難病患者在宅医療における情報ネットワーク作りに関する研究

文献情報

文献番号
199700132A
報告書区分
総括
研究課題名
難病患者在宅医療における情報ネットワーク作りに関する研究
課題番号
-
研究年度
平成9(1997)年度
研究代表者(所属機関)
北洞 哲治(国立大蔵病院)
研究分担者(所属機関)
  • 大原信(国立大蔵病院)
  • 鈴木紘一(国立病院東京医療センター)
  • 日比紀文(慶応義塾大学病院)
  • 渡辺憲明(北里研究所病院)
研究区分
厚生科学研究費補助金 行政政策研究分野 厚生科学特別研究事業
研究開始年度
平成7(1995)年度
研究終了予定年度
平成10(1998)年度
研究費
1,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
潰瘍性大腸炎、クローン病は若年発症する傾向にあり、本症患者は若年者に多くその社会生活の確保はQOLの視点よりも大切なテーマである。両疾患は再燃することが多く、また、その治療も煩雑であり、患者は日常生活の中で種々の問題を抱えていると考えられる。これらの問題を解決し、活発な社会生活を支えるためには、在宅での治療を円滑に行うことが必要となり、そのための在宅での相談、指導の情報システムが要求される。その結果、早期の再燃治療も可能となり、入院加療の減少、社会生活の維持が可能となると期待される。
研究方法
1.本院ホームページ上に潰瘍性大腸炎&クローン病通信を開設し、患者・医療関係者を対象に情報を可能な限り公開して行く。2.電子メールアドレスを公開し、随時メールによる相談・質問を受け付ける。3.全国規模の炎症性腸疾患診察医名簿を作成し、全国ネットワーク作りの第一歩とする。
結果と考察
結果=1.本院ホームページ上に潰瘍性大腸炎&クローン病通信を開設し、この1年間に、免疫学的研究成果、生活上の注意点、新薬の作用・副作用情報、食餌療法の注意点、などの情報を広く公開した。2.電子メールアドレスを公開し、患者、医療関係者からのメールを随時受け付け、できる限り早く、正確に返事を出した。
医療機関内情報ネットワーク作りの第一歩として、全 国規模の約100名からなる、炎症性腸疾患診察医名簿を作成した。(すべての掲載医には事前に趣旨の説明と、同意を書面で取った。)
考察=難治性慢性疾患は長期の継続した治療を要するため、入院加療を必要としない病勢においても、在宅治療の質的向上は重要な課題であり、今後の課題である.特に、原因不明で根治的治療が確立されていない現状では最新の治療法の選択や専門医の知識と経験が要求される.しかしながら、患者および一般臨床医はこれらの情報を入手するのが困難であり、十分活用できないため、必ずしも有効かつ適切な対処が迅速になされているとはいえない.また、遠隔地においては遠くの専門医を受診することもままならない。この数年、インターネットに代表される情報ネットワークの整備は急速に進み、パソコン通信の使用環境は、通信末端の廉価化、公衆電話のISDN化が進んだ現在急速に普及している.また、国立病院はホスプネットが開設され、全ての国立病院、厚生省がひとつにつながり、インターネット環境が整いつつある.一方、炎症性腸疾患患者は若年者が多く、パソコン通信やインターネットに既に接している者も多い.今、ホームページ上に潰瘍性大腸炎&クローン病通信を開設したが、最新情報の提示等については、よりリアルタイムに情報の伝達が可能であった.また質問を随時受けつけたことにより、患者のみならず、医療関係者からも質問があり、我々の予想を遙かに超えたスピードでインターネットが普及していることが実感された.潰瘍性大腸炎&クローン病通信を含む国立大蔵病院のホームページは開設以来約1年で1万件をこえるアクセスがあり、これは我々の予想を遥かに上回る数字であった。この一年間で、免疫学的見地よりの研究成果、食事療法について、新薬の作用・副作用、病気の再燃について、などの情報伝達と、全国レベルの炎症性腸疾患診察医の名簿を作成することができた。名簿作成にあたっては全ての医師に書面で趣旨を説明し、名簿作成および掲載に賛同していただけた医師を対象としたがほぼ全員の方の賛同が得られ、次のステップへの励みとなった。
問題となったのは、前年度の報告書でも述べたように、インターネットがあまりにも急速に普及しており、内容の信頼性を証明できるシステムが整備されていないことであった.これはインターネットを情報の伝達媒体として考えたとき、医療情報については今後も大きな問題となろう。現時点では、一般的な情報の伝達に留まらざるを得ず、コンセンサスを得られていない事項に対しては、そのことも正確に記載するように努めた。また誤解のない平易な文章になることに注意を要した。
また、病院間のネットワークでは、今後はネットワークの輪を広げるとともに、何らかの統一したフォーマットを作成し、患者情報を伝達する必要性があると考えられた。ネットワークセキュリティについては、国内・国外における技術の進展が目覚しく、今後とも新しい技術について検討を続ける必要がある。
結論
1. 難病患者の在宅医療にインターネット上のホームページを用いた情報伝達を行い、患者には好評であり一定の成果が得られた。2. 個々の情報については、電子メールを用いたがセキュリティの問題に課題を残した。3. 情報ネットワーク作りの第一歩として、炎症性腸疾患診察医名簿を作成した。

公開日・更新日

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研究報告書(紙媒体)