食生活等、生活習慣に起因する貧血の実態とその改善へ向けてのポピュレーション戦略の検討

文献情報

文献番号
200501179A
報告書区分
総括
研究課題名
食生活等、生活習慣に起因する貧血の実態とその改善へ向けてのポピュレーション戦略の検討
課題番号
H16-健康-016
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
高橋 孝喜(東京大学医学部附属病院輸血部)
研究分担者(所属機関)
  • 河原 和夫(東京医科歯科大学大学院医療管理学分野)
  • 吉池 信男(独立行政法人国立健康・栄養研究所 健康・栄養調査研究部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 健康科学総合研究
研究開始年度
平成15(2003)年度
研究終了予定年度
平成17(2005)年度
研究費
3,075,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
成長期から若年層の男女を中心に、無理な「ダイエット」を実行している例が少なくない。その結果、医療機関を受診する程の明確な自覚症状はないものの、潜在的な貧血状態にある人の割合が、特に若年から中年の女性を中心に多くなりつつあると推定される。しかし、医療機関に受診する機会が少ない為、その実態は把握されていない。また、身長に対する低体重あるいはそれに関連する栄養素の摂取不足による「潜在的な貧血」の調査が重要と考える。
研究方法
各世代の一般健常女性(すなわち医療機関に受診されていない女性)における「潜在的な貧血」の実態を把握するため、検診時に食餌摂取量、食習慣やダイエットや貧血に関連する自覚症状の有無などに関するアンケート調査を実施。
「潜在的な貧血」の基準を、女性はヘモグロビン値(Hb)11.0g/dl未満とし、男性はHb12.0g/dl未満とした。そして、上記の定義による「潜在的な貧血」の中、平均赤血球容積(MCV)が80未満の場合を小球性貧血とした。
成人女性を対象に、検診データに加え食餌摂取量、種類、頻度、ダイエットなどや月経異常あるいは貧血に関連する自覚症状など、詳細な生活習慣に関するアンケート調査を実施し、「潜在的な貧血」との関連性を調査。
結果と考察
最終年度の調査に、計1304名の女性より回答を得た。
解析した結果、月経のある世代で加齢とともに「潜在的な貧血」者の頻度が増加し、40代でピークに達する。そして、非「潜在的な貧血」と比べ、貧血に関連する症状、さらには月経異常を自覚している者が有意に多い。
この結果は、成人女性の「潜在性の貧血」の原因が栄養素の摂取不足という要因というより、妊娠、出産を経験する世代の女性が本来留意すべき鉄欠乏が主因であることを示している。従って、加齢とともに潜在的に進行し得る鉄欠乏性貧血の対策を再検討すべきである。
結論
本研究により、成人女性の「潜在的な貧血」は月経のある世代で加齢とともに増加し、
40代がピークであること、食生活などの生活習慣との明確な関連性を認めないが、
貧血および月経異常に関する自覚症状が多いことが判明。このような「潜在的な貧血」の実態把握、対策の検討は、国民の長期的な健康増進という観点や、少子化対策としても今日の重要課題である。
鉄欠乏性貧血の防止のための、食品への鉄分の添加を検討するためにも、今後広範囲の調査を実施し、検証していくことが必要である。

