脂質代謝・機能の解明とその抗微生物薬開発への応用

文献情報

文献番号
200614016A
報告書区分
総括
研究課題名
脂質代謝・機能の解明とその抗微生物薬開発への応用
課題番号
H16-創薬-018
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
花田 賢太郎(国立感染症研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 西島正弘(国立感染症研究所)
  • 齊藤恭子(国立感染症研究所)
  • 久下理(九州大学大学院理学研究院)
  • 星子繁(明治製菓(株))
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 政策創薬総合研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
6,750,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
膜脂質の生合成と機能発現機構に関する研究を通じて、病原微生物感染成立における宿主膜脂質の役割を解明する。また、微生物の脂質代謝を特異的に阻害する物質を探索して、新規抗微生物薬開発のためのシード化合物を得る。
研究方法
真菌イノシトールホスホセラミド合成酵素(IPCS)阻害剤の半自動探索のために、Candida albicansミクロソーム膜画分を酵素源、放射性短鎖セラミドを基質とした酵素反応を384穴プレート内で行なった。HeLa細胞から精製したセラミド輸送タンパク質CERTをトリプシン分解し、そこから分離したリン酸化ペプチド断片を質量解析に供して、リン酸化を受けている部位を決定した。
結果と考察
真菌スフィンゴ脂質合成系を標的とした新規抗真菌薬の探索を目的とし、IPCS阻害化合物スクリーニング系により、現在までにいくつかの酵素阻害化合物を得ているが、高次評価の結果、有望な新規抗真菌薬のリード化合物となりうるかは更なる検討が必要である。哺乳動物細胞に発現させたCERTは、多重リン酸化を受けていることを見出し、その部位を決定した。出芽酵母におけるリン脂質輸送に関与する遺伝子同定を目指して、複数の変異株を分離した。
結論
IPCSを標的とした新規抗真菌剤探索系を改良して探索効率を高め、複数のヒット化合物を選択した。CERTは多重リン酸化を受けることで機能制御されていることを明らかにした。

公開日・更新日

公開日
2007-04-03
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2010-09-08
更新日
-

文献情報

文献番号
200614016B
報告書区分
総合
研究課題名
脂質代謝・機能の解明とその抗微生物薬開発への応用
課題番号
H16-創薬-018
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
花田 賢太郎(国立感染症研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 西島 正弘(国立感染症研究所 )
  • 齊藤 恭子(国立感染症研究所 )
  • 久下 理(九州大学大学院 理学研究院)
  • 星子 繁(明治製菓株式会社)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 政策創薬総合研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
膜脂質の生合成と機能発現機構に関する研究を通じて、病原微生物感染成立における宿主膜脂質の役割を解明する。また、微生物の脂質代謝を特異的に阻害する物質を探索して、新規抗微生物薬開発のためのシード化合物を得る。
研究方法
イノシトールホスホリルセラミド合成酵素(IPCS)活性の検出は、Candida albicansミクロソーム膜画分を酵素源、放射性短鎖セラミドを基質とした酵素反応を96穴または384穴プレート内で行ない、反応液を薄層クロマトグラフィー板状で同心円状に展開後、生成物の放射活性をイメージ解析で検出した。HeLa細胞から精製したセラミド輸送タンパク質CERTをトリプシン分解し、そこから分離したリン酸化ペプチド断片を質量解析に供して、リン酸化を受けている部位を決定した。
結果と考察
真菌スフィンゴ脂質合成系を標的とした新規抗真菌薬の探索を目的とし、IPCSの半ハイスループット系を構築し、微生物培養液及び化合物ライブラリーをスクリーニング源とした約3万サンプルのスクリーニングを実施した。その結果、複数の阻害物質を発見し、高次評価もその一部に関して行った。一方、哺乳動物細胞の小胞体-ゴルジ体間セラミド輸送を担うタンパク質CERTにおいて、そのFFATモチーフやPHドメインは効率的な小胞体-ゴルジ体間セラミド輸送機能に重要であることを明らかにした。さらに、CERTは、多重リン酸化を受けていることを見出し、その部位を決定した。その結果、CERTの特定の領域に複数のリン酸化が起こっており、CERTの機能はこのリン酸化で制御されていることが明らかとなった。出芽酵母リン脂質輸送に関与する遺伝子の同定を目的とし、PSD1との二重変異株およびCRD1、PSD2との三重変異株をそれぞれ約4800株構築し、単独変異では正常に増殖するものの、その変異がPSD1変異と合成増殖損傷となる遺伝子、並びにCRD1 PSD2二重変異と合成増殖損傷となる遺伝子を計48個同定した。
結論
IPCSを標的とした新規抗真菌剤スクリーニング系を構築し、約3万サンプルの中からIPCS阻害物質を複数見出した。CERTのFFATモチーフやPHドメインの役割やリン酸化による機能制御などを明らかにした。出芽酵母におけるリン脂質輸送に関与する遺伝子同定を目指して、複数の変異株を分離した。

公開日・更新日

公開日
2007-04-03
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2010-09-08
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200614016C

成果

専門的・学術的観点からの成果
真菌IPCS活性アッセイに関して384穴プレートを使用した半自動化の開発に成功し、この系を用いて3万以上のサンプルを探索した。この中でいくつかの酵素阻害物質を得たが、その特異性などを決定するに至っていない。なお、本研究で構築したユニークなスクリーニング系は、他の脂質代謝阻害剤のスクリーニング系に応用可能かもしれない。また、哺乳動物細胞におけるセラミド輸送タンパク質CERTの解析に関しては、計画通りに順調に進み、欧文原著論文を研究期間内に2報上梓することができた.
臨床的観点からの成果
基礎研究であり、臨床面まではまだ進んでいない。しかし、新たな抗真菌剤は免疫力の低下した患者などで特に求められており、IPC合成酵素阻害剤を探索するという研究方向性は社会的ニーズに沿ったものである。また、本研究で構築したユニークなスクリーニング系は、他の脂質代謝阻害剤のスクリーニング系に応用可能かもしれない。
ガイドライン等の開発
特になし。
その他行政的観点からの成果
特になし。
その他のインパクト
国際学術会議での招待講演を行った。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
5件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
3件
学会発表(国内学会)
17件
学会発表(国際学会等)
2件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
T. Ohsawa, M. Nishijima, and O. Kuge
Functional analysis of Chinese hamster phosphatidylserine synthase 1 through systematic alanine mutagenesis.
Biochem. J. , 381 , 853-859  (2004)
原著論文2
K. Kumagai, S. Yasuda, K. Okemoto, et al.
CERT mediates intermembrane transfer of various molecular species of ceramides.
J. Biol. Chem. , 280 , 6488-6495  (2005)
原著論文3
K. Okemoto, K. Kawasaki, K. Hanada, et al.
A potent adjuvant monophosphoryl lipid A triggers various immune responses, but not secretion of IL-1beta or activation of caspase-1.
J. Immunol. , 176 , 1203-1208  (2006)
原著論文4
M. Kawano, K. Kumagai, M. Nishijima, et al
Efficient trafficking of ceramide from the endoplasmic reticulum to the Golgi apparatus requires a VAMP-associated protein-interacting FFAT motif of CERT.
J. Biol. Chem. , 281 , 30279-30288  (2006)
原著論文5
K. Saito, M. Nishijima, and O. Kuge
Phosphatidylserine is involved in gene expression from Sindbis virus subgenomic promoter.
Biochem. Biophys. Res. Commun. , 345 , 878-885  (2006)

公開日・更新日

公開日
2015-05-26
更新日
-