高密度CGHアレイを用いた新規白血病・リンパ腫治療薬の標的分子の探索

文献情報

文献番号
200614015A
報告書区分
総括
研究課題名
高密度CGHアレイを用いた新規白血病・リンパ腫治療薬の標的分子の探索
課題番号
H16-創薬-017
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
小川 誠司(東京大学)
研究分担者(所属機関)
  • 三谷 絹子(獨協医科大学)
  • 竹内 賢吾(癌研究会附属病院)
  • 小林 幸夫(国立がんセンター)
  • 杉田 一憲(株式会社 ラボ)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 政策創薬総合研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
13,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
造血器腫瘍の治癒率向上のためには、疾患の原因分子に対して特異的に作用する薬剤の開発が有効かつ重要である。本研究事業では、造血器腫瘍ゲノムに生ずるコピー数の変化・メチル化に着目し、マイクロアレイ技術を駆使して造血器腫瘍ゲノムに生ずるゲノムコピー数の変化、メチル化の異常を網羅的に探索し、これらの異常の標的となる遺伝子を同定することにより、分子標的薬・診断システム開発のための知的基盤を構築する。
研究方法
Affymetrix社のSNPアレイを用いて腫瘍ゲノムのコピー数異常およびアレル不均衡を解析するアルゴリズムを開発し、これを用いて種々の病型を含む1250例の造血器腫瘍検体について、ゲノム異常の網羅的探索を行うことにより、造血器腫瘍の発症に関わる原因遺伝子異常の網羅的な探索を行った。また、癌細胞ゲノムにおけるメチル化部位の網羅的解析システムの構築を行った。
結果と考察
我々が独自に開発したCNAG/AsCNARプログラムでは、70-80%の正常細胞の混入下においても、自己正常対照DNAに依存することなく高感度にアレル不均衡を解析することが可能であった。本プログラムとSNPアレイを用いた1250例の造血器腫瘍検体の解析により、造血器腫瘍の各病型で特徴的に認められるゲノムの異常、およびその標的遺伝子の候補が多数同定された。また、小児ALLおけるPAX5を含む新規融合遺伝子群、MDSにおけるMDS-A(仮称)の活性化型変異、およびATL・悪性リンパ腫において増幅ないし変異を来す新規遺伝子を複数同定した。また、断片化処理した腫瘍DNAを抗メチル化シトシン抗体で免疫沈降し、沈降産物を増幅した後にタイリングアレイで増幅産物を検出することにより、高感度かつ網羅的に腫瘍ゲノムのメチル化部位を同定するシステムを構築した。
結論
マイクロアレイ解析システムを用いた網羅的な造血器腫瘍ゲノムの解析プラットフォームを構築し、これを用いて多数の造血器腫瘍試料を解析することにより、新規分子標的治療薬・診断システムを開発するためのシードとなる標的分子およびその候補となる分子を多数同定することに成功した。これらの分子を標的とした造血器腫瘍の新規治療法・診断技術の開発、また、今回見いだされたゲノム異常で未解析が進んでいない多数の領域についてその標的遺伝子の同定を効率的に進めることが今後の重要な課題である。

公開日・更新日

公開日
2007-05-31
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2010-09-08
更新日
-

