蛋白立体構造異常を原因とするコンフォメーション病に対する病態解明と創薬探索システムの確立

文献情報

文献番号
200614014A
報告書区分
総括
研究課題名
蛋白立体構造異常を原因とするコンフォメーション病に対する病態解明と創薬探索システムの確立
課題番号
H16-創薬-016
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
桃井 隆(国立精神・神経センター)
研究分担者(所属機関)
  • 礒合 敦(旭硝子株式会社 ASPEX事業推進部)
  • 上田 正次(株式会社ワイエス研究所)
  • 日比野 利彦(資生堂ライフサイエンス研究所)
  • 今泉 和則(宮崎大学医学部 解剖学第一講座)
  • 徳永 文稔(大阪市立大学大学院医学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 政策創薬総合研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
13,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究はコンフォメーション病の原因である立体構造異常蛋白が示す蛋白分解酵素に対する抵抗性の仕組みを解析し、こうした異常蛋白の蓄積凝集が誘導するコンフォメーション病の病態の解明、および酵母、細胞、マウスの病態モデルを作製し、創薬探索システムを確立し、異常蛋白分解を促進する化合物の探索を目的としている。本研究はコンフォメーション病の治療や予防システムの確立において必要であると考える。
研究方法
1)昨年度までに、小胞体ストレスシグナルPERK-eIF2aを介して、オートファジー形成を促進し、ポリグルタミン凝集を分解することが明らかになった。本年度は小胞体内で凝集する変異ジスフェルリンによる小胞体ストレス誘導の分子機構の解析、小胞体関連分解系(ERAD)としてのユビキチンプロテアゾーム分解系とオートファジーリソゾーム分解系との役割を調べる。
2)昨年度までに同定した新規ユビキチンリガーゼHOIL-1Lの基質を調べる。
3)昨年度までに確立した創薬探索システム(酵母、細胞系)を用いて、小胞体ストレス非依存的に小胞体シャペロンBipを誘導する化合物の探索および異常蛋白分解を促進する化合物の探索を行う。
結果と考察
1)小胞体内変異ジスフェルリン蛋白凝集によるオートファジー形成遺伝子発現誘導の分子機構を解析した結果、小胞体膜上での変異ジスフェルリンはユビキチンプロテアゾーム分解系以外に、PERK-eIF2aリン酸化を介して、活性化されたオートファジーにより分解されることが明らかになった。
2)HOIL-1L/HOIP複合体(LUBAC)は、新規直鎖型ポリユビキチン鎖を生成し、活性化した従来型PKCを分解した。
3)新規化合物BIXは小胞体ストレス非依存的に小胞体シャペロンBipの発現を誘導し、脳虚血による神経細胞死から保護する作用を有していた。
結論
1)ERADにはユビキチンプロテアゾーム分解系とオートファジーリソゾーム分解系がある。
2)小胞体ストレスによるPERK-eIF2aのリン酸化を介して、恒常的オートファジー形成形成は制御され、ポリグルタミン凝集、変異ジスフェルリンが分解される。
3)LUBACは細胞内シグナル伝達制御タンパク質の品質管理機能をもつユビキチンリガーゼであった。
4)ケミカルシャペロンや小胞体シャペロンBipの発現を制御する化合物が複数発見された。

公開日・更新日

公開日
2007-04-16
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2010-09-08
更新日
-

文献情報

文献番号
200614014B
報告書区分
総合
研究課題名
蛋白立体構造異常を原因とするコンフォメーション病に対する病態解明と創薬探索システムの確立
課題番号
H16-創薬-016
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
桃井 隆(国立精神・神経センター)
研究分担者(所属機関)
  • 礒合 敦(旭硝子株式会社 )
  • 上田 正次(株式会社ワイエス研究所 )
  • 日比野 利彦(資生堂ライフサイエンス研究所)
  • 今泉 和則(宮崎大学医学部 )
  • 徳永 文稔(大阪市立大学大学院医学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 政策創薬総合研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は立体構造異常蛋白と蛋白分解酵素に対する抵抗性が誘導するコンフォメーション病の病態の解明と酵母、細胞、マウスの創薬探索システムを確立し、異常蛋白分解を促進する化合物の探索を目的とする。

