口腔疾患、特に歯周疾患に及ぼす煙草煙の悪影響とその対策に関する研究

文献情報

文献番号
200501180A
報告書区分
総括
研究課題名
口腔疾患、特に歯周疾患に及ぼす煙草煙の悪影響とその対策に関する研究
課題番号
H16-健康-017
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
雫石 聰(大阪大学大学院歯学研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 埴岡 隆(福岡歯科大学歯学部)
  • 瀬戸 晥一(鶴見大学歯学部)
  • 奥田 克爾(東京歯科大学)
  • 川口 陽子(東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科)
  • 石井 拓男(東京歯科大学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 健康科学総合研究
研究開始年度
平成15(2003)年度
研究終了予定年度
平成17(2005)年度
研究費
3,150,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
煙草煙暴露が口腔疾患、特に歯周疾患に及ぼす悪影響について、疫学調査、大規模疫学データの解析および基礎研究を行う。また、喫煙と口腔疾患との健康情報調査や経済分析を行い、煙草煙暴露による口腔疾患への影響を多面的に解明することを目的とした。

研究方法
成人を対象に受動および能動喫煙の歯周疾患へのリスクとその唾液バイオマーカーに及ぼす影響について調べた。全国調査のデータを利用し、歯科疾患と喫煙との関連性を解析した。また、地域住民や来院患者を対象に、喫煙と歯肉メラニン色素沈着の関係や喫煙が口腔粘膜疾患に及ぼす影響を検討した。一方、歯周病細菌の内毒素とニコチンをマウスに作用させ、サイトカイン産生に及ぼす影響を調べた。健康情報調査として、新聞に掲載された煙草と口腔疾患に関する記事を分析した。さらに、全国統計データを基に歯周疾患医療費における喫煙による超過医療費を推計した。

結果と考察
喫煙状態を唾液コチニン量で規定したところ、2年間の歯周病進行リスクに対しては、受動喫煙では2.2、能動喫煙では2.3のオッズ比を示した。また、喫煙に曝露した者では唾液中の数種の歯周病関連バイオマーカーに有意の変動がみられた。受動喫煙による子供の歯肉メラニン色素沈着のオッズ比は5.6で有意であった。全国調査の解析では、現在喫煙者は有意に高い喪失歯数と歯周疾患の有所見者率を示し、子供の未処置齲蝕保有者は有意に高い受動喫煙の割合を示した。また、1日20本以上の喫煙、30年以上の喫煙期間が口腔粘膜疾患とのリスクとして高く関与していることが示された。マウスへのニコチン投与により血清IL-6、IL-10、IFN-γのレベルは有意に上昇したが、TNF-αは低下を示した。12年間の煙草煙暴露と口腔疾患に関する記事数は計173件で、疾患別にみると歯周疾患および口腔癌の記事が多かったが、その健康情報の内容は量的質的にみて十分ではなかった。また、平成13年度から15年度の歯周疾患医療費における喫煙の超過医療費とその割合は、約1,300億円から1,500億円であり、約20%と推計された。
結論
受動喫煙を含む煙草煙は生体に種々の影響を及ぼし、歯周疾患をはじめとして、口腔粘膜疾患、歯肉メラニン色素、歯の喪失などの口腔疾患のリスクとなることが明らかにされた。しかし、これらに関する健康情報の提供は十分とはいえず、また、喫煙が歯周疾患医療費に影響を及ぼすことが示され、さらなる知識の普及と禁煙の推進が必要であると考えられた。

公開日・更新日

公開日
2006-04-18
更新日
-

文献情報

文献番号
200501180B
報告書区分
総合
研究課題名
口腔疾患、特に歯周疾患に及ぼす煙草煙の悪影響とその対策に関する研究
課題番号
H16-健康-017
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
雫石 聰(大阪大学大学院歯学研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 埴岡 隆(福岡歯科大学歯学部)
  • 瀬戸 皖一(鶴見大学歯学部)
  • 奥田 克爾(東京歯科大学)
  • 川口 陽子(東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科)
  • 石井 拓男(東京歯科大学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 健康科学総合研究
研究開始年度
平成15(2003)年度
研究終了予定年度
平成17(2005)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
煙草煙暴露が口腔疾患に及ぼす悪影響について、疫学調査、大規模疫学データの解析および基礎研究を行う。また、喫煙と口腔疾患との健康情報調査や経済分析を行い、煙草煙暴露による口腔疾患への影響を多面的に解明し、喫煙対策をさらに推進するための基礎資料を得ることを目的とした。
研究方法
成人を対象に受動および能動喫煙の歯周疾患へのリスクとその唾液バイオマーカーに及ぼす影響について調べた。全国調査のデータを利用し、歯科疾患と喫煙との関連性を解析した。また、地域住民や来院患者を対象に、喫煙が歯肉メラニン色素沈着や口腔粘膜疾患に及ぼす影響を検討した。一方、歯周病細菌の内毒素とニコチンをマウスに作用させ、サイトカイン産生に及ぼす影響を調べた。健康情報調査として、新聞に掲載された煙草と口腔疾患に関する記事を分析した。さらに、全国統計データを基に歯周疾患医療費における喫煙による超過医療費を推計した。
結果と考察
喫煙状態を唾液コチニン量で規定したところ、2年間の歯周病進行リスクに対しては、受動喫煙では2.2、能動喫煙では2.3のオッズ比を示し、いずれも有意であった。、喫煙に曝露した者では唾液中の数種の歯周病関連バイオマーカーに有意の変動がみられた。受動喫煙による子供の歯肉メラニン色素沈着のオッズ比は5.6で有意であった。全国調査の解析では、現在喫煙者は有意に高い喪失歯数と歯周疾患の有所見者率を示し、子供の未処置齲蝕保有者は有意に高い受動喫煙の割合を示した。口腔粘膜疾患有病リスクとして喫煙や飲酒習慣が有意であり、特に、Brinkman指数との間には量-反応関係が見られた。マウスへのニコチン投与により血清IL-6、IL-10、IFN-γのレベルは有意に上昇したが、TNF-αは低下した。12年間の煙草煙暴露と口腔疾患に関する記事数は計173件で、その健康情報の内容は量的質的にみて十分ではなかった。また、歯周疾患医療費における喫煙の超過医療費とその割合は、それぞれ約1,300億円から1,500億円および約20%と推計された。
結論
受動喫煙を含む煙草煙は生体に種々の影響を及ぼし、歯周疾患、口腔粘膜疾患、歯肉メラニン色素沈着、歯の喪失などの口腔疾患のリスクとなることが明らかにされた。しかし、これらに関する健康情報の提供は十分とはいえず、また、喫煙が歯周疾患医療費に影響を及ぼすことが示され、さらなる知識の普及と禁煙の推進が必要であると考えられた。