文献情報

文献番号
200614015B
報告書区分
総合
研究課題名
高密度CGHアレイを用いた新規白血病・リンパ腫治療薬の標的分子の探索
課題番号
H16-創薬-017
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
小川 誠司(東京大学)
研究分担者(所属機関)
  • 三谷 絹子(獨協医科大学)
  • 竹内 賢吾(癌研究会附属病院)
  • 小林 幸夫(国立がんセンター)
  • 杉田 一憲(株式会社 ラボ)
  • 千葉 滋(東京大学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 政策創薬総合研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
造血器腫瘍の治癒率向上のためには、疾患の原因分子に対して特異的に作用する薬剤の開発が有効かつ重要である。本研究事業では、造血器腫瘍ゲノムに生ずるコピー数の変化・メチル化に着目し、最先端のマイクロアレイ技術を駆使して造血器腫瘍ゲノムに生ずるゲノムコピー数の変化、メチル化の異常を網羅的に探索し、これらの異常の標的となる遺伝子を同定することにより、分子標的薬・診断システム開発のための知的基盤を構築する。
研究方法
Affymetrix社のSNPアレイを用いて腫瘍ゲノムのコピー数異常およびアレル不均衡を解析するアルゴリズムを開発し、これを用いて造血器腫瘍におけるゲノム異常の網羅的探索を行うことにより、造血器腫瘍の発症に関わる原因遺伝子異常の網羅的な探索を行った。断片化処理した腫瘍DNAを抗メチル化シトシン抗体で免疫沈降し、沈降産物を増幅後、タイリングアレイ上で検出することにより、網羅的に腫瘍ゲノムのメチル化部位を同定する(MeDIP-on-chip法)。
結果と考察
我々が独自に開発したCNAG/AsCNARプログラムでは、70-80%の正常細胞の混入
下においても、自己正常対照DNAに依存することなく高感度にアレル不均衡を解析することが可能であった。本プログラムとSNPアレイを用いて、種々の病型を含む1250例の造血器腫瘍検体を解析することにより、造血器腫瘍の各病型で特徴的に認められるゲノムの異常、およびその標的遺伝子の候補が多数同定された。また、小児ALLおけるPAX5を含む新規融合遺伝子群、MDSにおけるMDS-A(仮称)の活性化型変異、およびATL・悪性リンパ腫において増幅ないし変異を来す新規遺伝子を複数同定した。また、MeDIP-on-chip法が癌ゲノムにおけるメチル化部位を網羅的に探索する上で、優れた手法であることが示された。
結論
マイクロアレイ解析システムを用いた網羅的な造血器腫瘍ゲノムの解析プラットフォームを構築し、これを用いて多数の造血器腫瘍試料を解析することにより、多数の標的分子およびその候補となる分子を多数同定することに成功した。これにより、新規分子標的治療薬・診断システムを開発するための基盤が構築された。今回同定した分子をシードとして、造血器腫瘍の新規治療法・診断技術の開発が期待される。また、アレイ解析結果で同定したその他多数の異常部位の解析を進めることにより、さらに多数の標的分子の同定が期待される。

公開日・更新日

公開日
2007-05-31
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2010-09-08
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200614015C

