健康危機管理に対応した地域医療機関の画像ネットワークの構築

文献情報

文献番号
199700131A
報告書区分
総括
研究課題名
健康危機管理に対応した地域医療機関の画像ネットワークの構築
課題番号
-
研究年度
平成9(1997)年度
研究代表者(所属機関)
岸野 文一郎(りんくう総合医療センター市立泉佐野病院)
研究分担者(所属機関)
  • 堀信一(りんくう総合医療センター市立泉佐野病院)
  • 黒田知純(大阪府立成人病センター)
  • 小塚隆弘(大阪府立羽曳野病院)
研究区分
厚生科学研究費補助金 行政政策研究分野 厚生科学特別研究事業
研究開始年度
平成9(1997)年度
研究終了予定年度
-
研究費
5,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は、 航空機事故や広域災害などの緊急事態に即応できる診療システムを開発することである。 阪神大震災時の外傷患者やO-157による食中毒患者の大量発生時に地域の医療機関での混乱は緊急事態発生時の医療機関の対応策が検討されていなかったのが一因であった。 通常診療業務と異なるこれらの事態には、 これを想定した診療システムをあらかじめ構築されていなければならない。 近年新しく設置される病院ではHIS-RIS-PACSシステムが導入されることが多く、 診療システムがこれらのネットワークシステムに依存している。 そこで緊急時用の診療ソフトウエアーの開発が必要である。 また、 病病連携を軸とした患者データ伝送のためのネットワークの構築は、 専門知識の有効利用により的確な早期治療開始のためにぜひ必要である。 本研究は、 医用画像のデジタル化を推進し必要な時間と場所で高品位の画像をモニター上で観察できる環境を作り、 この環境を異なる病院間でも実現し効率的な医療を行える基盤整備をまず行い、 最終的に病院間の相互協力体制を作り健康危機管理に役立てるものである。
研究方法
まず、 本研究のネットワークの根幹となるりんくう総合医療センターの画像情報システムであるPACSの構築を行う。 次に、 ネットワークに参加する病院にそれぞれサーバーを設置し、 ISDN回線で接続し画像を転送できる環境を整える。 次にこれらのサーバー間で画像を転送する方式を決定し、 健康危機管理に必要なソフトウエアーを開発し、 診療協力をネットワークを介して行える環境を作る。
結果と考察
まず、 本研究のネットワークの根幹となるりんくう総合医療センターのPACSの完成を目指し、 システムの構築を行っている。 現在までに構築したシステムは、 すべての放射線診断装置から発生する画像をデジタル保管できるサーバーを有し、 国際標準となるDICOM3の通信プロトコールにより画像保管管理を行う。 画像データはCD-Rを用いて非圧縮データとして1年半、 1/10圧縮データとして2年、1/300として5年のオンライン保管が行える。 これらのサーバーに放射線読影室診断モニター、 外来病棟画像参照端末、 オーダリング端末からそれぞれアクセスし放射線画像を観察できる。 診断所見は1/300圧縮画像とともにファイリングされ、 5年間オンラインで参照可能である。 現在このPACSは実際に運用され、 モニター上に画像を展開し読影業務に用いているが、 画像観察用ソフト、 症例ファイリングソフトなどを継続して開発中である。 りんくう総合医療センターで現在運用中のPACSは、 完全に自動的に放射線画像をデジタル保管管理を行っており、 半年の運用経験の中でシステム停止などのエラーは起こっておらず、 本研究の根幹として十分に機能している。 このシステムは実験的な運用ではなく、 実際の診療に欠かせないものとなっており、 以後の研究を進めるうえで大きな貢献をするものと考えている。
ネットワークに参加する病院にそれぞれサーバーを設置し、 りんくう総合医療センターのサーバーとISDN回線で接続し、 お互いのサーバーにアクセスできる画像通信ネットワークを完成させた。 このネットワークにより画像転送を行いながら病院間で同一画像を観察して討議できる環境が整えられた。
地域災害などの緊急時に上述のネットワークを活用するためには、 病院情報システム、 放射線情報システム、 放射線科PACSと連携したソフトウエアーが必要で、 かつ緊急時に想定される特殊状況を分析し、 病院間での相互協力にはどのような要件が満たされなければならないかを調査する予定である。 これらの分析の後に本研究の最終目的である健康危機管理に対応した地域医療機関の画像ネットワークの構築のためのソフトウエアーを開発し、 実験的な運用を始める予定である。 この画像ネットワークの為に用いたハードウエアーおよび基本ソフトウエアーは汎用性のあるコンピューターシステムを利用しており、 当研究により確立された健康危機管理のためのネットワークは他の医療機関においても直ちに利用できる一般性をもっており、 全国的なネットワーク展開も可能である。 本研究で構築される病院間画像ネットワークシステムは健康危機管理システムとして今後重要な役割を果たすものと考えている。
結論
本研究の根幹となるりんくう総合医療センターのHIS-RIS-PACSの構築を行い、 放射線画像すべてのデジタル管理の下に、 実際の診療で運用することができた。
ネットワークに参加する病院にそれぞれ画像サーバーを設置し、 ISDN回線で接続し画像を転送できる環境を整備した。
現在、 このネットワーク上で動く健康危機管理を行うソフトウエアーを開発中で、 その運用について模索中である。

公開日・更新日

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更新日
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