公開日・更新日

公開日
2006-04-18
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2006-11-28
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200501180C

成果

専門的・学術的観点からの成果
煙草煙暴露が口腔疾患、特に歯周疾患に及ぼす悪影響について、疫学調査、大規模疫学データの解析および基礎研究し、また、喫煙と口腔疾患との健康情報調査や経済分析を行い、煙草煙暴露による口腔疾患への影響を多面的に解析したところ、受動喫煙を含む煙草煙は生体に種々の影響を及ぼし、歯周疾患をはじめとして、口腔粘膜疾患、歯肉メラニン色素沈着、歯の喪失などの口腔疾患のリスクとなることが明らかにされた。これらの結果はJ. Clin. Periodontol.やPediatricsなど国際専門誌に掲載された。
臨床的観点からの成果
能動喫煙が歯周疾患のリスクになるのみならず受動喫煙もま同疾患のリスクになることを示した。さらに、親の喫煙が子供の歯肉メラニン色素沈着や未処置歯う蝕にも影響を及ぼすことを明らかにした。口腔粘膜疾患もまた喫煙と関連性がみられ、生涯喫煙量との間に量ー反応関係が示された。喫煙が歯周疾患のリスクとなるメカニズムとして、炎症性サイトカインなど生体応答や歯周病細菌の面から説明できるデータが得られた。これらの知見は歯科医師や歯科衛生士が臨床面で禁煙指導を推し進める拠り所を与えるものである。
ガイドライン等の開発
日本口腔衛生学会ほか9学会合同による禁煙ガイドライン(Circulation, J., 69, 2005)の作成にあたって、分担研究者の埴岡隆教授が、本研究結果等をもとに、第2章各論 第5節歯科・口腔外科疾患および第3章緊急の問題点 別項ガムタバコの問題について執筆した。
その他行政的観点からの成果
2005年7月21日に、第19期日本学術会議政策提言として、本研究結果をもとに、研究分担者の瀬戸皖一教授が「ガムたばこの蔓延阻止に向けて」-禁煙から脱たばこへ-を提言した。
その他のインパクト
平成16年5月26日?6月4日にWHO神戸センターで行われた世界禁煙デーのイベントに本研究結果を含むポスターを展示した。また、本研究の結果をもとに、平成16年度健康科学総合研究成果等普及啓発事業におけるパンフレットを作成した。その他、本研究の結果である歯周疾患への受動喫煙の影響については、NHKニュース「おはよう日本」(2005年11月1日)で紹介されたほか、他の研究内容についても朝日新聞や読売新聞等の記事として紹介された。

発表件数

原著論文(和文)
4件
原著論文(英文等)
14件
その他論文(和文)
23件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
20件
学会発表(国際学会等)
4件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
2件
その他成果(普及・啓発活動)
2件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Yamamoto, Y., Nishida, N., Tanaka, M., et al.
Association between passive and active smoking evaluated by salivary cotinine and periodontitis
J. Clin. Periodontol. , 32 , 1041-1046  (2005)
原著論文2
Nishida, N., Tanaka, M., Hayashi, N., et al.
Determination of smoking and obesity as periodontitis risks using classification and regression
J. Periodontol. , 76 , 923-928  (2005)
原著論文3
Hanioka, T., Tanaka, K., Ojima, M., et al.
Association of melanin pigmentation in the gingiva of children with parental smoking
Pediatrics , 116 (2) , 186-190  (2005)
原著論文4
埴岡隆, 青山旬, 小島美樹,他
タバコ規制条約における口腔保健医療の役割
口腔衛生会誌 , 55 (2) , 74-82  (2005)
原著論文5
Haresaku, S., Hanioka, T., Tsutsui, A., et al.
Association of lip pigmentation with smoking and gingival melanin pigmentation
Oral Diseases  (2006)
原著論文6
小島美樹,埴岡隆,浜島信之,他
歯科患者の喫煙への継続的介入に伴う禁煙ステージの移動
日本公衆衛生学会雑誌 , 52 (9) , 796-801  (2005)

公開日・更新日

公開日
2015-11-20
更新日
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