研究方法
1)ERストレス細胞死抑制の分子機構の解明。
2)ポリグルタミン凝集や変異ジスフェルリンの凝集による小胞体ストレス誘導の分子機構を解析し、小胞体関連分解系(ERAD)としてのユビキチンプロテアゾーム分解系とオートファジーリソゾーム分解系との役割を調べる。
3)創薬探索システム(酵母、細胞系)を確立し、小胞体シャペロンおよびケミカルシャペロンの探索および異常蛋白分解を促進する化合物の探索を行う。
4)治療薬の探索、薬効を調べるための疾患モデルマウスを作製する。
結果と考察
1)小胞体ストレスはPERK-eIF2aリン酸化を介して、オートファジー形成(LC3IからIIへの変換)を促進した。
2)ポリグルタミン凝集や変異ジスフェルリン凝集はユビキチンプロテアゾーム分解系以外に、小胞体ストレス経路であるPERK-eIF2aリン酸化を介して、活性化されたオートファジーにより分解された。
3)HOIL-1L/HOIP複合体(LUBAC)は、E3リガーゼとして、新規直鎖型ポリユビキチン鎖を生成し、活性化した従来型PKCを分解した。
4)トランスロコンSec61betaの過剰発現は、小胞体ストレス誘導を抑制し、ハンチントン病モデルマウスはSec61betaのTgマウスとの交配により延命した。
5)創薬探索システム(酵母、細胞系)としてTetを用いたポリグルタミン凝集を確立し、小胞体シャペロンの発現を誘導する新規化合物BIXと小胞体ケミカルシャペロンERCC-1を分離した、BIXは脳虚血による神経細胞死から保護した。
結論
1)ERADにはユビキチンプロテアゾーム分解系とオートファジーリソゾーム分解がある。
2)恒常的オートファジー形成は小胞体ストレスPERK-eIF2aを介して制御され、ポリグルタミン凝集、変異ジスフェルリンを分解する。
3)LUBACは細胞内シグナル伝達制御タンパク質の品質管理機能をもつユビキチンリガーゼであった。
4)ケミカルシャペロンERCC-1や小胞体シャペロンの発現を制御する化合物BIXを発見した。
本研究はコンフォメーション病の治療や予防システムの確立に貢献したと考える。

公開日・更新日

公開日
2007-04-03
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2010-09-08
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200614014C

成果

専門的・学術的観点からの成果
コンフォメーション病の原因である立体構造異常蛋白が示す蛋白分解酵素に対する抵抗性の仕組みを解析し、こうした異常蛋白の蓄積凝集が誘導するコンフォメーション病の病態について研究した。恒常的オートファジーはユビキチンプロテアゾーム分解系が機能しない場合、小胞体
関連分解系(ERAD)の別経路として、小胞体ストレスによるPERK-eIF2aのリン酸化を介して活性化され、ポリグルタミン凝集などの変異蛋白を分解する。

臨床的観点からの成果
酵母、細胞、マウスの病態モデルを作製し、創薬探索システムを確立し、異常蛋白分解を促進する化合物の探索した結果ケミカルシャペロンや小胞体シャペロンBipの発現を制御する化合物が複数発見された。新規化合物BIXは小胞体ストレス非依存的に小胞体シャペロンBipの発現を誘導し、脳虚血による神経細胞死から保護する作用を有していた。
ガイドライン等の開発
特になし
その他行政的観点からの成果
本研究はコンフォメーション病の治療や予防システムの確立に
おいて必要であると考える。
その他のインパクト
1.所属する国立精神神経センターにおいて「蛋白立体構造異常を原因とする コンフォメーション病に対する病態解明と創薬探索システムの確立」関し意見交換を行った後、ビタサルートサンラフェーレ大学-医学学校,分子、細胞生物学教授シティア博士による講演会を開催した。講演の内容は「抗体産生系における小胞体品質管理機構についてーERp44 の 機能 」

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
15件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
17件
学会発表(国際学会等)
2件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Momoi, T.
Caspases involved in ER stress-mediated cell death.J Chem Neuroanat.
J Chem Neuroanat.  (2004)
原著論文2
Momoi, T.
Conformational Diseases and ER tress-Mediated Cell Death: Apoptotic Cell Death and Autophagic Cell Death
Curr Mol Med  (2006)
原著論文3
Kouroku,Y., Fujita,E., Momoi,T.et al.
Inhibition of polyglutamine aggregation by ER Stress(PERK/eIF2αPhosphorylation)-Mediated LC3 conversion.
Cell Death and Differ  (2006)
原著論文4
Fujita,E Kouroku,Y.,Momoi,T.et al.
Oligo-astheno-teratozoospermia in mice lacking RA175/TSLC1/SynCAM/IGSF4A, a cell adhesion molecule in the immunoglobulin superfamily
Mol. Cell Biol  (2006)
原著論文5
Fujita, E., Soyama, A., Momoi, T.et al.
Distribution of RA175/TSLC1 /SynCAM, a member of the immunoglobulin superfamily,in the developing nervous system.
Brain Res. Dev. Brain Res  (2005)
原著論文6
Mizutani, A., Matsuzaki, A., Momoi, T.et al.
Intracellular distribution of a speech/language disorder associated FOXP2 mutant
Biochem Biophys Res Commun  (2007)
原著論文7
Kouroku, Y., Fujita, E., Momoi, T.et al.
ER stress (PERK/eIF2alpha phosphorylation) mediates the polyglutamine-induced LC3 conversion, an essential step for autophagy formation.
Cell Death Differ.  (2007)
原著論文8
Fujita ,E., Kouroku, Y., Momoi,T.et al.
Oligo-asthenoteratozoo spermia in mice lacking RA175/TSLC1/ SynCAM /IGSF4A, a cell adhesion molecule in the immunoglobulin superfamily.
Mol. Cell Biol.  (2006)

公開日・更新日

公開日
2015-05-26
更新日
-