発達段階にある脳を対象とする携帯電話周波数帯電磁界曝露の血液脳関門に及ぼす影響に関する研究

文献情報

文献番号
200501234A
報告書区分
総括
研究課題名
発達段階にある脳を対象とする携帯電話周波数帯電磁界曝露の血液脳関門に及ぼす影響に関する研究
課題番号
H16-健康-056
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
牛山 明(国立保健医療科学院 生活環境部)
研究分担者(所属機関)
  • 増田 宏(国立保健医療科学院 生活環境部)
  • 多氣 昌生(首都大学東京 都市教養学部)
  • 渡辺 聡一(独立行政法人 情報通信研究機構)
  • 和氣 加奈子(独立行政法人 情報通信研究機構)
  • 花澤 理宏(独立行政法人 情報通信研究機構)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 健康科学総合研究
研究開始年度
平成15(2003)年度
研究終了予定年度
平成17(2005)年度
研究費
14,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
携帯電話等の機器の安全性については、総務省の定めた電波防護指針等に則りそのガイドラインが示されているが、そのガイドラインは主に電波の発熱作用を根拠にしたものであり、非熱的あるいは長期的曝露の生体影響については、十分な科学的根拠がないため考慮されていない。一方、急速に普及している携帯電話を子供も使用していることから未完成な脳への曝露影響を懸念する報告もある。本研究では、携帯電話においては頭部に接近して使用することから、高周波電磁界曝露の発育段階の脳への影響、その中でも脳の血液脳関門に対する影響の有無について脳深部で追究する。
研究方法
本研究では、ダイアリシスサンプリング法を用いて生体影響評価を行った。本法ではラットの側脳室または実質にプッシュプルカニューラを埋め込んで、側脳室からの脳髄液または間質液を経時的に回収し、回収した脳髄液に含まれるアルブミンの濃度を調べることで血液脳関門機能の障害の有無を検証する。そのためラットには予め、蛍光標識したアルブミンを血液中に流しておき、脳髄液中に漏出する蛍光を微弱蛍光検出器で定量し、脳髄液のアルブミン濃度を算出し各条件下で比較検討を行う。また本研究ではラットに最適化した高周波電磁界発生装置(アンテナ)を使用し、工学的な曝露評価について感温液晶マイクロカプセルを用いた高周波電磁界のエネルギー吸収分布を評価するシステムによっておこなった。評価が行われた発生装置を用いて実際にラットに亜慢性曝露(1日30分間を6日間連続)行った際のバリア機能への影響を生理学的に検討した。
結果と考察
17年度においては、幼若ラット(4週齢-)のラットを用いて実験を行った。曝露条件として脳の平均SAR(比吸収率)で、0.5W/kg, 2.0W/kg, 10W/kgの曝露条件で30分間の曝露を6日間を行った際の亜慢性影響を検討した。その結果、いずれの条件においても回収された脳髄液中にアルブミンの大量漏出は認められず、偽曝露の条件と同様であった。
結論
今年度は、4週-5週齢の幼若なラットを用いて様々な曝露強度で亜慢性曝露を行ったが脳髄液にアルブミンが漏出した所見は見られず、本実験条件においては、電波防護指針以下の電磁界強度では生体影響は検出されなかった。これらの結果は、携帯電話の健康リスク評価における一つの重要なデータになることが期待される。

公開日・更新日

公開日
2015-11-20
更新日
-

文献情報

文献番号
200501234B
報告書区分
総合
研究課題名
発達段階にある脳を対象とする携帯電話周波数帯電磁界曝露の血液脳関門に及ぼす影響に関する研究
課題番号
H16-健康-056
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
牛山 明(国立保健医療科学院 生活環境部)
研究分担者(所属機関)
  • 増田 宏(国立保健医療科学院 生活環境部)
  • 多氣 昌生(首都大学東京 都市教養学部)
  • 渡邊 聡一(独立行政法人情報通信研究機構)
  • 和氣 加奈子(独立行政法人情報通信研究機構)
  • 花澤 理宏(独立行政法人情報通信研究機構)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 健康科学総合研究
研究開始年度
平成15(2003)年度
研究終了予定年度
平成17(2005)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
携帯電話等の機器の安全性については、総務省の定めた電波防護指針等に則りそのガイドラインが示されているが、そのガイドラインは主に電波の発熱作用を根拠にしたものであり、非熱的あるいは長期的曝露の生体影響については、十分な科学的根拠がないため考慮されていない。一方、急速に普及している携帯電話を子供も使用していることから未完成な脳への曝露影響を懸念する報告もある。本研究では、携帯電話においては頭部に接近して使用することから、高周波電磁界曝露の発育段階の脳への影響、その中でも脳の血液脳関門に対する影響の有無について脳深部で追究する。
研究方法
本研究では、ダイアリシスサンプリング法を用いて生体影響評価を行った。そのためラットには予め、蛍光標識したアルブミンを血液中に流しておき、脳髄液中に漏出する蛍光を微弱蛍光検出器で定量し、脳髄液のアルブミン濃度を算出し各条件下で比較検討を行った。また電磁界の曝露にはラットに最適化した高周波電磁界発生装置(アンテナ)を使用し、工学的な曝露評価について数値シミュレーションによる計算や、感温液晶マイクロカプセルを用いた高周波電磁界のエネルギー吸収分布を評価するシステムによって行った。評価が行われた発生装置を用いて実際にラットに様々な曝露を行った際のバリア機能への影響を生理学的に検討した。なお、幼若期では、脳のバリア機能が未成熟であるという指摘もあることから、幼若期、成熟期のラットを対象に実験を行った。
結果と考察
幼若期(4-5週齢)、成熟期(8-10週齢)のラットを用いて実験を行った。曝露条件として我が国の携帯電話の通信方式であるPDC(Personal Digital Cellular)変調した周波数1.5GHz電磁界を使用し頭部に対して局所的に急性、亜慢性の曝露を行った。その結果、いずれの条件においても回収された脳髄液中にアルブミンの大量漏出は認められず、偽曝露の条件と同様であった。このことより、本研究の条件下では電磁界の曝露は脳のバリア機能に影響を与えないことが示唆された。
結論
本実験条件においては、電波防護指針以下の電磁界強度において脳のバリア機能に対する生体影響は検出されなかった。これらの結果は、携帯電話の健康リスク評価における基礎的な知見の一つとなることが期待される。

公開日・更新日

公開日
2015-11-20
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200501234C