建築物におけるねずみ・害虫等の対策に関する研究

文献情報

文献番号
200501210A
報告書区分
総括
研究課題名
建築物におけるねずみ・害虫等の対策に関する研究
課題番号
H16-健康-052
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
田中 生男(財団法人日本環境衛生センター 環境生物部)
研究分担者(所属機関)
  • 津田 良夫(国立感染症研究所 昆虫医科学部)
  • 冨田 隆史(国立感染症研究所 昆虫医科学部)
  • 金山 彰宏(前横浜市衛生研究所・横浜市)
  • 平尾 素一(環境生物コンサルティング・ラボ)
  • 元木  貢(アペックス産業株式会社)
  • 谷川  力(イカリ消毒技術研究所)
  • 武藤 敦彦(財団法人日本環境衛生センター 環境生物部)
  • 新庄 五朗(財団法人日本環境衛生センター 環境生物部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 健康科学総合研究
研究開始年度
平成15(2003)年度
研究終了予定年度
平成17(2005)年度
研究費
6,400,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
建築物衛生法に基づく、ねずみ・害虫等の新しい防除体系を確立するため、基礎研究を基盤にして生息密度調査法、維持管理基準等を設定し、これらを組み入れた合理的で環境に配慮した対策法、すなわちIPM(総合的有害生物管理)理念による対策法を提案する。
研究方法
1)標準的、実用的な生息密度調査法確立のため、いくつかのトラップを建築物内等に設置し、捕獲効率や利便性について検討した。2)同一建築物内でトラップにより捕獲された害虫等の数を指数化し、同時に聞き取りによって、利用者が受ける出没感との関連を検討した。3)殺虫剤抵抗性に関し、分子遺伝学的手法及び生物検定法によって野外集団を用いて検討した。多用されているゴキブリ用ベイト(毒餌)の有効性を調査した。4)過去に従来の方法で防除を実施した建築物において、IPM手法で再び防除を実施し、両者の得失について比較検討した。
結果と考察
1)ライトトラップでは飛翔性昆虫が、粘着性トラップでは歩行性害虫の捕獲が多かった。ネズミは生息密度を判断できる捕獲数を得るのは困難であったが、糞、足跡などの証跡が指標として利用できることが分かった。2)チャバネゴキブリ、チカイエカ(アカイエカ群)、チョウバエ、ネズミで捕獲指数と出没感に関連が見られ、これらが維持管理基準の設定に利用できると考えられた。3)ピレスロイドの抵抗性系統では、DNAの遺伝子配列に変異が見られた。アカイエカ群とチャバネゴキブリの野外集団から広範に抵抗性の変異が見つかった。市販ベイトの効力には製品間で有効性に差が見られた。4)IPMによる対策は薬剤量を減少させることで環境影響減らし、適切な対応ができるようになったが、作業者の負担や経費の増大が見られた。
結論
1)建築物内の生息数調査には、少なくとも害虫ではライトトラップと粘着トラップの双方が、また、ネズミでは証跡を指標として使用する必要がある。2)捕獲指数と利用者の出没感から維持管理基準を設定できる。3)抵抗性問題等を十分考慮した薬剤の適正使用が必要である。4)環境影響を減少させるためにはIPM施工が必要である。

