生活習慣病予防対策に関わる新規遺伝子の検索と機能解析

文献情報

文献番号
200501175A
報告書区分
総括
研究課題名
生活習慣病予防対策に関わる新規遺伝子の検索と機能解析
課題番号
H16-健康-012
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
斯波 真理子(国立循環器病センター研究所バイオサイエンス部)
研究分担者(所属機関)
  • 横山 信治(名古屋市立大学大学院医学研究科)
  • 友池 仁暢(国立循環器病センター)
  • 伊藤 恒賢(山形大学医学部附属動物実験施設)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 健康科学総合研究
研究開始年度
平成15(2003)年度
研究終了予定年度
平成17(2005)年度
研究費
2,400,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
リポ蛋白質代謝異常は、動脈硬化性疾患の危険因子であり、中でも高LDL血症、高中性脂肪血症、低HDL血症は、重要な位置をしめる。本研究事業では、これらのリポ蛋白代謝異常の病因、病態に関連する新規遺伝子の探索と機能解析を、それぞれのモデル動物や培養細胞を用いて行い、新しいメカニズムを解明し、新しい動脈硬化症の予防法および治療法を開発することを目的とした。
研究方法
高LDL血症については、マウスに対し、高脂肪食負荷、およびアトルバスタチン負荷を行い、肝臓でのコレステロールに関わる遺伝子およびARHの遺伝子発現を検討した。高中性脂肪血症については、高中性脂肪血症ウサギラインの病態解析と、血清中の発現蛋白質のプロテオーム解析を行い、高中性脂肪血症の病態に関与すると考えられる蛋白質を同定した。低HDL血症については、ABCA1遺伝子の発現調節機構を培養細胞を用いて調べた。
結果と考察
高脂肪食負荷によりマウスの肝臓でのLDL受容体、HMGCoA reductase遺伝子の発現は抑制されるが、ARH遺伝子は発現が増強された。一方、アトルバスタチン投与により、LDL受容体、HMGCoA reductase遺伝子は発現が増強されるが、ARH遺伝子は発現に変化を認めなかった。これらのことから、ARHは、その発現調節機構が、LDL受容体やHMGCoA rerductaseなどが調節されているSREBPとは異なる因子により調節を受けていることが明らかになった。高中性脂肪血症ウサギでは、リポ蛋白リパーゼの活性が低下していることが明らかとなった。また、高中性脂肪ウサギ血清において発現が極端に低い蛋白として、アポリポプロテインAIVと、データベースに存在しない蛋白が検出され、病態に関わる新しい蛋白の存在が示唆された。ABCA1が、LXRを介して発現調節を受けること、カルシウム拮抗剤にても発現調節を受けること、ABCA1により作製されるHDLのサイズは2峰性であるが、ABCA7により差作製されるHDLは1峰性であることがわかり、HDL産生のしくみの一端が明らかになった。
結論
本研究により、ARHの新しい遺伝子発現調節機構が明らかになり、また、高中性脂肪血症に関わる新しい蛋白の存在が示唆され、HDLの新しい調節機構が明らかになった。

