超難溶性薬物の効率的製剤化に非晶質の特異性を活用する技術とその評価法の確立

文献情報

文献番号
200614028A
報告書区分
総括
研究課題名
超難溶性薬物の効率的製剤化に非晶質の特異性を活用する技術とその評価法の確立
課題番号
H16-創薬-033
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
吉岡 澄江(国立医薬品食品衛生研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 阿曽幸男(国立医薬品食品衛生研究所)
  • 宮崎玉樹(国立医薬品食品衛生研究所)
  • 村主教行(塩野義製薬株式会社CMC開発研究所)
  • 林 隆志(塩野義製薬株式会社CMC開発研究所)
  • 佐久間 聡(塩野義製薬株式会社CMC開発研究所)
  • 一尾俊司(塩野義製薬株式会社CMC開発研究所)
  • 高倉朝子(塩野義製薬株式会社CMC開発研究所)
  • 北村 智(アステラス製薬株式会社製剤研究所)
  • 田中和幸(アステラス製薬株式会社製剤研究所)
  • 平倉 穣(アステラス製薬株式会社製剤研究所)
  • 水野真康(アステラス製薬株式会社製剤研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 政策創薬総合研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
4,800,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
難溶性薬物を物理的安定性および消化管吸収性の優れた非晶質製剤に調製する普遍的な方法の確立を目的とし、非晶質製剤のダイナミックスや微視的な物理的状態を解析し、非晶質の安定性や溶出特性との関係を解明する。
研究方法
(1) 類似の構造を有するジヒドロピリジン系Ca拮抗剤(ニフェジピン、ニルバジピンおよびニトレンジピン)について、誘電緩和時間から測定したlocalな分子運動性および熱力学的な結晶化の駆動力を比較し、結晶化速度に及ぼす運動性と熱力学的因子の相対的な重要性を考察した。(2)難溶性薬物とHPMCやPVPとの固体分散体における薬物分子の存在状態及をX線結晶構造解析やFT-IRを用いて確認し、物理的安定性との関係を考察した。(3)低分子の添加剤を加えたニフェジピンとPVPからなる固体分散体の経時的な溶出特性・物性変化を調べ、非晶質製剤の非晶質状態の安定性を予測する評価法の確立を目指した。
結果と考察
(1)非晶質の結晶化速度はニフェジピン>ニトレンジピン>ニルバジピンの順であること、また、誘電緩和時間として測定したα緩和時間は薬物間に差がないのに対してβ緩和時間には有意な差があることなどが分かり、非晶質の結晶化速度がβ緩和を引き起こすlocalな運動性と強く関連することが明らかになった。(2) 非晶質医薬品の結晶化速度は、非晶質全体の運動性に加え、比較的弱い水素結合にも依存することが明らかになった。また、非晶質の表面の方が試料内部よりも再結晶化しやすく、固体分散体の調製時の条件の違いも再結晶化のしやすさに大きな影響を及ぼすことが判明した。 (3) Ureaやニコチン酸アミドを添加したニフェジピン-PVPの固体分散体は保存後も非晶質であり、溶出特性は経時的に安定であることが分かった。特にニコチン酸アミドの添加では結晶化の前段階での状態変化もみられず、最も安定な非晶質であることが分かった。
結論
物理的に安定な固体分散体はβ緩和を引き起こすlocalな運動性や薬物間の相互作用を制御することによって調製できることが明らかになった。さらに、難溶性薬物と高分子からなる固体分散体に低分子の添加剤を加えることで、非晶質状態の安定性に優れた製剤処方を見出すことができた。

公開日・更新日

公開日
2007-04-26
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2010-09-08
更新日
-

