生薬及び漢方処方の科学的品質保証に関する研究

文献情報

文献番号
200614029A
報告書区分
総括
研究課題名
生薬及び漢方処方の科学的品質保証に関する研究
課題番号
H16-創薬-034
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
合田 幸広(国立医薬品食品衛生研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 近藤 健児((株)ツムラ中央研究所)
  • 荒川 史博(三栄源エフ・エフ・アイ(株))
  • 山本 豊((株)栃本天海堂)
  • 藤田 正雄((株)ウチダ和漢薬)
  • 水上 元(名古屋市立大学大学院)
  • 小松 かつ子(富山大学和漢医薬学総合研究所)
  • 山本 藤輔((株)ツムラ生産本部静岡工場)
  • 近藤 誠三(小太郎漢方製薬(株))
  • 山本 恵一(カネボウ製薬(株))
  • 田村 真(ジェー・ピー・エス製薬(株)栃木工場)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 政策創薬総合研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
10,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
生薬は、まず基原植物をもって適否の判定がなされる。また、医療の現場では、生薬のほとんどは漢方処方の形態で使用される。本研究では、レギュラトリーサイエンスの観点から、生薬及び漢方処方について、ジェノタイピング技術と化学的な分析法による科学的な品質保証法の確立を目的とする。
研究方法
種の明確な標準植物試料は、各大学機関及びメーカーの標本を使用した。生薬は、おもに中国市場でその生薬名で取り扱われているものについて、分担研究者の所属する複数の会社を通し、なるべく多くの産地から入手を試みた。また別に、日本薬局方調査会生薬等委員会等より、国内で流通する試料を入手した。これらの生薬は、それぞれ、日本薬局方に従い別に生薬の適、不適を判定した。漢方処方は、日本漢方・生薬製剤協会を通じ、各処方ごとに、可能な限り多数の医療用漢方エキスを入手した。
結果と考察
生薬の科学的品質保証に関する研究として、刺五加、ガジュツ、車前草・車前子、延命草に関し、標準植物試料並びに市場品に関し、核rDNAや葉緑体trnK遺伝子領域の塩基配列解析を行うとともに、HPLC/PDA/MS等を用い詳細な成分分析を行った。朮類生薬では、昨年度結果を元に、共同試験によりバリデーションを行った結果、良好な結果が得られ、日本薬局方(15局第一追補)の参考情報に収載予定となった。さらに、より頑健性のある分析法として、PCR-RFLP 分析について検討を行った。また、漢方処方の科学的品質保証として、漢方処方中のブシアルカロイド並びにギンセノシドRg1の定量分析法について、大枠を決めることが出来た。また、キジツ配合処方中のnaringin、neohesperidinは、diastereomer混合体で存在していることを示した。今後、本研究で検討された試験法について、局方収載を目指し、引き続き検討する予定である。
結論
生薬の科学的品質保証に関する研究として、刺五加、ガジュツ、車前草・車前子、延命草、朮類生薬に関しジェノタイピング技術を利用した基原鑑定法を、漢方処方の科学的品質保証に関する研究として、処方の定量分析法の検討を行った。本研究の成果は日本薬局方等に反映される予定である。

公開日・更新日

公開日
2007-04-12
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2010-09-08
更新日
-

文献情報

文献番号
200614029B
報告書区分
総合
研究課題名
生薬及び漢方処方の科学的品質保証に関する研究
課題番号
H16-創薬-034
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
合田 幸広(国立医薬品食品衛生研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 近藤 健児((株)ツムラ中央研究所)
  • 荒川 史博(三栄源エフ・エフ・アイ(株))
  • 山本 豊((株)栃本天海堂)
  • 藤田 正雄((株)ウチダ和漢薬)
  • 水上 元(名古屋市立大学大学院)
  • 小松 かつ子(富山大学和漢医薬学総合研究所)
  • 山本 藤輔((株)ツムラ)
  • 近藤 誠三(小太郎漢方製薬(株))
  • 山本 恵一(カネボウ製薬(株))
  • 田村 真(ジェー・ピー・エス製薬栃木工場)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 政策創薬総合研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
生薬は、まず基原植物をもって適否の判定がなされる。また、医療の現場では、生薬の殆どは漢方処方の形態で使用される。本研究は、レギュラトリーサイエンスの観点から、生薬及び漢方処方について、ジェノタイピング技術と化学的分析法による科学的な品質保証法の確立を目的とする。
研究方法
種の明確な標準植物試料は、各大学機関及びメーカーの標本を使用した。生薬は、おもに中国市場でその生薬名で取り扱われているものについて、分担研究者の所属する複数の会社を通し、なるべく多くの産地から入手を試みた。また別に、日本薬局方調査会生薬等委員会等より、国内で流通する試料を入手した。これらの生薬は、それぞれ、局方に従い別に生薬の適、不適を判定した。漢方処方は、日本漢方・生薬製剤協会を通じ、各処方ごとに、可能な限り多数の医療用漢方エキスを入手した。本研究で適当と判断された試験法は、最終的に、分担研究者間でバリデーションを行った。
結果と考察
生薬の科学的品質保証に関する研究として、刺五加、莪朮、人参類生薬、車前草、車前子、延命草、半夏、天南星、細辛に関し核rDNAや葉緑体trnK遺伝子領域の塩基配列解析を行い、遺伝子情報に基づく基原鑑定法を検討した。また、殆どの生薬についてHPLC/PDA/MS等を用い含有成分の検討を行い、基原と成分について詳細な検討を行った。このうち特に朮類生薬に関する検討結果は、局方の参考情報「遺伝子情報を利用する生薬の純度試験」に反映される。また、本研究の結果得られた生薬の遺伝子情報により、局方において、より適切な生薬の基原の設定と、基原に対応した確認試験法、定量試験法等の設定が可能になった。さらに、漢方処方の科学的品質保証に関する研究として、局方収載予定の漢方処方エキス(小青竜湯、補中益気湯、牛車腎気丸、桂枝茯苓丸、八味地黄丸、真武湯等)について、漢方処方の各種定量試験、純度試験、処方中生薬の確認試験等を検討した。多くの結果は、局方の原案、試案等として提示された。また、処方の指標成分と考えられる陳皮、キジツ等由来のフラバノン配糖体が、処方中では、ジアステレオマー混合物で存在することを示した。
結論
生薬の科学的品質保証に関する研究として、ジェノタイピング技術を利用した基原鑑定法を確立するとともに、流通生薬の基原を遺伝子情報から明らかにした。また、漢方処方エキス規格化のための各種試験法の確立を行った。

