動脈硬化症と血栓症にかかわるスフィンゴシン1-リン酸(S1P)受容体(S1P3)の拮抗薬の開発

文献情報

文献番号
200614011A
報告書区分
総括
研究課題名
動脈硬化症と血栓症にかかわるスフィンゴシン1-リン酸(S1P)受容体(S1P3)の拮抗薬の開発
課題番号
H16-創薬-013
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
望月 直樹(国立循環器病センター)
研究分担者(所属機関)
  • 福原 茂朋(国立循環器病センター)
  • 澤 洋文(北海道大学人獣共通感染症リサーチセンター)
  • 村上 晶(トーアエイヨー(株)研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 政策創薬総合研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
10,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
動脈硬化症は高齢化社会では不可避の病気であり、現在の日本の主要な死因である心血管疾患・脳血管疾患の原因として重要な病態である。血小板凝集抑制・高脂血症治療薬・糖尿病治療薬だけでは抑えきれない動脈硬化症を内皮細胞で発現するS1P受容体を制御することで動脈硬化症を治療するという発想からS1P受容体の拮抗薬を創薬することを目的として研究をおこなった。
研究方法
スクリーニング:S1P3/EDG3受容体拮抗薬のスクリーニングのために、S1P1/EDG1, S1P2/EDG5,S1P3/EDG3,S1P4/EDG6及びS1P5/EDG8 をそれぞれ恒常発現させたCHO-K1細胞を調整して用いた。
合成:S1P3/EDG3受容体拮抗薬として有望な候補化合物の関連誘導体の合成は、パーソナル有機合成装置ChemiStationTM PPW2000を用いた
S1P3の細胞での機能;ヒト臍帯静脈内皮細胞 (HUVEC) 及びヒト冠動脈平滑筋細胞 (HCASMCs) を用い、S1P刺激 (1uM) による接着分子の発現及びRhoの活性化をwestern blot法により評価した。さらに、PKCの細胞膜移行、細胞内CaのオシレーションにS1P3が関わるか否かを検討した。
冠血流への効果:ラット摘出心Langendorff灌流標本を用いてS1PとS1P3拮抗薬の効果を調べた。
結果と考察
医薬品として使用しうるS1P3受容体選択的拮抗薬として有望なTY-52156を見出した。
TY-52156がS1Pのほかの受容体には拮抗作用がなく、S1P3特異的な拮抗薬であることを確認した。S1Pが血管内皮細胞の接着因子(ICAM-1, VCAM-1)の発現を増加させるが、これをTY-52156が完全に抑制した。S1Pが冠血流量を著名に減少させるが、TY-52156の前処理によって抑制できた。
TY-52156はS1Pによる血管収縮を抑制することが可能であり、臨床的に脳血管攣縮、冠動脈攣縮の病態でTY-52156が効果を示すことが予想できた。
結論
S1P3拮抗薬としてTY-52156を開発した。

公開日・更新日

公開日
2007-04-03
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2010-09-08
更新日
-

文献情報

文献番号
200614011B
報告書区分
総合
研究課題名
動脈硬化症と血栓症にかかわるスフィンゴシン1-リン酸(S1P)受容体(S1P3)の拮抗薬の開発
課題番号
H16-創薬-013
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
望月 直樹(国立循環器病センター)
研究分担者(所属機関)
  • 福原 茂朋(国立循環器病センター)
  • 澤 洋文(北海道大学人獣共通感染症リサーチセンター)
  • 小出 友紀(トーアエイヨー(株)研究所)
  • 村上 晶(トーアエイヨー(株)研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 政策創薬総合研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
現在の日本の主要な死因である心血管疾患・脳血管疾患の原因として重要な病態は動脈硬化症に起因するといっても過言ではない。血小板凝集抑制・高脂血症治療薬・糖尿病治療薬だけでは抑えきれない動脈硬化症を血管で発現するスフィンゴシン1リン酸(S1P)受容体を制御することで動脈硬化症を治療するという発想からS1P受容体の拮抗薬を創薬することを目的として研究をおこなった。
研究方法
化合物のスクリーニングと合成:S1P1, S1P2,S1P3をそれぞれ恒常発現させたCHO-K1細胞を調整してS1P依存性の細胞内Caの増加の抑制を指標に化合物をスクリーニングした。合成はS1P3/EDG3受容体パーソナル有機合成装置ChemiStationTM PPW2000で行った。
S1P3の細胞での機能の検討:ヒト臍帯静脈内皮細胞 (HUVEC) 及びヒト冠動脈平滑筋細胞 (HCASMCs) を用い、S1P刺激 (1uM) による接着分子の発現及びRhoの活性化をwestern blot法により評価した。さらに、PKCの細胞膜移行、細胞内CaのオシレーションにS1P3が関わるか否かを検討した。
S1Pの冠血流への影響とS1P3拮抗薬の効果の検討:ラット摘出心Langendorff灌流標本を用いてS1PとS1P3拮抗薬の効果を調べた。
結果と考察
はじめにスクリーニングでID102455を見出したが、農薬に近いために改変を行って生体への影響のない化合物TY-52156を合成した。TY-52156は経口吸収も可能であり排泄も確認できた。このTY-52156がS1P3特異的な拮抗薬でありS1Pのほかの受容体には拮抗作用がないことを確認した。S1Pが血管内皮細胞の接着因子(ICAM-1, VCAM-1)の発現を増加させることRhoを活性することがわかったが、この両者をTY-52156が完全に抑制した。さらに摘出心臓でS1Pが冠血流量を著名に減少させるが、TY-52156の前処理によって抑制できた。
結論
本研究で合成したTY-52156は、血管攣縮を抑制する可能性のある薬剤になりうる。

