D6*10 tandem-type arrangement, a major CYP2D6*10 haplotype in the Japanese population.
Drug Metab. Pharmacokinet. , 21 , 208-216  (2006)
原著論文4
M. Saeki, Y. Saito, H. Jinno, et al.
Haplotype structures of the UGT1A gene complex in a Japanese population.
Pharmacogenomics J. , 6 , 63-75  (2006)
原著論文5
N. Hanioka, Y. Okumura, Y. Saito, et al.
Catalytic roles of CYP2D6.10 and CYP2D6.36 enzymes in mexiletine metabolism: In vitro functional analysis of recombinant proteins expressed in Saccharomyces cerevisiae.
Biochem. Pharmacol. , 71 , 1386-1395  (2006)

公開日・更新日

公開日
2015-05-26
更新日
-