公開日・更新日

公開日
2007-04-12
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2010-09-08
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200614029C

成果

専門的・学術的観点からの成果
朮類生薬,刺五加,莪朮,車前子,人参類生薬,延命草等に関し遺伝子情報に基づく基原鑑定法を検討し,朮類生薬,刺五加について試験法を確立した.莪朮では,基原と精油成分組成から規格化が可能である事を示した.人参類は6群に分類された.中国産の延命草は,局外生規の規定とは異なる基原であることを示した.また,漢方処方エキスの各種定量試験,構成生薬確認試験等を検討し,第15改正日本薬局方,同第一追補の試験法等を確立した.また,フラバノン配糖体が処方中では2位のジアステレオマーで存在していることを示した.
臨床的観点からの成果
漢方処方エキスの規格化によって,処方エキスの品質確保に貢献する.
ガイドライン等の開発
朮類生薬に関する検討結果は,第15改正日本薬局方第一追補に参考情報として収載される「遺伝子情報を利用する生薬の純度試験」に反映される.また,日本薬局方に収載予定の漢方処方エキスの定量分析法,確認試験法,純度試験法等について検討を行い,これまでに,補中益気湯,ブシ配合処方,ニンジン配合処方,桂枝茯苓丸の定量試験法,小青竜湯,牛車腎気丸等の確認試験法,ブシ配合処方の純度試験法等をほぼ確立した.
その他行政的観点からの成果
15局新規収載である刺五加の基原植物の決定と確認試験法の確立には,本研究の成果が利用された.また,莪朮の基原の再考には,本研究の成果が利用される予定である.また,中国産の延命草は,局外生規が定める基原植物とは異なる同属植物であることを示し,局外生規不適であることを示した.
その他のインパクト
本研究の結果等をもとに,日本薬学会第127年会シンポジウム「日本薬局方で使用される生薬基原植物の学名の示す範囲とは」が開催され,形態学的な基原による学名と不確定性,遺伝子情報による基原,種内変異と雑種等について議論が行われた.また,FFIジャーナルで「天然物の基原と品質」の特集号(212巻5号, 2007)が組まれた.

発表件数

原著論文(和文)
1件
原著論文(英文等)
7件
その他論文(和文)
3件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
16件
学会発表(国際学会等)
1件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
4件
第15改正日本薬局方各条(刺五加, 補中益気湯エキス,桂枝茯苓丸エキス) 並びに参考情報「遺伝子情報を利用する生薬の純度試験」
その他成果(普及・啓発活動)
7件
薬学会のシンポジウム,地方衛生研究所の特別講演,公定書協会,業界団体等での講演

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
山本恵一 他
日本薬局方「ニンジン」及び「コウジン」の定量法の検討 ーHPLCによるGinsenoside 類の定量ー
医薬品研究 , 36 (5) , 211-222  (2005)
原著論文2
Yomura, K. et al.
Assay of total alkaloids in Uncaria Thorn by HPLC
Iyakuhin Kenkyu , 35 (3) , 143-165  (2004)
原著論文3
Uchiyama, N. et al.
HPLC separation of hesperidin and the C-2 epimer in commercial hesperidin samples and herbal medicines
Chirality , 17 , 373-377  (2005)
原著論文4
Shiba, M. et al.
Identification of Medicinal Atractylodes Based on ITS Sequences of nrDNA
Biol. Pharm. Bull. , 29 (2) , 315-320  (2006)
原著論文5
Naki, Y. et al.
Chemical characterization of the rhizomes of Atractylodes lancea and A. chinensis identified by ITS sequences of nrDNA
J. Jpn. Bot. , 81 (2) , 63-74  (2006)
原著論文6
Guo, Y. et al.
DNA authentication of So-jutsu (Atractylodes lancea rhizome) and Byaku-jutsu (Atractylodes rhizome) obtained in the market based on the nucleotide sequence of the 18S-5.8S rDNA internal transcribed spacer region
J. Nat. Med. , 60 (2) , 149-156  (2006)
原著論文7
Uchiyama, N. et al.
HPLC separation of naringin, neohesperidin and their C-2 epimers in commercial samples and herbal medicines
Journal of Pharmaceutical and Biomedical Analysis , 44  (2007)
原著論文8
Maruyama T. et al.
Authentication of the commercial Eleutherococcus senticosus Rhizome by DNA and chemical analyses
Planta Med.  (2007)

公開日・更新日

公開日
2015-05-26
更新日
2018-07-02