公開日・更新日

公開日
2007-04-03
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2010-09-08
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200614011C

成果

専門的・学術的観点からの成果
これまでスフィンゴシン1燐酸(S1P)受容体は,S1P1-S1P5まで同定されているが、個々の機能について検討きないのは拮抗薬がないためであった。今回S1P3の拮抗薬の開発により血管平滑筋収縮にS1P3が重要であることがわかった。
臨床的観点からの成果
S1Pが顕著な冠状動脈収縮を誘発することが確認できた。S1Pは凝集血小板から分泌されるために冠攣縮を起こす重要な因子であり、これが今回開発したS1P3拮抗薬で完全に阻害できたことから、血管攣縮の薬剤候補になりうる発見となった。
ガイドライン等の開発
ガイドラインの作製に貢献するような成果となる研究ではないと考える。
その他行政的観点からの成果
日本人の冠状動脈疾患では攣縮型の狭心症も多く、重症な場合にはこれまでの亜硝酸薬やカルシウム拮抗薬の効果がない場合もある。S1P3拮抗薬はこのような難治性の狭心症の新規治療薬にもなりうる。当該研究じぎょうによって、新規薬剤が合成できたことは非常に重要である。
その他のインパクト
特許の問題もあり公にしていなかったが、今後血管攣縮に効果があるという情報を広く伝えていきたいと考える。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
23件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
0件
学会発表(国際学会等)
7件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計1件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Sakurai A, Fukuhara S, Yamagishi A, Sako K, Kamioka Y, Masuda M, Nakaoka Y, et al.
MAGI-1 is required for Rap1 activation upon cell-cell contact and for enhancement of VE-cadherin– mediated cell adhesion
Mol. Biol. Cell , 17 , 966-976  (2006)
原著論文2
Somekawa S, Fukuhara S, Fujita H, et al.
Enhanced functional Gap junction neoformation by PKA-dependent and Epac-Rap1-dependent signals downstream of cAMP in cardiac myocytes
Circ. Res , 92 , 655-662  (2005)
原著論文3
Okada, Y., Suzuki, T., Sunden,et al
Dissociation of heterochromatin protein 1 from lamin B receptor induced by human polyomavirus agnoprotein: role in nuclear egress of viral particles.
EMBO. Rep , 6 , 452-457  (2005)
原著論文4
Koide, Y.; Uemoto, K.; Hasegawa, T. et al
Pharmacophore-based design of sphingosine 1-phosphate-3 receptor antagonists that include a 3,4-dialkoxybenzophenone scaffold
J Med Chem , 50 , 442-454  (2007)
原著論文5
Tabu K, Ohnishi A, Sunden Y, et al.
A novel function of OLIG2 to suppress human glial tumor cell growth via p27Kip1 transactivation.
J, Cell Sci. , 119 , 1433-1441  (2006)
原著論文6
Qu Q, Sawa H, Suzuki T, et al.
Nuclear entry mechanism of the human polyomavirus JC virus like particle: role of importins and the nuclear pore complex
J. Biol. Chem , 279 , 27735-27742  (2004)
原著論文7
Fujita H, Fukuhara S, Sakurai A
Local activation of Rap1 contributes to directional vascular endothelial cell migration accompanied by extension of microtubules on which RAPL, a Rap1-associating molecule, localizes.
J. Biol. Chem. , 280 , 5022-5031  (2005)
原著論文8
Fukuhara S, Sakurai A, Sano H, et al.
Cyclic AMP potentiates VE-cadherin-mediated cell-cell contact to enhance endothelial barrier function through Epac-Rap1 siganaling pathway.
Mol. Cell Biol. , 25 , 136-146  (2005)
原著論文9
Ohki T, Mikhailenko SV, Morales MF
Transmission of force and displacement within the myosin molecule.
Biochmistry , 43 , 13707-13714  (2004)
原著論文10
Kamioka Y, Fukuhara S, Hirofumi S,
A novel dynamin-associating molecule, forming-binding protein 17, induces tubular membrane invaginations and participates in endocutosis.
J. Biol. Chem. , 279 , 40091-40099  (2004)

公開日・更新日

公開日
2015-05-26
更新日
-