バングラデシュ及び中国を中心とする地下水のヒ素汚染地域において地下水を(安全な)水道水源とする実現可能性評価に関する研究

文献情報

文献番号
200501224A
報告書区分
総括
研究課題名
バングラデシュ及び中国を中心とする地下水のヒ素汚染地域において地下水を(安全な)水道水源とする実現可能性評価に関する研究
課題番号
H16-健康-067
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
徳永 裕司(国立医薬品食品衛生研究所 環境衛生化学部)
研究分担者(所属機関)
  • 国包 章一(国立保健医療科学院 水道工学部)
  • 横田 漠(宮崎大学 工学部)
  • 大野 浩一(北海道大学大学院 工学研究科)
  • 山内 博(北里大学 医療衛生学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 健康科学総合研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
8,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
近年、地下水のヒ素汚染による大規模な健康障害が報告されている。慢性ヒ素中毒で最も重大な問題は発癌であり、発癌の発生機序、予防対策が重要である。本研究では、バングラデシュ及び中国でヒ素汚染地下水を飲料・炊飯に用いているヒ素患者(家族)を対象に安全な水に切り替えた時の経口的なヒ素摂取量の変化、ヒ素被害の症状の改善の度合い、尿・毛髪中のヒ素変化、尿中8-OHdGの変化を検討した。また、バングラデシュのヒ素除去装置・Gravel Sand Filter(GSF)の処理機能、生成するヒ素汚泥の処理法を検討した。
研究方法
バングラデシュ・チュナカリ村で安全な水供給のために深層管井戸の試掘を行い、安全な水の給水法を検討した。ヒ素被害家族18家族76名の被害調査、飲水量、陰膳方式によるヒ素摂取量調査、尿・毛髪へのヒ素排出量調査並びに発癌マーカーの8-OHdG量を調査した。GSF施設のヒ素除去能力の調査、ヒ素汚泥のセメント固化処分、ヒ素汚泥専用のため池での微生物による自然浄化処理を調査した。中国内蒙古自治区ガンファエン村、山西省山陰県で安全な水使用後、の軽減後、半年、1年、5年目に皮膚症状の無機ヒ素暴露の改善を中心に検証した。
結果と考察
チュナカリ村での試掘により、260フィートまで砂層、それ以降760フィートまでは主に粘土層であった。260フィートから得られた地下水のヒ素濃度は291ppbであり、GSFでの処理で21ppbの安全な水を給水できた。陰膳調査により、炊飯用水・調理用水に、飲料水とは異なるヒ素に汚染されている水を使用している可能性が示唆された。安全なに水供給前のヒ素患者とその家族の尿・毛髪中のヒ素濃度、8-OHdG濃度の間には差がなかった。GSF施設の3年間稼働によるヒ素除去能力の低下があり、改良を加えた。山西省山陰県での5年間の調査で重症者の角化症は改善したが、軽症者は顕著な改善が期待されなかった。
結論
チュナカリ村のヒ素被害家族での継続的な安全な水供給のための管井戸、GSF施設の適切な管理と水の品質の調査、陰膳方式による飲水、調理用食品からヒ素の経口的な暴露の継続調査、ヒ素患者のヒ素症状の軽減化の調査、尿・毛髪へのヒ素排泄の調査、GSF装置から発生するヒ素汚泥の処理法の調査、中国での、安全な水を供給後の更なる長期的な調査が、ヒ素暴露歴は20数年を経過中の本格的な発癌の顕在化までのヒ素による発癌のリスク評価、予防対策に重要となるであろう。

公開日・更新日

公開日
2006-04-18
更新日
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