地域脳卒中発症登録を利用した脳卒中医療の質の評価に関する研究

文献情報

文献番号
200501177A
報告書区分
総括
研究課題名
地域脳卒中発症登録を利用した脳卒中医療の質の評価に関する研究
課題番号
H16-健康-014
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
鈴木 一夫(秋田県立脳血管研究センター 疫学研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 斎藤 重幸(札幌医科大学医学部)
  • 小川 彰(岩手医科大学医学部)
  • 高松 道生(長野県厚生連佐久総合病院内科)
  • 喜多 義邦(滋賀医科大学医学部)
  • 万波 俊文(香川大学医学部)
  • 瀧下 修一(琉球大学医学部)
  • 笠置 文善(放射線影響研究所医学統計)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 健康科学総合研究
研究開始年度
平成15(2003)年度
研究終了予定年度
平成17(2005)年度
研究費
1,797,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
自治体が正確な予防対策を立案する上で脳卒中発症や有病者の予測値は必要である。我々は、日本全国の自治体単位で脳卒中の発症実態を推測できるシステムを作成し、インターネットで公開した。
研究方法
秋田県の脳卒中発症登録・追跡データから脳卒中発症率、日常生活動作割合を年齢・性・病型別に求め、自治体の将来推計人口を基に脳卒中発症者数と有病者数およびその日常生活動作別推計値を算出した。さらに、要介護認定者数と脳卒中有病者数の比をとり、自治体の標準高齢化率(市町村の65歳以上割合÷当該県の65歳以上割合)との相関をみた。
結果と考察
脳卒中の発症実態と脳卒中有病者数、要介護者数の2030年までの将来予測を行い、福祉サービスとの関係を日本の全ての自治体で明らかにした。この結果をhttp://www.stroke-project.com/に公開した。日本全体の推移では、人口は2005年から減少を続けるが、脳卒中有病者数は2020年まで増大し、要介護者数は2025年まで増大する。人口が減少しているのに、脳卒中有病者、要介護者数が増大するのはもっぱら人口の高齢化によるものである。
2005年の脳卒中の要介護者数に対する介護保険要介護認定者数の比は、1.3から3.9まで広く分布して市部は小さく、郡部は大きい。人口の高齢化に伴い大きくなる。道府県単位での要介護認定者数と脳卒中有病者数の比と自治体の標準高齢化率の相関係数は0.6から0.9の高い相関を示した。
この研究から脳卒中による要介護は集団の年齢が若いほどその影響が大きいことを定量的に示した。脳卒中を予防することで、中年や若齢老人(Young Old)の要介護者を減らすことができ、その結果、高齢老人(Old Old)を増加させて、老衰を含めた脳卒中以外の原因での要介護者が増加することが考えられる。介護サービスの質や種類を高齢社会にあわせてどのように変えていくかが、介護サービスを提供する側に重要となってくる。


結論
わが国の脳卒中発症率は1990年代から変化に乏しく、この状況は当分続くと思われる。日本の人口は2005年から常に減少を続けるが、高齢化のために脳卒中有病者数は2020年まで、要介護者数は2025年まで増大する。脳卒中による要介護は集団の年齢が若いほどその影響が大きく、人口の高齢化は脳卒中以外の原因での要介護認定者数が増大する。高齢者は平均余命が短く、この群の総介護量は若年からの脳卒中後遺症での総介護量よりは小さいと思われる。高齢社会では多様な介護サービスを迅速に提供できることが望まれる。

