繊維芽細胞の放出するmacrophage活性化因子とJAG1蛋白の関連と臓器繊維化の機序解明

文献情報

文献番号
200614017A
報告書区分
総括
研究課題名
繊維芽細胞の放出するmacrophage活性化因子とJAG1蛋白の関連と臓器繊維化の機序解明
課題番号
H16-創薬-019
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
香坂 隆夫(東京西徳洲会病院 東京西小児難病センター)
研究分担者(所属機関)
  • 多々納 俊雄(株式会社 ユーエムエー )
  • 鈴木 輝明(国立成育医療センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 政策創薬総合研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
5,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
JAG1遺伝子はアラジール症候群(AGS)の責任遺伝子であることを確認していく過程で、その異常は胆道閉鎖や小児期の肝炎においても見出された。この遺伝子の働きが発生期間だけでなく、個体誕生以降も重要であるとの仮定の下にその役割を明らかにすることを目的とした。
研究方法
臨床的研究として乳児、新生児期発症の肝疾患患者についてJAG1 遺伝子検索、SAPの測定、末梢血HCMV特異性T細胞の検索をおこなった。各種細胞への遺伝子導入はすでに発表した方法によった。THP-1細胞の増殖および分化、IL-8の産生促進、細胞膜上のCD14の発現などは、MTT法、ELISA法、Fax analysisで検討した。
結果と考察
AGSの2大症状が肺動脈狭窄と肝内胆管形成不全であることから、小児期発症の心疾患と肝疾患の単独の疾患について、JAG1遺伝子異常を調べた結果、肺動脈狭窄単独の32例では異常は認められず、胆道閉鎖症をはじめとする炎症性の肝疾患に異常が認められることを確認した。胆道閉鎖や新生時期発症の劇症肝炎では10%に見出した。これらの事実から、生後のJAG1の働きを解明する目的で、種々の検討を行った。その結果、JAG1は、①HGFの発現調節、②炎症の抑制、③繊維細胞の産生するmacrophage活性化因子の作用抑制の三つの作用機序を見出した。①の機序はAGSの発症にも関連していると考えられ、肝の再生といった面で重要と考えられる。②はJAG1がNF-κBを介する系の炎症調節因子として働いていることを明らかにし、この機序は肝の炎症機序を説明するものとして重要と考えられた。③は今回もっとも力を入れた分野であるが、繊維細胞の産生するmacrophage活性化因子として DNAチップによる解析を参考にIL-8活性化能を指標として調べた。その結果、serum amyloid P(SAP)が macrophage活性化作用を有することをCD14細胞の発現をTHP-1細胞やヒト単核球を用いて確認した。さらに、SAPの簡易的な測定方法を開発し、臨床的な意義について検討した結果、胆道閉鎖症のなどの肝の縮小すなわち繊維化の程度とSAPの血中濃度は良い相関を示した。また、cytomgarovirus virus (HCMV)感染を伴う胆道閉鎖症例ではより高値を示すことより、これらの相互関連について検討した。
結論
JAG1はNF-κBを介する系の炎症調節因子、繊維細胞の産生するmacrophage活性化因子の抑制として働いており、肝の炎症と繊維化の機序に関与し、SAPは後者の因子として臨床的意義があると考えられた。

公開日・更新日

公開日
2007-04-16
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2010-09-08
更新日
-

文献情報

文献番号
200614017B
報告書区分
総合
研究課題名
繊維芽細胞の放出するmacrophage活性化因子とJAG1蛋白の関連と臓器繊維化の機序解明
課題番号
H16-創薬-019
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
香坂 隆夫(東京西徳洲会病院 東京西小児難病センター)
研究分担者(所属機関)
  • 鈴木 輝明(国立成育医療センター 腎臓科)
  • 多々納 俊雄(株式会社 ユーエムエー  開発部長)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 政策創薬総合研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
個体誕生以降のJAG1の役割を検討した結果、①HGFの発現調節、②炎症の抑制、③繊維細胞の産生するmacrophage活性化因子の産生抑制の三つの作用機序を示すことを見出した。これらの作用が肝炎―肝硬変へ進展過程に関与する機序を解明し、診療に役立てることを目標とした。
研究方法
肝疾患患者についてJAG1 遺伝子検索、SAPの測定、末梢血HCMV特異性T細胞の検索をおこなった。JAG、HGFの遺伝子導入は既報に基ずき、THP-1細胞の増殖分化、IL-8の産生促進、細胞膜上のCD14の発現などは、MTT法、ELISA法、Fax analysisで検討した。
結果と考察
AGSの2大症状が肺動脈狭窄と肝内胆管形成不全であることから、JAG1遺伝子異常をそれぞれの単独の疾患で検討した。肺動脈狭窄単独では見出されず、肝障害では胆道閉鎖症をはじめとする新生時期発症の肝疾患10%に異常を見出した。このことより、JAG1の肝炎における役割について検討した。①HGFの転写調節機序にJAG1遺伝子が働いていることは、AGSの発症にも関連し、かつ肝の再生でも重要と考えられる。②JAG1がNF-κBを介する系の炎症調節因子であり、肝樹立細胞でTNFαの刺激によるIL-8産生を抑制しているという結果は、肝炎の進展症機序を説明すると考える。③繊維細胞の産生するmacrophage活性化因子が細胞上清上に見出した。肝繊維化―肝硬変の進展過程を解明するものとしてその物質の同定と、機序解明を試みた。JAG1、JAG2の比較でJAG1のみ産生抑制を生じることを利用して、遺伝子挿入株のDNAチップによる解析を試み、相違の認められた物質につき、IL-8活性化能を指標として調べた。その結果、SAPが macrophage活性化作用を有すること、CD14、CD16の細胞膜上への発現もTHP-1細胞やヒト単核球を用いて確認した。さらに、SAPの簡易的な測定方法を開発し、臨床的な意義について検討した結果、肝繊維化の程度とSAPの血中濃度は逆相関を示した。また、HCMVの関与やリン脂質のSAPへの結合などの臨床的意義、これらの相互関連について明かにした。
結論
JAG1および繊維細胞は肝炎の進展、繊維化の進行に免疫的な役割を演じており、その機序解明は重要である。

