血管におけるレクチンを介する生体防御システムの解明と創薬への応用

文献情報

文献番号
200614018A
報告書区分
総括
研究課題名
血管におけるレクチンを介する生体防御システムの解明と創薬への応用
課題番号
H16-創薬-020
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
若宮 伸隆(旭川医科大学)
研究分担者(所属機関)
  • 駒野 淳(国立感染症研究所エイズ研究センター)
  • 岸 雄一郎(扶桑薬品工業株式会社研究開発センター)
  • 堤 明人(筑波大学臨床医学系)
  • 板部 洋之(昭和大学薬学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 政策創薬総合研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
13,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
血管は現代の高齢化社会において大きな問題となっている虚血性心疾患、脳血管障害、糖尿病などの生活習慣病において最も重要な臓器である。本研究の目的は、血管におけるコレクチンの生体防御に対する役割を解明し、創薬への基礎的知見を得ることである。
研究方法
MBL研究
①MBL高発現株の発現誘導と新培養システム構築 ②MBLによるSCIDマウスのHIV感染抑制実験とそのmonitoring ③HIVの in vitro MBL感染阻止実験 ④SLE患者と慢性歯周病患者のMBL遺伝子解析
CL-P1研究
①CL-P1発現調節解析 ②CL-P1分子機能ドメイン解析 ③内皮細胞貪食におけるCL-P1の役割解析 ④ヒト組織のCL-P1発現解析 ⑤個体レベルでのCL-P1発現意義の解析 ⑥マウスOxLDL測定系構築 ⑦動脈硬化形成とOxLDLとの関係の解
結果と考察
MBL研究では、若宮、本多、岸らでMBLの抗HIV作用をSCIDマウス系感染抑制実験が進められ、効果が再確認できた。しかしマウス血中でのMBL濃度が低下するために、エイズ中和抗体に比して抗ウイルス活性が発揮出来難いことが明らかになった。基盤研究では、MBL発現システムの改良により高力価のMBL産生系が樹立できた。
CL-P1研究では、細胞レベルでは、機能ドメイン欠損株やSiRNA実験により内皮細胞におけるエンドサイトーシスや貪食における役割を明らかにした。個体レベルでの研究では、ヒト組織での血管におけるCL-P1発現が広範囲の組織で確認された。硬骨魚類に属するゼブラフィッシュでは、遺伝子ノックダウン実験では形態形成不全を認め、スカベンジャー受容体やコレクチンが、生体の初期形態形成に関わることが明らかにし、このCL-P1により形質改善がおこることを明らかにした。一方、板部は、マウスOxLDL測定系を樹立し、肥満マウスで動脈硬化のモデルでOxLDLの高値がみられることを見出した。堤は、SLEや慢性歯周病患者におけるMBL遺伝子解析でMBL欠損と有病率との相関を明らかにした。
結論
総括としては、MBL、CL-P1ともに、動物やヒトでの個体レベルの研究が飛躍的に進展し、大きな研究成果が得られた最終年度であった。

公開日・更新日

公開日
2007-04-12
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2010-09-08
更新日
-

文献情報

文献番号
200614018B
報告書区分
総合
研究課題名
血管におけるレクチンを介する生体防御システムの解明と創薬への応用
課題番号
H16-創薬-020
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
若宮 伸隆(旭川医科大学)
研究分担者(所属機関)
  • 本多 三男(国立感染症研究所 エイス研究センター)
  • 駒野 淳(国立感染症研究所 エイス研究センター)
  • 岸 雄一郎(扶桑薬品工業株式会社 研究開発センター)
  • 堤 明人(筑波大学大学院 人間総合科学研究科)
  • 板部 洋之(昭和大学 薬学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 政策創薬総合研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
血管は現代の高齢化社会において大きな問題となっている虚血性心疾患、脳血管障害、糖尿病などの生活習慣病において最も重要な臓器である。本研究の目的は、血管におけるコレクチンの生体防御に対する役割を解明し、創薬への基礎的知見を得ることである。
研究方法
MBL研究
①MBL高発現株の発現誘導と新培養システム構築 ②MBLによるSCIDマウスのHIV感染抑制実験とそのmonitoring ③HIVの in vitro MBL感染阻止実験 ④SLE患者と慢性歯周病患者のMBL遺伝子解析
CL-P1研究
①CL-P1発現調節解析 ②CL-P1分子機能ドメイン解析 ③内皮細胞貪食とエンドサイトーシスにおけるCL-P1の役割解析 ④ヒト組織のCL-P1発現解析 ⑤個体レベルでのCL-P1発現意義の解析 ⑥マウスOxLDL測定系構築 ⑦動脈硬化形成とOxLDLとの関係の解析
結果と考察
MBL研究では、若宮、本多、岸らでMBLの抗HIV作用をSCIDマウス系感染抑制実験が進められ、効果が明らかになった。しかしマウス血中でのリコンビナントMBL濃度が低下するために、エイズ中和抗体に比して抗ウイルス活性が発揮出来難いことが明らかになった。基盤研究により、MBL発現システムの改良がうまく進み、高力価のMBL産生系が樹立できた。
CL-P1研究では、細胞レベルでは、機能ドメイン欠損株やSiRNA実験により内皮細胞におけるエンドサイトーシスや貪食における役割を明らかにした。個体レベルでの研究では、ヒト組織での血管におけるCL-P1発現が広範囲の組織で確認された。硬骨魚類に属するゼブラフィッシュでは、遺伝子ノックダウン実験では形態形成不全を認め、スカベンジャー受容体やコレクチンが、生体の初期形態形成に関わることが明らかにし、このCL-P1mRNA添加により形質改善がおこることを明らかにした。一方、板部は、マウスOxLDL測定系を樹立し、肥満マウスで動脈硬化のモデルでOxLDL高値がみられることを見出した。堤は、SLEや慢性歯周病患者におけるMBL遺伝子解析でMBL欠損と有病率との相関を明らかにし予後についてのリスク因子であることを見出した。
結論
総括としては、MBL、CL-P1ともに、動物やヒトでの個体レベルの研究が飛躍的に進展し、コレクチンの薬剤や治療薬としての可能性を引き出す、大きな研究成果が得られた。