公開日・更新日

公開日
2006-04-18
更新日
-

文献情報

文献番号
200501210B
報告書区分
総合
研究課題名
建築物におけるねずみ・害虫等の対策に関する研究
課題番号
H16-健康-052
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
田中 生男(財団法人日本環境衛生センター 環境生物部)
研究分担者(所属機関)
  • 津田 良夫(国立感染症研究所 昆虫医科学部)
  • 冨田 隆史(国立感染症研究所 昆虫医科学部)
  • 金山 彰宏(前横浜市衛生研究所 医動物室・横浜市)
  • 平尾 素一(環境生物コンサルティング・ラボ)
  • 元木  貢(アペックス産業株式会社)
  • 谷川  力(イカリ消毒技術研究所)
  • 武藤 敦彦(財団法人日本環境衛生センター 環境生物部)
  • 新庄 五朗(財団法人日本環境衛生センター 環境生物部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 健康科学総合研究
研究開始年度
平成15(2003)年度
研究終了予定年度
平成17(2005)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
ねずみ・害虫等の新しい防除体系確立のため、基礎研究を行って生息密度調査法、維持管理基準等を設定し、これらを組み入れた合理的で環境に配慮した対策法=IPM(総合的有害生物管理)理念による対策法を提案する。
研究方法
1)主要防除対象種を把握するためトラップを用いて建築物内で捕獲調査を行った。2)標準的、実用的な生息密度調査法確立のため、既存トラップ等の有用性の検討を行った。3)トラップによる捕獲調査と利用者への聞き取り調査から両者の関連を検討した。4)分子遺伝学的手法及び生物検定法によって殺虫剤抵抗性や薬剤の有効性を調査した。5)米国のIPM情報を現地調査等で収集した。従来法とIPM手法で防除した結果を比較検討した。6)委員会で標準的生息密度調査法、維持管理基準について議論し、これらを組み入れたIPMによる対策法を提案した。
結果と考察
1)主要防除対象種はチャバネゴキブリ、チカイエカ、ネズミ類、コバエ類であった。2)ライトトラップでは飛翔性昆虫が、粘着性トラップでは歩行性害虫の捕獲が多かった。ネズミは糞、足跡など証跡による生息調査法を設定した。3)チャバネゴキブリ、チカイエカ、チョウバエ、ネズミで捕獲指数と出没感に関連が見られ、これらが維持管理基準の設定に利用できると考えられた。4)ピレスロイドの抵抗性系統ではDNAの遺伝子配列に変異が見られた。アカイエカ群とチャバネゴキブリでは野外集団に広範にピレスロイド抵抗性が広がっていた。5)IPMによる対策は薬剤量を減少させ、適切な対策が取れるようになったが、作業者の負担や経費増大が見られた。6)標準的生息密度調査法、維持管理基準、IPM施工法を設定できた。
結論
1)建築物内の主要防除対象種は絞って良い。2)生息数調査には専門家による目視及び害虫ではライトトラップと粘着トラップの双方、ネズミでは証跡を生息確認の指標として使用する必要がある。3)捕獲指数と利用者の出没感から維持管理基準を設定できる。4)抵抗性問題等を十分考慮した薬剤の使用が必要である。5)環境影響の軽減にはIPM施工が必要である。6)IPM実施には標準的調査法、維持管理基準の取り込みと普及活動が欠かせない。

公開日・更新日

公開日
2006-04-18
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200501210C

成果

専門的・学術的観点からの成果
1)殺虫剤抵抗性調査にDNA遺伝子変異をみる分子診断法が開発された。2)屋外でもチカイエカ成虫が生息していることが明らかになった。3)酵母を利用した二酸化炭素トラップの開発とコバエ類を採集するための設置型小型トラップの開発に見通しがついた。4)チャバネゴキブリとアカイエカ群にピレスロイド抵抗性が広がっていることが明らかになった。
臨床的観点からの成果
 薬剤処理を中心に進める防除法が見直されたことで、薬剤によって身体的・精神的影響を受ける人が減少する。維持管理基準が設定され、防除から管理へと転換されることで、建築物内における害虫等の生息密度と快適性に対する考え方がよい方向に変わっていく。
ガイドライン等の開発
標準的発生調査法、防除の目標となる維持管理基準(許容限度)を組み入れた、建築物衛生法におけるネズミ・害虫等の対策に関する新しい考え方に基づく具体的な指針を、IPM(総合的有害生物管理)による対策として提案できた。
その他行政的観点からの成果
建築物衛生法のねずみ・害虫等の対策に、初めて維持管理基準を取り入れることができ、防除目標が明らかにできた。維持管理基準を快適基準、警戒基準、措置基準に分け、それぞれの持つ意味や行うべき措置方法を示したことで、管理権原者、防除監督者、管理者、利用者、防除従事者などの対策における役割分担を明確にした。 
その他のインパクト
殺虫剤・殺そ剤は防除に不可欠であるが、過度の使用が問題を引き起こしている。その結果、殺虫剤等の使用批判に直面し、十分な防除効果が上げられなくなっているPCOなどの防除従事者に対して、有効で環境影響を軽減し、かつ理論的に適切な対策法の提案ができた。また、すべての害虫等をゼロにしなければならないという意識から起きる様々な弊害から脱却できる。

発表件数

原著論文(和文)
4件
原著論文(英文等)
8件
その他論文(和文)
2件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
14件
学会発表(国際学会等)
8件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2015-11-20
更新日
-