文献情報
文献番号
200614013A
報告書区分
総括
研究課題名
病態時の侵害情報伝達に関与するプリン受容体の機能解明
課題番号
H16-創薬-015
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
井上 和秀(九州大学)
研究分担者(所属機関)
- 小泉 修一(国立医薬品食品衛生研究所)
- 鳥光 慶一(NTT物性科学基礎研究所)
- 野口 光一(兵庫医科大学)
- 中塚 映政(佐賀大学)
- 加藤 総夫(東京慈恵会医科大学)
- 安藤 譲二(東京大学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 政策創薬総合研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
22,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
難治性疼痛は発症機序が不明、有効な治療法が確立されていないために、多くの患者が苦しんでいる。我々は「脊髄内ミクログリアの活性化とそこでのATP受容体サブタイプP2X4の過剰発現と刺激が神経因性疼痛の発症と維持に関与する」ことを明らかにした(Nature 424, 778-783, 2003)。P2X4は鎮痛薬の新しいターゲットとして紹介された(Nature Reviews /Drug Discovery 2, 772-773, 2003)が、より本質的な多くの疑問点が残されている。本研究の目的は、このような不明の部分を明らかにし、難治性疼痛に有効な鎮痛薬創製のシーズを得ることにある。
研究方法
侵害情報の発生から認知の過程それぞれにおけるプリン受容体の役割を、脊髄損傷モデル等による行動薬理学的手法、遺伝子分子生物学的手法(ノックアウト動物、アンチセンスDNA、siRNA、DNAチップ)、組織解剖学的手法、電気生理学的手法および in vitro 画像解析法で明らかにする。
結果と考察
脊髄第Ⅸ層運動ニューロンにおいてP2Y1受容体が発現しており、脊髄損傷によって遊離されるATPによってP2Y1受容体を介して脱分極することが明らかとなった。脊髄損傷の急性期に、プリン受容体阻害薬によって損傷範囲を限局化できれば、脊髄損傷患者のADLおよびQOLを改善することができる。
神経因性疼痛成立の数日以内に扁桃体シナプス伝達増強の固定化過程が誘発され、それは疼痛応答の治療後においても進行するという新事実を明らかにした。さらに、その情動性痛み情報の中継核である橋脚傍核における興奮性シナプス伝達をATPが効率的に抑制する事実を見出した。本PBシナプス伝達もしくはPBニューロンは、痛み誘発情動応答の固定を予防するための重要な治療標的になる可能性がある。
神経因性疼痛発現の鍵分子である脊髄ミクログリアP2X4受容体と、神経因性疼痛抑制と関連している脊髄ミクログリアP2Y6受容体の相互作用について検討を加えた。UDP/P2Y6受容体刺激はミクログリアの貪食能の亢進を引き起こした。
神経因性疼痛成立の数日以内に扁桃体シナプス伝達増強の固定化過程が誘発され、それは疼痛応答の治療後においても進行するという新事実を明らかにした。さらに、その情動性痛み情報の中継核である橋脚傍核における興奮性シナプス伝達をATPが効率的に抑制する事実を見出した。本PBシナプス伝達もしくはPBニューロンは、痛み誘発情動応答の固定を予防するための重要な治療標的になる可能性がある。
神経因性疼痛発現の鍵分子である脊髄ミクログリアP2X4受容体と、神経因性疼痛抑制と関連している脊髄ミクログリアP2Y6受容体の相互作用について検討を加えた。UDP/P2Y6受容体刺激はミクログリアの貪食能の亢進を引き起こした。
結論
このように痛み伝達におけるプリン受容体の役割が明らかになってきた。
公開日・更新日
公開日
2007-04-03
更新日
-