公開日・更新日

公開日
2007-04-12
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2010-09-08
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200614018C

成果

専門的・学術的観点からの成果
血清コレクチン分子MBLが、SCIDマウス系感染実験において、ウイルス中和をおこすことを明らかにした。これは、マウスモノクローナル抗体以外での内因性因子としてのエイズ中和作用を示すもので、ヒトへの応用への新たな可能性を示した。
血管内皮に主に存在するCL-P1研究では、ヒト細胞株や組織での生化学的解析やゼブラフィッシュでの基盤研究により、血管におけるエンドサイトーシスばかりか、初期発生時には形態形成に関わることが明らかになり、生体で非常に重要な役割を担っていることが見出された。
臨床的観点からの成果
エイズの感染制御は、日本では先進国の中で遅れており、現在の緊要な課題である。WHOらの推奨する、マイクロビサイドを中心とする手法が現時点は世界中で模索されており、その中では抗体を主成分とするものが多いが、それ以外に新しい抗ウイルス薬剤や感染阻止薬剤が重要となっている。本研究で証明された抗エイズ作用を有する、血清コレクチンMBLは薬剤耐性エイズやエイズのクレイドを超えたものにも感染阻止効果を有する利点があり、新しい候補薬剤になると考えられる。
ガイドライン等の開発
特にありません。
その他行政的観点からの成果
特にありません。
その他のインパクト
特にありません。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
12件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
1件
学会発表(国内学会)
5件
学会発表(国際学会等)
9件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Keshi.H, Sakamoto,T.Kawai.T. et al
Identification and characterization of a novel human collectin CL-K1.
Microbiology and Immunology , 50 (12) , 1001-1013  (2006)
原著論文2
Kawai,T.Kase,T.Suzuki,Y. et al
Anti-influenza A virus activities of mannan-binding lectins and bovine conglutinin.
J. Vet. Med. Sci. , 69 (2) , 221-224  (2007)
原著論文3
Koide, T.Nishikawa,Y.Asada,S. et al.
Specific recogition of the collagen triple helix by chaperone HSP47.
J. biol. Chem. , 281 (16) , 11177-11185  (2006)
原著論文4
Kawamoto, R.Yamashita, A.Nishihara,K. et al.
Different inflammatory response and oxidative stress in neointimal hyperplasia after ballon angioplasty and stent implantation in cholesterol-fed rabbits.
Pathol. Res. Pract. , 202 , 447-456  (2006)
原著論文5
Sulkhanov,S.Higashi,Y.Shai,S-Y. et al.
Novel effect of oxidized low-density lipoprotein.
Circulation Res. , 99 , 191-200  (2006)
原著論文6
Matsumoto,H.Ishikawa,K.Itabe,H. et al.
Carbon monoxide and bilirubin from heme oxygenase-1 suppresses reactive oxygen species generation and plasminogen activator inhibitor-1 induction.
Mol. Cell. Biochem. , 291 , 21-28  (2006)
原著論文7
Fujimoto,Y.Onodera,J.Homma,KJ. et al.
LOng-chain fatty acids induce lipid droplet formation in a cultures human hepatocyte in a manner dependent of acyl-CoA synthetase.
Biol. Pharm. Bull. , 29 , 2174-2180  (2006)
原著論文8
Futahashi Y, Komano J, Urano E, et al.
Separate elements are required for ligand-dependent and –independent internalization of metastatic potentiator CXCR4.
Cancer Sci. , 98 (3) , 373-379  (2007)
原著論文9
Shimizu S, Urano E, Futahashi Y,et al.
Inhibiting lentiviral replication by HEXIM1, a cellular inhibitor of cdk9/cyclinT complex.
AIDS. , 21 (5) , 575-582  (2007)
原著論文10
Miyauchi K, Komano J, Myint L, et al.
Rapid propagation of low-fitness drug resistant mutants of human immunodeficiency virus type 1 by a streptococcal metabolite sparsomycin.
Antivir Chem Chemother. , 17 (4) , 167-174  (2006)
原著論文11
Miyauchi K, Curran R, Matthews E,et al.
Mutations of conserved glycine residues within the membrane-spanning domain of human immunodeficiency virus type 1 gp41 can inhibit membrane fusion and incorporation of Env onto virions.
Jpn J Infect Dis. , 59 (2) , 77-84  (2006)
原著論文12
Wakamatsu E, Matsumoto I, Yasukochi T, et al.
Overexpression of phosphorylated STAT-1alpha in the labial salivary glands ofpatients with Sjogren's syndrome.
Arthritis Rheum. , 54 (11) , 3476-3484  (2006)

公開日・更新日

公開日
2015-05-26
更新日
-