公開日・更新日

公開日
2006-04-18
更新日
-

文献情報

文献番号
200501177B
報告書区分
総合
研究課題名
地域脳卒中発症登録を利用した脳卒中医療の質の評価に関する研究
課題番号
H16-健康-014
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
鈴木 一夫(秋田県立脳血管研究センター 疫学研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 斎藤 重行(札幌医科大学医学部)
  • 小川 彰(岩手医科大学医学部)
  • 高松 道生(長野県厚生連佐久総合病院)
  • 喜多 義邦(滋賀医科大学医学部)
  • 万波 俊文(香川大学医学部)
  • 笠置 文善(放射線影響研究所)
  • 瀧下 修一(琉球大学医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 健康科学総合研究
研究開始年度
平成15(2003)年度
研究終了予定年度
平成17(2005)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
脳卒中発症登録を基礎に地域における福祉保健サービスを活用して、脳卒中発症者の在宅生活を支援することが目的である脳卒中情報システム事業の発症登録および脳卒中情報の利用実態はこれまで調査されていなかった。本研究では、1.脳卒中の情報がどれだけ集約され、どのような福祉保健サービスに連携して利用されているかを都道府県別に明らかにする。2.この調査に基づいて地域比較を行ない、事業を効率よく運用している地域と、利用が不十分な地域の違いを解析して、現在の状況に適合する運用法を提言する。
研究方法
1年目:脳卒中情報システム事業に関する文献およびWEBで開示されている情報を収集した。そのうえで、これまでの問題点をふまえて都道府県の事業担当者に対する調査票を作成し、郵送法で調査を実施した。
2年目:アンケート調査の結果から、脳卒中情報システム事業の問題点を明らかにし、対策を立てた。その方法は、対象集団の性、年齢別人口構成から脳卒中有病者数、日常生活動作別人数を全国の市町村ごとに2030年まで推計する方法を開発した。
3年目:介護保険での市町村別の要介護認定者数と上記推計モデルでの脳卒中有病者の中での介護者数との関係を解析し、介護保険での要介護認定者数の現在の傾向および将来動向を推測した。
結果と考察
介護保険制度による介護サービスが開始されて以来、脳卒中情報システム事業を廃止する自治体が多数になっていた。継続している自治体も事業の必要性に関して低い評価であり、介護保険による在宅介護の普及によって脳卒中情報システム事業は役割を終えた。しかし、脳卒中発症実態を知ることは施策を行なう上で重要との考えが道府県担当者の多数意見であった。個人情報保護法下での疾病登録を自治体が行なうことは困難であった。我々は全自治体の年齢別人口推計値から脳卒中の予測結果をホームページ(http://www.stroke-project.com/)に公開して自治体の要求に応えた。2005年の介護保険要介護認定者数との関係を解析した。都道府県単位で高齢化率が平均のところでは脳卒中からの要介護者推計値の2‐2.5倍が介護保険の要介護認定者数であり、住民の高齢化率が高くなるほどこの比は大きくなった。すなわち人口の高齢化は脳卒中以外の原因での要介護認定者を増加させることを定量的に示した。
結論
脳卒中情報システム事業は役割を終えた。行政にとって脳卒中発症実態を知ることは重要であるが困難なことでもあった。そこで、我々は対象集団の人口構成から、脳卒中有病者数、要介護者数を推計するシステムを作り、WEBで公開し結果の普及の責をはたした。

公開日・更新日

公開日
2006-04-18
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2006-11-28
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200501177C

成果

専門的・学術的観点からの成果
脳卒中発症者の平均余命を計算する方法を脳卒中発症登録・追跡のデータを利用して考案した。この結果に基づいて、脳卒中有病者数の推計が可能となり、追跡調査での日常生活動作別割合から、脳卒中発症者のなかでの要介護者数を明らかにした。
臨床的観点からの成果
脳卒中は往々にして急性期の治療や被害に焦点があてられるが、この研究では長期にわたる脳卒中実態を定量的に明らかにできた。このことは、脳卒中の臨床治療が関与する部分を脳卒中全体から総合的にみることが可能となり臨床治療と介護のバランスを数値で示すことにつながる。
ガイドライン等の開発
なし
その他行政的観点からの成果
研究結果は自治体の脳卒中予防事業に直接役立つものであり、全国都道府県の脳卒中情報システム担当者に研究結果を開示したインターネットのホームページアドレスを通知した。この内容は全国の市町村単位での2030年までの脳卒中有病者数、要介護者数の推計値を数値とグラフで表示したものである。
その他のインパクト
なし

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
0件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
1件
http://www.stroke-project.com/で研究結果を公表した。全国すべての市町村の脳卒中有病者数、要介護者数が2030年まで閲覧できる

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2015-11-20
更新日
-