地域における保健医療福祉の連携を支援するための保健情報ネットワークの構築とその効率的運用に関する研究

文献情報

文献番号
199700142A
報告書区分
総括
研究課題名
地域における保健医療福祉の連携を支援するための保健情報ネットワークの構築とその効率的運用に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成9(1997)年度
研究代表者(所属機関)
鈴木 重任(東京都立衛生研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 中村清純(東京都村山大和保健所)
  • 上木隆人(東京都立衛生研究所)
  • 佐々木美枝子(東京都立衛生研究所)
  • 神沼二眞(国立医薬品食品衛生研究所)
研究区分
厚生科学研究費補助金 行政政策研究分野 厚生科学特別研究事業
研究開始年度
平成9(1997)年度
研究終了予定年度
平成11(1999)年度
研究費
6,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
保健医療福祉の連携を視野に入れ、地域における保健情報ネットワークの概念設計と形態の検討、地域内情報交換システムの検討及び全国レベルでの情報交換システムの検討などを目的として本研究を実施した。
研究方法
1 地域保健情報ネットワークの概念設計と形態
めざましい発展をとげているインターネットを利用した地域保健情報ネットワークの概念設計と構築について、機能及び経費の側面から検討し、現在において最良のネットワーク形態を提案する。
2 地域内情報交換システム
1で検討したネットワークを利用して構築できる地域内情報交換システムについて提案する。
3 全国レベルでの情報交換システム
全国レベルでの情報交換システムとして、全国の公衆衛生関係者を対象にインターネット研究会を開催する。
4 行政の健康危機管理に対応した研究情報基盤の構築について
行政が広域かつ緊急に対応しなければならないような大規模な健康被害や事件や問題が相次いで起きている。こうした状況に対処するため、厚生省においても健康危機管理体制の整備が進められている。このような行政の動きに対応した国および地方自治体の試験研究機関の情報基盤について考察する。
結果と考察
1 地域保健情報ネットワークの概念設計と形態
東京都立衛生研究所は、地域保健推進特別事業費(厚生省)を活用し、インターネットに接続している。そこで、衛生研究所を利用し、東京都衛生局各課及び保健所等をインターネットに接続することを検討した。
衛生研究所にはダイアルアップルータなど外部機関をインターネットに接続するための機器が導入されており、保健所等にはパソコンが導入されているため、保健所等をインターネットに接続するためには単にモデム(1~2万円/台)を導入すればよいことが分かった。
モデムを購入しインターネットに接続するために必要な設定を行うことにより、電話代だけで衛生局各課や保健所が自由にインターネットを利用できる環境を構築することができるということが明かとなった。
衛生研究所を地域情報ネットワークの拠点として整備していくことにより、地方衛生研究所の機能強化を図りつつ、関係諸機関も非常に簡単にネットワーク化することが可能である。
2 地域内情報交換
現在、東京都衛生局各課・保健所・衛生研究所間の情報交換は主として会議・電話・FAXで行われている。これらの手段は有効ではあるが、1で考察した情報ネットワークを利用することにより、情報交換が一層効果的になることが期待される。そこで、インターネットを利用してできる情報交換について検討した。
一番簡単にできるのがメーリングリストの活用であり、非常に有効なのがWWWサーバによる情報提供であることが明かとなった。
3 全国レベルでの情報交換システム
メーリングリストやWWWサーバを用いた情報交換は重要である。しかし、それと同時にFace to Faceでの情報交換もまた重要である。公衆衛生関係者を対象に、平成9年12月4日、科学技術振興事業団東京本部サイエンスプラザ地下1階ホールで「地域保健のためのインターネット研究会」を開催した。全国から約90名の参加を得て、インターネット関連の情報交換を行うことができた。
4 行政の健康危機管理に対応した研究情報基盤の構築について
健康危機管理を支援する情報システムはインターネット(と関連技術)を基盤としなければ構築できない。実際インターネット以外にも、電話とFAXや、パソコン通信や、汎用機のホストにパソコンを(しばしば専用線で)端末として繋いだ閉鎖型のセンター方式があるが、これらのシステムはインターネットを基盤としたシステムの機能を補うものではあっても、それを代替できるものではない。
したがって、健康危機管理の情報基盤はインターネットを基盤として再構築されなければならない。これは、緊急の課題である。
国立衛研の場合WISHのユーザーはゼロに近い。感染研も公衆衛生院も、そう事情は違わない。大学等の研究機関に関しては言わずもがなである。したがって、地方衛研が、これらの国研や大学との情報共有、情報交換を行うときには、まずインターネットの利用環境を整える必要がある。
「地方衛生研究所の機能強化について」(厚生事務次官通達、平成9年3月14日厚生省発健政第26号)において「地方衛生研究所は、公衆衛生に関する国、都道府県・指定都市、地方衛生研究所、保健所、市町村のネットワークの地方拠点として」機能することが求められている。
衛生研究所がこの機能を果たすには、設備の充実はもちろんのこと、人的資源の充実や資質の向上も同時に図る必要がある。
衛生研究所の情報設備充実の第一歩として、研究所をまず最初にインターネットに接続することが必要である。そして、それを介し保健所等をインターネットに接続し地域保健情報ネットワークを構築するのが最良であると考えられる。もちろん、保健所等に関しては、経費の面から、一般のプロバイダを経由してインターネットに接続する方が有利な場合も存在する。このようなときは、一般のプロバイダを活用することも必要である。
衛生研究所には、地域保健情報の交換をするためにWWWサーバーとメールサーバーの設置が必要である。
サーバー等の運営を担当する職員の資質の向上には、全国レベルでの情報交換会、例えばインターネット研究会のような研究会組織も必要と考える。
結論
ネットワークの構築には、まずその目的を明確にすることが重要である。新しい地域保健体制において第一に求められているのは保健所の地域医療計画策定などの企画調整機能であり、その基本は地域保健の評価である。地域における健康状態や保健政策の評価に関する調査研究による保健所等の地域支援が地方衛生研究所の新しい役割である。そのためのネットワークとデータベースを考えて行く必要がある。
また近年大きな問題となっている健康危機管理についても、それを支援する情報基盤の実体はインターネットとWWWの技術を基礎とするコンピュータネットワークとシステムであり、国立研究機関や大学、地方衛生研究所や海外の研究機関、国際機関とのネットワークで構成される。
ネットワーク構築の第一歩として、衛生研究所にWWWサーバーとメールサーバーを設置し、インターネットに接続することが必要である。保健所等に関しては、まず最初に衛生研究所にダイアルアップできる環境を整えることが必要である。その後の充実については、技術の進歩をふまえ、一歩一歩着実に進めていく必要があろう。

公開日・更新日

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