微量化学物質によるシックハウス症候群の病態解明、診断、治療対策に関する研究

文献情報

文献番号
200501212A
報告書区分
総括
研究課題名
微量化学物質によるシックハウス症候群の病態解明、診断、治療対策に関する研究
課題番号
H16-健康-054
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
石川 哲(北里研究所病院臨床環境医学センター)
研究分担者(所属機関)
  • 吉野 博(東北大学大学院工学研究科都市建築学専攻)
  • 坂部 貢(北里大学薬学部公衆衛生学)
  • 上山真知子(山形大学地域教育文化学部)
  • 熊野宏昭(東京大学大学院医学系研究科ストレス防御・心身医学)
  • 相澤好治(北里大学医学部公衆衛生学)
  • 糸山泰人(東北大学大学院医学系研究科神経科学講座神経内科学)
  • 木村 穣(東海大学医学部基礎医学系)
  • 吉田晃敏(旭川医科大学眼科学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 健康科学総合研究
研究開始年度
平成15(2003)年度
研究終了予定年度
平成17(2005)年度
研究費
14,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
厚生労働科学研究班によるシックハウス症候群(SHS)の病態解明、診断治療法の開発に関する研究は平成12年度より開始された。平成14年度にはそのまとめが行われ、従来不明であった病態生理学的異常の解明に関する研究が多領域の専門家により遂行され徐々に原因の解明が行われた。その詳細は夫々の年度及び通年の研究報告書に詳述されている。
本研究班は、低用量環境化学物質の生体への影響をSHSを中心に研究するものであり、診断設定に向け、他覚的検査法の開発、疫学、環境化学物質気中濃度測定、検診、治療、対策を行うことを目的とする。
研究方法
研究は、医学、化学、疫学、建築学等の学際的専門家により行われた。症状は、QEESI及び臨床検査:脳血流、瞳孔反応、滑動性眼球追従運動、輻輳調節機能、視覚コントラスト感度、重心動揺、心電図R-R間隔、嗅覚、負荷試験を加味したNIRO テスト、functional MRIによる神経系検査を行った。これにより患者の状態を数値化出来た。長期に亘る気中濃度測定結果と臨床データを対比し研究を行った。このような自覚的及び他覚的結果の対比による研究は世界に類がない。
結果と考察
診断には上述の中枢及び末梢の自律神経系を中心とする検査が役立った。症状数値化にはQEESIの症状スケールと化学物質過敏スケールとが有用であった。少数ではあるが出生時にシックハウス内で成長、思春期に到達した患者で神経学的にサブクリニカルレベルの異常を有する患者が存在した。今後、追跡調査が必要である。
結論
QEESI、臨床面では他覚的検査結果から患者の状態を数値化することが出来た。診断には脳神経機能を中心とする検査法が有効であった。治療法は、本人の周囲から化学物質を出来るだけ除去し、忌避することが大切で、建築面からの物質削減が大切である。換気などの対策を行った。早期に対策をとれば治癒することがわかった。

公開日・更新日

公開日
2006-10-12
更新日
-

文献情報

文献番号
200501212B
報告書区分
総合
研究課題名
微量化学物質によるシックハウス症候群の病態解明、診断、治療対策に関する研究
課題番号
H16-健康-054
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
石川 哲(北里研究所病院臨床環境医学センター)
研究分担者(所属機関)
  • 吉野 博(東北大学大学院工学研究科都市建築学専攻)
  • 坂部 貢(北里大学薬学部公衆衛生学)
  • 上山真知子(山形大学地域教育文化学部)
  • 熊野宏昭(東京大学大学院医学系研究科ストレス防御・心身医学)
  • 相澤好治(北里大学医学部公衆衛生学)
  • 糸山泰人(東北大学大学院医学系研究科神経科学講座神経内科学)
  • 木村 穣(東海大学医学部基礎医学系)
  • 吉田晃敏(旭川医科大学眼科学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 健康科学総合研究
研究開始年度
平成15(2003)年度
研究終了予定年度
平成17(2005)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
シックハウス症候群(SHS)と診断された症例には化学物質過敏症(MCS)が含まれる。我々はこれを東京及び仙台塩竈地区を対象として過去5年間(本研究以前)研究した。臨床検査のデータが両地区で比較が出来るよう検診の際すべての臨床機器を東京から現地に運び患者検査を行った。目的はSHS、MCSの病態解明である。
研究方法
トルエン微量吸入による脳の局所賦括化をfMRIで追求した。有機リンと関連するNTE遺伝子につき検討した。患者の睡眠中の心拍変動を検討した。抗酸化能力につき研究した。NIRO(近赤外線酸素モニター法)による脳表面の血流を起立、起座位で前頭葉、後頭葉で測定した。小児の知能検査をWISC-IIIを用いた。シックハウス家の気中濃度を測定し患者を研究した。眼循環も研究した。北里における106名のMCS患者の疫学調査を行った。
結果と考察
fMRIでMCS患者を見るとトルエンでは変化した。患者は脳幹、小脳、間脳、大脳辺縁系付近で強い賦括があった。リンパ球におけるNTE酵素活性は有機リン中毒患者ではむしろ上昇した。対立遺伝子を含むハプロタイプTCC頻度が健常者集団に比べ患者では有意に増加した。MCS患者の心拍変動は睡眠時変化をした。とくにHF成分は低値でLF/HF比は上昇した。患者群ではPAO値が低く抗酸化能力が低い。NIROによる前頭葉及び後頭葉の血流研究ではSHSでは起立、起座による変化が正常者より大きい。SHS患者27例WISC-IIIの研究では言語性IQに比べ動作性IQが有意差を持って低下していた。検診の結果から低下している児童はコントラスト感度等の視覚系異常が疑われた。過去5年間(本研究以前を含む。)の気中濃度測定結果ではSHS患者は一般住宅よりも高濃度のホルムアルデヒド(HCHO)やVOC等に汚染されていた。SHS患者では中心窩脈絡膜血流量が有意に低下していた。さらにHCHOに症状を示す学生の視神経乳頭血流量は低下していた。他覚的臨床検査の陽性率が患者では有意に高く滑動性眼球追従運動が85.8%、瞳孔反応69.8%、視覚周波数とく48.2%神経反射51.9%と陽性率がMCSでは高い。
結論
6年間(本研究以前を含む。)にわたる研究からSHSの病態には、微量の化学物質曝露による生体の過敏反応がある。基本症状は神経症状であり早期に対策をとれば治癒させることが出来る。

公開日・更新日

公開日
2006-11-30
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200501212C