文献情報
文献番号
200614027A
報告書区分
総括
研究課題名
末梢血幹細胞の分化増殖機構の解明と創薬への応用に関する研究
課題番号
H16-創薬-032
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
葛西 正孝(国立感染症研究所)
研究分担者(所属機関)
- 高子 徹(第一製薬 東京研究開発センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 政策創薬総合研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
3,100,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
本研究の目的は、リンパ球減少症(lymphocytopenia)や骨髄不全症(bone marrow failure)を呈する造血疾患モデルマウス(TSN-KO)を用いて、造血幹細胞の自己増殖と分化の振り分けに係わる因子の解明と医薬品開発の基盤技術を確立することである。
研究方法
遺伝子欠損マウスのコンジェニック化
Translin遺伝子欠損マウス(TSN-KO)をC57BL/6マウスに戻し交配を繰り返して、遺伝的背景が同じコンジェニックマウスに置き換えた。
定量的RT-PCR解析
末梢血や骨髄から全RNAを抽出後、reverse transcriptaseによってcDNAを合成した。定量的RT-PCR解析は、cDNAを鋳型としてLC Fast Start DNA master SYBR Green I kitを用いて行った。
Translin遺伝子欠損マウス(TSN-KO)をC57BL/6マウスに戻し交配を繰り返して、遺伝的背景が同じコンジェニックマウスに置き換えた。
定量的RT-PCR解析
末梢血や骨髄から全RNAを抽出後、reverse transcriptaseによってcDNAを合成した。定量的RT-PCR解析は、cDNAを鋳型としてLC Fast Start DNA master SYBR Green I kitを用いて行った。
結果と考察
TSN-KOマウスは、加齢と共に骨髄の造血能が低下し、生後1年を経過すると骨髄の幼若骨髄系細胞が激減した。 幼若骨髄細胞が消失したTSN-KOマウスの骨髄では、造血幹細胞(Lin- Sca1+ c-kit+)が著しく増加していた。 そこで、骨髄不全を引き起こしたTSN-KOマウスの大腿骨を病理学的に解析すると、本来、骨端に存在する海綿骨が大腿骨の全面に拡がっていた。 更に詳細に調べると、海綿骨の周辺には骨芽細胞が多く認められた。 骨芽細胞は、造血幹細胞形成に不可欠な微小環境(Niche)本体と考えられるので、TSN-KOマウスの骨髄で見られる造血幹細胞の増加と符合する事実といえる。
結論
本研究では、TSN-KOマウスがリンパ系細胞のみならず骨髄系細胞の分化成熟機構にも異常を示すことを明らかにした。 特に造血幹細胞の分化と自己複製のバランスが崩壊して自己複製の方へ傾倒したと解釈することができる。 このように、TSN-KOマウスを用いた本研究から、Translin遺伝子が幹細胞の自己複製やリンパ系及び骨髄系前駆細胞への振り分け機構に係わる制御因子として重要な役割を果たしていると結論することができる。 今後、Translin蛋白と骨芽細胞で代表されるNiche及び造血幹細胞の関連が明らかにされなければならない。
公開日・更新日
公開日
2007-04-12
更新日
-