公開日・更新日

公開日
2007-04-16
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2010-09-08
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200614017C

成果

専門的・学術的観点からの成果
JAG1 遺伝子の肝での個体誕生以降の働きに注目し、HGFの発現調節、肝での炎症抑制、macrophage 活性化因子の抑制の三つの働きを見出した。肝繊維症への進展機序として、繊維細胞が炎症を促し増悪させる機序を想定し、その妥当性とJAG1とSAPの関係を検討し、機序を明かにした。 肝炎との関連では、JAG1遺伝子の抗炎症作用を、肝繊維化の機序は、SAPに注目し、その臨床的意義を明らかにした。
臨床的観点からの成果
JAG1 遺伝子異常をAlagille syndrome(AGS)ばかりでなく、胆道閉鎖症、劇症肝炎などにも見出し、肝炎重篤化におけるJAGの意義を臨床的に示した。JAG1は肝での炎症抑制、macrophage 活性化因子の抑制などの働きを通して、肝炎の進展、肝繊維化に関与している。繊維細胞の産生するmacrophage活性化因子としてSAP に注目しその測定方法の開発と肝繊維症における意義について検討した。
ガイドライン等の開発
繊維細胞におけるmacrophage活性化因子の臨床的意義について検討し、臓器繊維疾患とくに肝硬変症や腎硬化症の進展機序解明および治療判定に役立てる臨床測定系の開発して検討中である.
また、serum amyloid A のELISA測定については、他の繊維化マーカーとの関連を調べ、特異性、感度なあどを比較検討し、製品化を視野に開発を進めたい。
その他行政的観点からの成果
臓器の繊維化は肝、腎における臓器不全にいたる最終形態である。移植や透析を必要とする臓器不全状態に至ると、医療経済的にも、患者の就業能力の点からも経済的損失は大きい。繊維化から不全にいたる同定を適切な治療により進展を阻止しえれば、これらの臓器の予備能力から考え、生活の継続が可能となる。今回、治療の面までは踏み入ることが出来なかったが、機序を明かにし、検査法を開発したことにより、今後の発展が期待できる。
その他のインパクト
JAG1遺伝子と胆道閉鎖症の関連を示す論文の内容は小児の消化器の専門書であるPediatric Gastrointestinal Diseaseに1/4ページにわたって紹介されている。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
3件
その他論文(和文)
3件
その他論文(英文等)
5件
学会発表(国内学会)
3件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計1件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Yuan ZR, Kobayashi N, Kohsaka T.
Human jagged 1 mutants cause liver defect in Alagille syndrome by overexpression of hepatocyte growth factor
J Mol Biol , 356 (3) , 559-566  (2006)
原著論文2
Nakamura A, Imaizumi A, Niimi R , et al
Adenoviral delivery of the beta2-adrenoceptor gene in sepsis: a subcutaneous approach in rat for kidney protection
Clin Sci (Lond) , 109 (6) , 503-511  (2005)
原著論文3
Kano H, Ito Y, Matsuoka K,et al
Critical role of T cell migration in bacterial superantigen-mediated shock in mice
Clin Immunol , 110 (2) , 159-171  (2004)
原著論文4
Nakamura A, Imaizumi A, Kohsaka T, et al
beta(2)-Adrenoceptor activation attenuates endotoxin-induced acute renal failure
J Am Soc Nephrol , 15 (2) , 315-325  (2004)
原著論文5
Abe J, Kano H, Nogami H,et al
Pathogenic role of a superantigen in Yersinia pseudotuberculosis infection
Adv Exp Med Biol , 529 (5) , 459-461  (2003)
原著論文6
Nakamura A, Imaizumi A, Yanagawa Y,
Beta2-adrenoceptor activation inhibits Shiga toxin2-induced apoptosis of renal tubular epithelial cells
Biochem Pharmacol , 66 (2) , 343-353  (2003)

公開日・更新日

公開日
2015-05-26
更新日
-