文献情報

文献番号
200614028B
報告書区分
総合
研究課題名
超難溶性薬物の効率的製剤化に非晶質の特異性を活用する技術とその評価法の確立
課題番号
H16-創薬-033
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
吉岡 澄江(国立医薬品食品衛生研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 阿曽幸男(国立医薬品食品衛生研究所)
  • 宮崎玉樹(国立医薬品食品衛生研究所)
  • 村主教行(塩野義製薬株式会社CMC開発研究所)
  • 林 隆志(塩野義製薬株式会社CMC開発研究所)
  • 佐久間 聡(塩野義製薬株式会社CMC開発研究所)
  • 一尾俊司(塩野義製薬株式会社CMC開発研究所)
  • 高倉朝子(塩野義製薬株式会社CMC開発研究所)
  • 北村 智(アステラス製薬株式会社製剤研究所)
  • 田中和幸(アステラス製薬株式会社製剤研究所)
  • 平倉 穣(アステラス製薬株式会社製剤研究所)
  • 水野真康(アステラス製薬株式会社製剤研究所)
  • 出口収平(アステラス製薬株式会社製剤研究所)
  • 大塚圭一(アステラス製薬株式会社製剤研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 政策創薬総合研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
難溶性薬物を物理的安定性および消化管吸収性の優れた非晶質製剤に調製する普遍的な方法の確立を目的とし、非晶質製剤のダイナミックスや微視的な物理的状態を解析し、非晶質の安定性や溶出特性との関係を解明する。
研究方法
(1) 溶融急冷法で調製したジヒドロピリジン誘導体の非晶質体およびニフェジピン/PVP(HPMC)固体分散体の分子運動性を誘電緩和およびNMRによって測定するとともに、結晶化速度を比熱変化をもとに算出し、分子運動性と非晶質の安定性を評価した。 (2) 難溶性薬物(FK888、FK783)/PVP(HPMC)固体分散体について、DSC、FT-IR、微量熱量測定、粉末X線回折測定、X線結晶構造解析、NIR測定などによって分子運動性や薬物分子の存在状態を解析した。(3)ニフェジピンとPVPのみ、あるいはさらに尿素、若しくはニコチン酸アミドを用いて溶媒留去法で調製した固体分散体について、溶出試験を回転ディスク法で行い、溶出特性を改善するための処方の最適化を行うとともに、固体分散体を40℃で保存したときの状態変化を、粉末X線回折、IRスペクトル、DSC、水の接触角などの測定によって検討した。
結果と考察
非晶質製剤中の薬物の保存による結晶化は、製剤のα緩和およびスケールの小さいlocalな分子運動を抑制する作用を持つ添加剤を用いることによって効率的に抑制できることが、ニフェジピン等の薬物およびPVP等の添加剤の系において明らかになった。また、非晶質状態の保持に必要な薬物-薬物分子間相互作用を阻害しない添加剤を用いることによって、保存による結晶化を抑制し、非晶質製剤の物理的安定性を改善できることが明らかになった。一方、非晶質製剤からの薬物の溶解性は、溶出速度の高い添加剤を配合して製剤全体の溶出速度を高め、さらに薬物可溶化能が高い添加剤を配合して拡散層における薬物の析出速度を遅くすることによって、効果的に改善できることが明らかになった。
結論
物理的に安定な固体分散体はlocalな運動性や薬物分子の存在状態を制御することによって調製できることが明らかになった。さらに、難溶性薬物と高分子からなる固体分散体に低分子の添加剤を加えることで、溶出安定性のみならず非晶質状態の安定性にも優れた製剤処方を見出すことができた。

公開日・更新日

公開日
2007-04-03
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2010-09-08
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200614028C

成果

専門的・学術的観点からの成果
製剤のα緩和およびα緩和よりスケールの小さいローカルな分子運動性を抑制する添加剤を用いることによって、難溶性医薬品の非晶質製剤を安定化できることを明らかにした。また、非晶質状態の保持に必要な薬物-薬物相互作用を阻害しない添加剤が保存による結晶化を抑制し、非晶質製剤の物理的安定性を改善できることを明らかにした。
臨床的観点からの成果
難溶性医薬品の消化管内での溶出を改善するためには水溶性高分子の含有率を高める必要があり、その結果製剤の大きさが大きくなるという問題点がある。難溶性医薬品とPVPの非晶質固体分散体にニコチン酸アミドやUreaなどの低分子添加剤を少量の添加することにより、低い高分子含有率においても溶出特性を改善できることを明らかにした。これは、患者が飲みやすい小さな錠剤の製造を可能にするものであり、本製剤は臨床においても十分活用できると期待される。
ガイドライン等の開発
保存実験によって製剤の保存安定性を実際に確認する現行の安定性試験ガイドラインにかわる省資源型の試験法として、α緩和時間やβ緩和時間などの分子運動性パラメータに基づく安定性試験法の可能性が明らかになった。スケールが異なる運動性が安定性に及ぼす相対的な寄与率を解析することなど、今後試験法の信頼性をさらに高める研究を継続する必要があると考えられる。
その他行政的観点からの成果
なし
その他のインパクト
平成18年12月8日に共立薬科大学マルチメディア講堂において、本研究の成果発表会を開催した。製薬企業、大学などから133名が参加し、発表に対して活発な質問がなされ、非晶質医薬品に対する参加者の関心の高さが感じられた。また、「非晶質に特化した講演会あまりなかったため本発表会は有意義であった。」「非晶質についての理解が深まった。」「引き続きこのような発表会が行われることを希望する」等の感想が寄せられた。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
17件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
12件
学会発表(国際学会等)
9件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計1件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
1件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
T. Miyazaki, S. Yoshioka, Y. Aso, T. Kawanishi
Crystallization rate of amorphous nifedipine analogues unrelated to the glass transition temperature
Int. J. Pharm. , 336 , 191-195  (2007)
原著論文2
Y. Aso, S. Yoshioka
Molecular Mobility of Nifedipine-PVP and Phenobarbital-PVP Solid Dispersions as Measured by 13C-NMR Spin-Lattice Relaxation Time
J. Pharm. Sci. , 95 , 318-325  (2006)

公開日・更新日

公開日
2015-05-26
更新日
-