公開日・更新日

公開日
2006-04-18
更新日
-

文献情報

文献番号
200501179B
報告書区分
総合
研究課題名
食生活等、生活習慣に起因する貧血の実態とその改善へ向けてのポピュレーション戦略の検討
課題番号
H16-健康-016
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
高橋 孝喜(東京大学医学部附属病院輸血部)
研究分担者(所属機関)
  • 河原 和夫(東京医科歯科大学大学院 医療管理学分野)
  • 吉池 信男(独立行政法人国立健康・栄養研究所 健康・栄養調査研究部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 健康科学総合研究
研究開始年度
平成15(2003)年度
研究終了予定年度
平成17(2005)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
医療機関を受診する程の明確な自覚症状はない「潜在的な貧血」の実態を解明するため、
検診結果および食生活などの生活習慣に関するデータを解析した。
研究方法
(財)福岡労働衛生研究所より提供された匿名化された検診データを中心に検討した。
また、検診女性を対象に、食習慣やダイエットあるいは貧血や月経異常に関連する自覚
症状等に関するアンケート調査を行い、「潜在的な貧血」との関連をしらべた。
「潜在的な貧血」の基準を、女性はヘモグロビン値(Hb)11.0g/dl未満、男性はHb12.0g/dl
未満とし、平均赤血球容積(MCV)80未満を小球性貧血とした。
(倫理面への配慮)
疫学研究の倫理指針を遵守して、非連結可能匿名化された資料を使用し、各個人の
プライバシーを侵害することがないよう配慮した。
結果と考察
「潜在的な貧血」が20代2.2 %、30代7.0%、40代12.3%、50代4.5%と、月経のある
世代の女性で加齢とともに増加し、40代でピークになることが判明した。
「潜在的な貧血」者は、消化器症状や貧血関連症状、さらには月経異常を自覚している
場合が有意に多かった。MCV、鉄、フェリチンが有意に低い上、総蛋白とアルブミンが
有意に低いことから「潜在的な貧血」が低栄養と関連することを確認した。
しかし、食餌摂取量などの食習慣、飲酒、喫煙、運動などの生活習慣やダイエットの
実施率と「潜在的な貧血」との関連性を認めなかった。
上記結果は、成人女性の「潜在性の貧血」が、ダイエット等の影響というより、妊娠、
出産を経験する世代の女性について留意すべき鉄欠乏が主な原因であること、従って、
潜在的な鉄欠乏性貧血の危険性に改めて注目し、対策を再検討すべきことを示している。
結論
 本研究で確認された、「潜在的な貧血」が月経のある世代の成人女性で加齢とともに
増加している事実は、国民の健康増進という観点からも、少子化対策としても、今日の
重要な課題であることを示すものである。また、本研究が限られた検診データの解析に
基づくもので一定のバイアスがあり得ること、そして、中学生及び高校生に関する利用
できるデータがほとんどないことから、さらに広範囲の調査を実施して、実態の解明に
基づく対策を検討すべきであると考えられる。その際、予備検査法として、非侵襲的な
簡易ヘモグロビン測定法の活用を検討すべきであると思われる。

公開日・更新日

公開日
2006-04-21
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200501179C

成果

専門的・学術的観点からの成果
検診結果および食生活などの生活習慣に関するデータを解析し、医療機関を受診する
程の明確な自覚症状はない「潜在的な貧血」女性が20代2.2 %、30代7.0%、40代12.3%、
50代4.5%と、月経のある世代で加齢とともに増加し、40代でピークになることを解明
した。ダイエット等の影響というより、妊娠、出産を経験する世代の女性について留意
すべき鉄欠乏が主因である「潜在的な貧血」の危険性に改めて注目し、国際的にも対策を
検討すべきことを明らかにした。
臨床的観点からの成果
本研究課題で確認された「潜在的な貧血」女性は、医療機関を受診する機会が少なく、
明らかな異常を自覚するまで対処が遅れてしまう危険性があると考えられる。「潜在的
な貧血」の問題にとどまらず、生活習慣病一般についても、自覚症状が軽度で日常臨床
の場に訪れない軽度の健康上の異常者に的確に対処する研究の推進、システムの確立が、
予防医学の観点から、さらには適正、効率的な医療の推進のためにも重要と考えられる。
ガイドライン等の開発
鉄欠乏性貧血対策として、欧米では食料に鉄分を混和している例もあること、「食」を
軽視しがちな今日のわが国の若年世代のライフスタイルから、食品への鉄添加の是非が
論議されている。本研究により、ダイエット等の影響というより、妊娠、出産を経験す
る世代の女性に加齢とともに進行する鉄欠乏性の「潜在的な貧血」が多いことが判明した。
以上を踏まえ、実態解明を含む「潜在的な貧血」対策ガイドラインを検討すべきと考える。
その他行政的観点からの成果
医療機関を受診する機会が少ない「潜在的な貧血」者は、疾患統計にも反映されないが、
検診データを活用し、月経のある世代の成人女性で加齢とともに多くなる現状を明らか
にした。「潜在的な貧血」は、国民の健康増進、少子化対策として今日なお重要であり、受診前の潜在的な健康上の異常に的確に対処するために、検診データの疫学的な活用をさらに推進するとともに、広範囲の調査を実施し、現状を踏まえた対策を検討すべきで
ある。
その他のインパクト
医療機関を受診する機会が少ない「潜在的な貧血」は臨床現場で意識され難いが、国民
の健康意識の高まり、少子高齢化社会への不安感を考えると、広くその意義を周知して、
国民参加型の予防策を推進する必要がある。貧血は概念的に判り易い異常であり、予防
対策も有効に機能する可能性が大きい。「潜在的な貧血」以外にも自覚症状に乏しい健康
上の異常に的確に対処するために、検診データの有機的な活用を推進することも肝要である。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
0件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2015-11-20
更新日
-