生活環境におけるレジオネラ感染予防に関する研究

文献情報

文献番号
200501223A
報告書区分
総括
研究課題名
生活環境におけるレジオネラ感染予防に関する研究
課題番号
H16-健康-055
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
吉田 真一(九州大学大学院医学研究院)
研究分担者(所属機関)
  • 江崎 孝行(岐阜大学大学院医学研究科)
  • 宮本 比呂志(佐賀大学医学部)
  • 古畑 勝則(麻布大学環境保健学部)
  • 三宅 正紀(静岡県立大学薬学部)
  • 青木 洋介(佐賀大学医学部)
  • 田口 善夫(天理よろづ相談所病院呼吸器内科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 健康科学総合研究
研究開始年度
平成15(2003)年度
研究終了予定年度
平成17(2005)年度
研究費
19,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
1) RAPD-PCR法とPFGE法を比較し、どちらが有用な分子疫学的解析であるかを検討する、2) レジオネラの病原因子の探索と病原性発現の機序を知る、3) 迅速検出法と患者の迅速診断法を開発する、 4) レジオネラ感染に対する感受性の性差の原因を解明する、5)塩素消毒のpHによる効果のちがい、6)臨床疫学的解析に基づくレジオネラ感染症の確率的診断法の開発、7) 有効な診断、治療方法を明らかにする。
研究方法
2) レジオネラの分離・同定には細菌学的手法を用い、細胞への感染実験、細胞内増殖実験には形態学的、分子遺伝学的手法、病原性の研究には老齢マウスへの感染実験を行った。迅速検出、迅速診断のためにDNA チップと抗原チップを開発した。臨床疫学的研究はアンケート調査を行うと共に、臨床的パラメーターのレジオネラ感染症診断寄与度について解析を行った。
結果と考察
1. RAPD-PCR法は感染源、感染経路の特定に有用な分子疫学的解析である。2. i)代謝の研究:2D-DIGE解析により同定された蛋白質の約8割が対数増殖後期にて発現が増加していた。ii)病原因子の研究:icmN遺伝子は鞭毛の発現を支配し、菌の上皮細胞への定着・侵入に関連すること、L. dumoffii のtraC遺伝子は上皮細胞内への侵入を支配していることを明らかにした。3. 血清型1から6までの標準株のLPS抗原を精製して蛍光ビーズに固定し、一回の検査で6種類の抗体を計測できるマルチプレックス蛍光ビーズアレイ法を作成した。4. 雄マウスのマクロファージは雌マウスのマクロファージよりもレジオネラの増殖を許す傾向にあった。5. 塩素の殺菌能は高pH になるほど低下した。6. Bayes 解析による診断確率の算出法について検討した。臨床疫学的診断手法は、客観性・再現性において優れており、短時間に多数の健康被害状況をスクリーニングするに際し有用であると思われる。7. 診断については迅速性に優れた尿中抗原検査が普及し、治療については奏効性や安全性の面でキノロン系薬の普及が覗えた。
結論
環境中のレジオネラの生態、病原性についての新しい知見、迅速・網羅的検査法の開発、予防、診断、治療に関する知見が得られ、循環濾過式浴槽や水冷式空調冷却塔などを感染源とする生活環境におけるレジオネラ感染を予防するために基礎、応用の両面から寄与できた。

公開日・更新日

公開日
2006-07-13
更新日
-

文献情報

文献番号
200501223B
報告書区分
総合
研究課題名
生活環境におけるレジオネラ感染予防に関する研究
課題番号
H16-健康-055
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
吉田 真一(九州大学大学院医学研究院)
研究分担者(所属機関)
  • 江崎 孝行(岐阜大学大学院医学研究科)
  • 宮本 比呂志(佐賀大学医学部)
  • 古畑 勝則(麻生大学環境保健学部)
  • 三宅 正紀(静岡県立大学薬学部)
  • 青木 洋介(佐賀大学医学部)
  • 田口 善夫(天理よろづ相談所病院呼吸器内科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 健康科学総合研究
研究開始年度
平成15(2003)年度
研究終了予定年度
平成17(2005)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は生活環境におけるレジオネラ感染を予防するために、1) レジオネラの自然界における分布と生態を明らかにする、2) レジオネラの性質とくに病原性の機序とその多様性を知る、3) 環境中および臨床検体からのレジオネラ迅速検出法と患者の迅速診断法を開発する、 4) レジオネラ感染に対する生体防御の破たんとその病態を解明する、5) レジオネラ感染症の臨床疫学的データを蓄積し、有効な診断、治療方法を明らかにするとともに、臨床疫学的解析に基づくレジオネラ感染症の確率的診断法を開発する、ことを目的とした。
研究方法
レジオネラの分離・同定には細菌学的手法を用い、細胞への感染実験、細胞内増殖実験には形態学的、分子遺伝学的手法、病原性の研究にはマウス個体、細胞への感染実験を行った。迅速検出、迅速診断のためにDNA チップと抗原チップを開発した。臨床疫学的研究はアンケート調査を行うと共に、臨床的パラメーターのレジオネラ感染症診断寄与度について解析を行った。
結果と考察
温泉水のレジオネラ汚染が高率であることがあらためて示され、特に循環式浴槽でレジオネラを増殖させない消毒法の実施が感染予防に重要であること、中央循環式の給湯設備のレジオネラ除菌には、給湯水の昇温循環運転(75℃で24時間)、その間の末端給湯栓からの放水作業、貯湯槽の清掃、給湯温度を上げて維持管理することが、安価で有用であることを具体的に提供した。L. pneumophila がバイオフィルムを形成し、多核の繊維状菌体となること、その他、細胞内侵入と細胞内増殖に関与する新規遺伝子を発見した。 臨床診断は尿中抗原検出キットの上市により、飛躍的に簡易になり、また確度も高くなった。
結論
生活環境水のレジオネラの菌種、血清型、生菌数を迅速に安価に網羅的に検出する方法の開発はレジオネラ感染予防のために強く望まれていることである。今回の研究で、遺伝子検出法の開発はかなり進んだものの、未だ定量性には難がある。FACSを用いた迅速診断法など、遺伝子に頼らない発想の転換も必要であろう。近年、循環濾過式浴槽に注意が向けられているが、冷却塔水、噴水などの修景水、雑用水などがレジオネラの生息場所、増殖場所であることに変わりはない。今後とも監視を続けることが必要である。

公開日・更新日

公開日
2006-07-13
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200501223C