免疫グロブリン大量静注療法の作用機序解明と新しい治療標的分子の探索

文献情報

文献番号
200614020A
報告書区分
総括
研究課題名
免疫グロブリン大量静注療法の作用機序解明と新しい治療標的分子の探索
課題番号
H16-創薬-022
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
阿部 淳(国立成育医療センター)
研究分担者(所属機関)
  • 安川 久美(千葉大学医学部)
  • 平尾 豊(株式会社ベネシス枚方研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 政策創薬総合研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
2,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究では、川崎病における免疫グロブリン大量静注(IVIG)療法の治療標的分子を同定して、その作用機序を明らかにするために、(1)IVIG療法前後での川崎病患者の末梢血中の免疫細胞の遺伝子発現プロファイルをDNAマイクロアレイで解析する、(2)発現変動した遺伝子を抽出し、蛋白レベルでの発現量の変化を確認する、(3)これらの蛋白の発現量変化とIVIG療法に対する反応性との関連について解析する、(4)川崎病でみられる血管透過性の著名な亢進に対する免疫グロブリンの作用について解析する、以上の4点を目的とした。
研究方法
川崎病急性期の患者から、IVIG療法の開始前と投与後間もない時期に静脈血を採取し、全血中の免疫細胞における遺伝子発現プロファイルをDNAマイクロアレイで解析した。同年齢の発熱対照患者の遺伝子発現プロファイルと比較して、川崎病急性期のマーカー遺伝子を抽出した。リアルタイムRT-PCRでマイクロアレイの結果を確認した。川崎病急性期の患者血清および剖検心筋組織における血管内皮増殖因子D(VEGF-D)の産生、冠動脈血管内皮細胞(HCAEC)の炎症性サイトカイン産生能を測定した。
結果と考察
(1)IVIG療法の反応群と不応群、および発熱対照群とで、治療前から発現量が異なる遺伝子群236個を見出した。(2)IVIG療法不応群では治療後もこれらのマーカー遺伝子群の発現抑制が弱かった。(3)IVIG療法後に患者血清中のVEGF-D濃度は上昇した。不応群では上昇幅が反応群と比べて少なかった。(4)IVIG療法前の患者血清によりHCAECの炎症性サイトカイン産生は亢進した。
結論
IVIG療法の反応群と不応群とでは治療後の遺伝子発現プロファイルが大きく異なる。このような遺伝子群の中から、IVIG療法の治療効果予測に有用な臨床マーカーを同定できる可能性がある。患者血清によって生じる血管内皮細胞の機能障害に関わる因子の一部を明らかにした。

公開日・更新日

公開日
2007-04-17
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2010-09-08
更新日
-

文献情報

文献番号
200614020B
報告書区分
総合
研究課題名
免疫グロブリン大量静注療法の作用機序解明と新しい治療標的分子の探索
課題番号
H16-創薬-022
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
阿部 淳(国立成育医療センター)
研究分担者(所属機関)
  • 安川 久美(千葉大学医学部附属病院)
  • 平尾 豊(株式会社ベネシス研究開発本部枚方研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 政策創薬総合研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究では、川崎病における免疫グロブリン大量静注(IVIG)療法の治療標的分子を同定して、その作用機序を明らかにするために、(1)IVIG療法前後での川崎病患者の末梢血中の免疫細胞の遺伝子発現プロファイルをDNAマイクロアレイで解析する、(2)対照発熱患者の遺伝子発現プロファイルも解析して、川崎病患者で特異的に、治療前後で発現が有意に変動した遺伝子を抽出し、蛋白発現量を確認する、(3)これらの蛋白の発現量変化と川崎病患者の臨床経過との関連を解析する、(4)川崎病でみられる血管透過性の亢進に対する免疫グロブリンの作用について解析する、以上の4点を目的とした。
研究方法
川崎病急性期の患者からIVIG療法の前後に静脈血を採取し、単核球、精製モノサイト、および全血球細胞における遺伝子発現プロファイルを解析した。リアルタイムRT-PCR、フローサイトメトリー、およびELISAでマイクロアレイの解析結果を確認した。川崎病患者血清による各種血管内皮細胞(HUVEC, HCAEC)の管腔形成、透過性、サイトカイン産生への影響を調べた。剖検心筋組織の免疫組織染色で血管内皮増殖因子D(VEGF-D)の産生を調べた。
結果と考察
(1)IVIG療法後に多彩な機能遺伝子群の発現が低下した。(2)モノサイトの活性化型IgG受容体およびS100カルシウム結合蛋白は治療効果を反映して蛋白量が変動した。(3)治療反応群と不応群とで、治療前から発現量が異なる遺伝子群を多数同定した。(4)治療不応群の患者血清による血管内皮機能障害の機序を明らかにした。
結論
IVIG療法は、末梢血中の免疫細胞の多彩な機能遺伝子発現を抑制することでその効果を発揮している。IVIG療法前の急性期に、特定の蛋白発現量をマーカーとして治療反応性を予測できることが示唆された。また、患者血清によって生じる血管内皮細胞の機能障害に関わる因子の一部を明らかにした。

公開日・更新日

公開日
2007-04-16
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2010-09-08
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200614020C

成果

専門的・学術的観点からの成果
免疫グロブリン大量静注療法(IVIG療法)の川崎病に対する炎症抑制効果と、末梢血白血球におけるgranulopoiesis関連遺伝子発現の抑制が相関することを明らかにした。川崎病急性期の病態にemergency granulopoiesisが関与すること、IVIG療法の作用機序の一つとして、G-CSFによる好中球の活性化の抑制が考えられた。
臨床的観点からの成果
IVIG療法に対する不応答と好中球の細胞表面抗原の発現量とが強く相関することを見出した。前向き研究により、IVIG療法開始前に抗原量をフローサイトメトリーで定量することにより、治療反応性を予測できる可能性を示した。
ガイドライン等の開発
なし
その他行政的観点からの成果
なし
その他のインパクト
なし

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
2件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
5件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2015-05-26
更新日
-