成果

専門的・学術的観点からの成果
ゲノムワイドなコピー数の解析によるがんの遺伝学的異常の研究は、近年注目され、国際的にも競争の著しい分野であるが、我々は超高密度のSNPアレイを用いてアレルの組成を含めた癌のゲノムコピー数の高性能なツールCNAGの開発を通じて、本分野の基盤技術の構築を行った。また、実際にSNPアレイとCNAGを用いて膨大な造血器腫瘍ゲノムの網羅的な解析を通じて、その分子メカニズムの解明のための重要な手かがりとなる多数の標的分子ないしその有力候補となる遺伝子の同定を行った。
臨床的観点からの成果
1200を超える造血器腫瘍のゲノムワイドなコピー数異常およびアレル不均衡の解析を通じて、造血器腫瘍で病型特異的に認められる遺伝子異常・染色体異常、およびアレル組成の異常が多数明らかとなったが、これらの知見は、造血器腫瘍の次世代の分子診断技術、分子標的薬剤開発のための重要な知的基盤を構築するものであり、今後これらのゲノム情報に基づいた造血器腫瘍の新規分子診断法、分子標的治療技術の開発が促進されることが期待される。
ガイドライン等の開発
造血器腫瘍に認められる染色体異常は、現在、造血器腫瘍に対する治療法決定のための最も重要な情報となっているが、ゲノム解析技術の急速な進歩を背景として、今後、造血器主要の診断・治療は、さらに詳細な分子レベルでのゲノム異常に基づいて行われるようになることは間違いない。本研究で得られた1200以上の造血器腫瘍のゲノムデータは、このような診断・治療のガイドラインを作成する上で重要な基礎データとなる。
その他行政的観点からの成果
がんは我が国の死亡率の第一位であり、なお急速な増加傾向にある。平成18年のがん対策基本法の制定をうけて、がんの克服に対する国民の期待は極めて尾大きい。しかし、既存の治療技術の枠内でがんの治癒率の著しい改善を求めることは困難であり、ゲノムレベルでのがんの解明に基づいた新たな治療法の開発への地道な取り組みが不可欠である。このような視点から、本研究事業は国の重要ながん克服に向けた取り組みにより、新たな診断技術・治療技術の開発につながる成果が得られた事例として一定の評価にあたいするものと信ずる。
その他のインパクト
本研究を通じて開発されたCNAGソフトウェアは東京大学TLOを通じて、タカラバイオにライセンス供与されておれ、SNPアレイを用いたゲノムコピー数の受託解析に用いられている。また、本ソフトウェアは、学術研究機関の研究者には無償で配布されており、がんのゲノム解析の分野で広く利用されるにいたっている。我が国の生物情報科学のレベルの高さを世界に示すことのできた数少ない例となっている。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
36件
その他論文(和文)
24件
その他論文(英文等)
1件
学会発表(国内学会)
78件
学会発表(国際学会等)
4件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Yamamoto G, Nannya Y, Kato M, et al.
Highly sensitive method for genome-wide detection of allelic composition in non-paired, primary tumor specimens using Affymetrix(R) SNP genotyping microarrays.
American Journal of Human Genetics  (2007)
原著論文2
Sanada M, Uike N, Ohyashiki K, et al.
Unbalanced translocation der(1;7)(q10;p10) defines a unique clinicopathological subgroup of myeloid neoplasms.
Leukemia.  (2007)
原著論文3
Kawase T, Akatsuka Y, Torikai H, et al.
Alternative splicing due to an intronic SNP in HMSD generates a novel minor histocompatibility antigen.
Blood.  (2007)
原著論文4
Jacobs S, Thompson ER, Nannya Y, et al.
Genome-wide, high-resolution detection of copy number, loss of heterozygosity, and genotypes from formalin-fixed, paraffin-embedded tumor tissue using microarrays.
Cancer Res. , 67 , 2544-2551  (2007)
原著論文5
Suzuki T, Yokoyama Y, Kumano K, et al.
Highly efficient ex vivo expansion of human hematopoietic stem cells using Delta1-Fc chimeric protein.
Stem Cells , 24 , 2456-2465  (2006)
原著論文6
Nakagawa M, Ichikawa M, Kumano K, et al.
AML1/Runx1 rescues Notch1-null mutation-induced deficiency of para-aortic splanchnopleural hematopoiesis.
Blood. , 108 , 3329-3334  (2006)
原著論文7
Hosoya N, Sanada M, Nannya Y, et al.
Genomewide screening of DNA copy number changes in chronic myelogenous leukemia with the use of high-resolution array-based comparative genomic hybridization.
Genes Chromosomes Cancer. , 45 , 482-494  (2006)
原著論文8
Nannya Y, Sanada M, Nakazaki K, et al.
A robust algorithm for copy number detection using high-density oligonucleotide single nucleotide polymorphism genotyping arrays.
Cancer Res. , 65 , 6071-6079  (2005)
原著論文9
Masuda S, Kumano K, Shimizu K, et al.
Notch1 oncoprotein antagonizes TGF-beta/Smad-mediated cell growth suppression via sequestration of coactivator p300.
Cancer Sci. , 95 , 274-282  (2005)
原著論文10
Lee SY, Kumano K, Masuda S, et al.
Mutations of the Notch1 gene in T-cell acute lymphoblastic leukemia: analysis in adults and children.
Leukemia. , 19 , 1841-1843  (2005)
原著論文11
Hosoya N, Qiao Y, Hangaishi A, et al.
Identification of a SRC-like tyrosine kinase gene, FRK, fused with ETV6 in a patient with acute myelogenous leukemia carrying a t(6;12)(q21;p13) translocation.
Genes Chromosomes Cancer. , 42 , 269-279  (2005)
原著論文12
Crcareva A, Saito T, Kunisato A, et al.
Hematopoietic stem cells expanded by fibroblast growth factor-1 are excellent targets for retrovirus-mediated gene delivery.
Exp Hematol. , 33 , 1459-1469  (2005)
原著論文13
Haraguchi K, Takahashi T, Matsumoto A, et al.
Host-residual invariant NK T cells attenuate graft-versus-host immunity.
J Immunol. , 175 , 1320-1328  (2005)
原著論文14
Kawazu M, Asai T, Ichikawa M, et al.
Functional domains of Runx1 are differentially required for CD4 repression, TCRbeta expression, and CD4/8 double-negative to CD4/8 double-positive transition in thymocyte development.
J Immunol. , 174 , 3526-3533  (2005)

公開日・更新日

公開日
2015-05-26
更新日
-