掛け流し式温泉における適切な衛生管理手法の開発等に関する研究

文献情報

文献番号
200501236A
報告書区分
総括
研究課題名
掛け流し式温泉における適切な衛生管理手法の開発等に関する研究
課題番号
H17-健康-020
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
井上 博雄(愛媛県立衛生環境研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 遠藤 卓郎(国立感染症研究所 寄生動物部)
  • 倉 文明(国立感染症研究所 細菌第一部)
  • 大谷 勝実(山形県衛生研究所 )
  • 黒木 俊郎(神奈川県衛生研究所)
  • 杉山 寛治(静岡県環境衛生科学研究所 微生物部)
  • 烏谷 竜哉(愛媛県立衛生環境研究所 衛生研究課)
  • 縣 邦雄(アクアス株式会社 つくば総合研究所)
  • 山崎 和生((株)西原衛生工業所 技術部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 健康科学総合研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
15,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 循環系を持たない掛け流し式温泉を対象に、レジオネラ属菌等による入浴者の健康被害を防止するための最適な衛生管理手法を開発し、安全・安心な温泉の提供に寄与する。
研究方法
1) 源泉の微生物増殖能力(増殖ポテンシャル)を評価するため、源泉水のAOC(同化性有機炭素、Assimilable Organic Carbon)濃度を測定した。2) 貯湯槽内にシリコンゴム板を留置し、表面のバイオフィルム付着状況を経時的に調査した。3) PCR-DGGE法を用いて、貯湯槽、給湯配管系に存在する微生物叢の解析を行った。4) 浴槽への供給湯配管に流水式紫外線殺菌装置を設置し、浴槽水中のレジオネラ属菌、従属栄養細菌数等の挙動を調査した。5) 構造設備や管理手法について現地調査を行うとともに、浴槽、湯口、貯湯槽、源泉の温泉水を採取し、レジオネラ属菌、大腸菌、緑膿菌、黄色ブドウ球菌等の汚染状況を調査した。6) 衛生管理の実情を把握するため、温泉旅館営業者に対してアンケート調査を実施した。
結果と考察
1) 源泉のAOC値は2?314μg/Lの範囲であり、レジオネラ属菌汚染の警戒値は100μg/Lと算定した。2) 貯湯槽内に浸漬したシリコン板へのレジオネラ属菌の定着は2?3ヶ月で確認された。3) 貯湯槽、配管系に多様な微生物叢の存在を確認した。源泉の増殖ポテンシャルが高ければ、貯湯槽から配管まで同じ微生物叢で占められたが、浴槽では微生物叢が交代していることがわかった。4) 注湯口の間近に紫外線殺菌装置を設置することが有効であった。5) 浴槽でのレジオネラ属菌検出率は49%、注湯口では22%であった。酸性、弱酸性泉では検出されず、硫黄泉では低率に、塩化物泉では高率に検出された。浴槽の材質、洗浄方法による検出率の相違が見られ、泉質に応じた管理の重要性が示唆された。6) 管理状況の傾向を把握するとともに、浴槽容量と補給湯量の関係など、施設設計の問題点を明らかにした。
結論
 掛け流し式温泉の汚染の実態を幅広く把握し、施設構造及び管理手法に関する問題点を明らかにした。貯湯槽、配管系の微生物汚染は、源泉の有機物量や泉質に依存する可能性を見出した。浴槽においては、現行の管理手法によるバイオフィルム対策が不十分であり、泉質、浴槽の材質、洗浄方法によってレジオネラ属菌の検出率が大きく異なることを示した。今後具体的な浴槽衛生管理手法を提示するうえでの重要な知見を得た。

公開日・更新日

公開日
2006-04-18
更新日
-