循環式浴槽における浴用水の浄化・消毒方法の最適化に関する研究

文献情報

文献番号
200501214A
報告書区分
総括
研究課題名
循環式浴槽における浴用水の浄化・消毒方法の最適化に関する研究
課題番号
H16-健康-059
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
遠藤 卓郎(国立感染症研究所 寄生動物部)
研究分担者(所属機関)
  • 八木田健司(国立感染症研究所 寄生動物部)
  • 泉山信司(国立感染症研究所 寄生動物部)
  • 倉文明(国立感染症研究所 細菌一部)
  • 山崎利雄(国立感染症研究所 病原微生物部)
  • 神野透人(国立医薬品食品衛生研究所 環境衛生化学部)
  • 杉山寛治(静岡県環境衛生科学研究所 )
  • 黒木俊郎(神奈川県衛生研究所 微生物部)
  • 福井学(北海道大学 低温科学研究所)
  • 荒井桂子(横浜市衛生研究所 環境微生物)
  • 縣邦雄(アクアス㈱ つくば総合研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 健康科学総合研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
11,700,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
レジオネラの増殖は水と接触する基質に着生するバイオフィルムが汚染巣となっている.レジオネラ汚染防止の要点は換水とシステムの単純化にあり、塩素消毒はいわば緊急避難的な措置である.従って、浴槽の構造は接触面積を減らし、洗浄効果が得られ易い構造でなければならない.この点への理解がない限りレジオネラ対策は困難と考える.
研究方法
当該年度では、浴槽システムの接水面積を計算した.集団感染の発生した施設のKMnO4消費量を推定した.使い捨て型ケーキろ過の性能を評価した.塩素消毒の適用条件の整理、副生成物とL. pneumophila血清群への影響を検討した.遺伝子検査法の有効性の評価を行った.エアロゾル以外の感染経路の検討と浴槽水中での感染性の推移を検討した.抗酸菌の分離を試みた.
結果と考察
接水面積の90%前後は循環系統で占められていた.使い捨て型ケーキろ過のろ材である珪藻土は優れた微粒子除去能を示た.塩素による殺菌は600mV 程度の酸価還元電位が必要である.消毒の悪影響としてL. pneumophila 血清群1の選択増殖に寄与している可能性が指摘された.また、浴室気相にはトリハロメタン濃度が上昇しており(CHCl3:~200µg/m3)、換気が必須である.集団感染のあった入浴施設で推定されたKMnO4消費量は~139.3mg/Lと基準をはるかに超えていた.KMnO4消費量は入浴者数から換算でき、入浴者制限の指標となる.遺伝子検査法の適用の可能性について解説した.宿主アメーバを介した感染の可能性を示した.レジオネラは水中で速やかにアメーバへの感染性を失う.浴槽水から抗酸菌が分離された.
結論
レジオネラの増殖は、浴槽水の有機物汚染 ⇒ 細菌類の繁殖⇒宿主生物の繁殖 ⇒ レジオネラ汚染、という浴槽内のバイオフィルムから派生する問題である.有機物汚染がないか、微生物の繁殖の機会を与えなければ増殖できない.浴場の管理は循環装置の存在を前提として論議されているが、視点を変えた議論が必要である.資源保護の立場から循環式浴槽を評価する向きもあるが、衛生上の安全保障がが前提である.入浴施設が衛生施設の枠を超えてレジャー施設としての価値を求めるのであれば、水質基準や設置基準などは自ずとそれに即したものに改めなければならないと考える.

公開日・更新日

公開日
2006-04-18
更新日
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