公開日・更新日

公開日
2006-04-18
更新日
-

文献情報

文献番号
200501175B
報告書区分
総合
研究課題名
生活習慣病予防対策に関わる新規遺伝子の検索と機能解析
課題番号
H16-健康-012
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
斯波 真理子(国立循環器病センター研究所バイオサイエンス部)
研究分担者(所属機関)
  • 横山 信治(名古屋市立大学大学院医学研究科)
  • 友池 仁暢(国立循環器病センター)
  • 伊藤 恒賢(山形大学医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 健康科学総合研究
研究開始年度
平成15(2003)年度
研究終了予定年度
平成17(2005)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
リポ蛋白質代謝異常は、動脈硬化性疾患の危険因子であり、中でも高LDL血症、高中性脂肪血症、低HDL血症は、重要な位置をしめる。本研究事業では、これらのリポ蛋白代謝異常の病因、病態に関連する新規遺伝子の探索と機能解析を、それぞれのモデル動物や培養細胞を用いて行い、新しいメカニズムを解明し、新しい動脈硬化症の予防法および治療法を開発することを目的とした。
研究方法
高LDL血症については、ARHの機能を、ノックアウト(KO)マウスを作製して病態解析を行った。培養細胞を用いて、in vitroでのARHの発現調節機構を明らかにした。さらに、マウスを用いて高脂肪食およびアトルバスタチン負荷を行い、肝臓でのコレステロール(Chol)に関わる遺伝子およびARHの遺伝子発現を検討した。高中性脂肪血症については、高中性脂肪血症ウサギラインの病態解析と、肝臓および脂肪組織、血清中の発現蛋白質のプロテオーム解析を行い、その病態に関与すると考えられる蛋白質を同定した。低HDL血症については、ABCA1遺伝子の発現調節機構を培養細胞を用いて調べた。
結果と考察
ARH-KOでは、LDL-Chol値が高値であり、LDLの肝臓への取り込み低下によるターンオーバーの遅延を認めた。初代培養肝細胞において、LDLの取り込みは低下を認めず、in vivoとin vitroでの結果の解離を認めた。培養細胞を用いて、ARHの発現がLDLやCholの存在の有無に関わらず、一定であることがわかった。in vivoでは、高脂肪食負荷により肝臓でのLDL受容体、HMGCoA reductase遺伝子の発現は抑制されるが、ARH遺伝子は発現が増強され、アトルバスタチン投与により、両遺伝子は発現が増強されるが、ARH遺伝子は発現に変化を認めなかった。ARHは、SREBPとは異なる因子により発現調節を受けていることが明らかになった。高中性脂肪血症ウサギでは、リポ蛋白リパーゼの活性が低下していること、血清において発現が極端に低い蛋白として、アポリポプロテインAIVと、データベースに存在しない蛋白が検出され、病態に関わる新しい蛋白の存在が示唆された。ABCA1が、LXRを介して発現調節を受けること、カルシウム拮抗剤にても発現調節を受けること、ABCA1により作製されるHDLのサイズが異なることがわかり、HDL産生のしくみの一端が明らかになった。
結論
本研究により、ARHの新しい遺伝子発現調節機構が明らかになり、また、高中性脂肪血症に関わる新しい蛋白の存在が示唆され、HDLの新しい調節機構が明らかになった。

公開日・更新日

公開日
2006-04-18
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200501175C

成果

専門的・学術的観点からの成果
動脈硬化性疾患の重要な危険因子であるリポ蛋白代謝異常として、高LDL血症、高中性脂肪血症、低HDL血症について、その病因、病態に関連する新規遺伝子の探索と機能解析を行った。高LDL血症の病態に関わる新しい分子としてARHの機能解析を行い、ARHのコレステロール代謝制御における役割を明らかにした。高中性脂肪血症の新しいモデル動物の樹立と病態解析を行い、中性脂肪代謝に関わる新しい蛋白の同定を行った。低HDL血症の病態に関わる分子としてABCA1の機能解析を行い、HDL産生制御機構を明らかにした。
臨床的観点からの成果
本研究において、高LDL血症、高中性脂肪血症、低HDL血症に関わる新しい分子の発見とその機能解析に成功した。ARHのコレステロール代謝における役割を明らかにすることができ、高コレステロール血症の新しい治療法を示唆することができた。メタボリックシンドロームの良いモデル動物をライン化してその病態に関わる新しい分子を同定した。さらに、ABCA1を介したHDL産生制御機構も明らかになった。本研究により、動脈硬化性疾患の新しい予防法および治療法の開発に直結する成果が得られた。
ガイドライン等の開発
該当しない
その他行政的観点からの成果
ARHはコレステロール代謝において重要な役割を果たしており、血清コレステロール値にも影響を及ぼすことなどから、この知見をもとに高コレステロール血症の新しい薬剤の開発が期待できる。メタボリックシンドロームのモデル動物のライン化とその病態に関わる新しい分子の同定により、高中性脂肪血症の新しい治療法の開発が期待される。また、ABCA1を介したHDLの産生制御機構が明らかになり、低HDL血症に対する治療という、全く新しい治療法の開発が期待できる。
その他のインパクト
ARHのコレステロール代謝に関わる役割については、日本動脈硬化学会のシンポジウムに2年連続で発表する機会を与えられ、国際動脈硬化学会にも口頭発表を行う機会を与えられるなど、日本国内だけでなく国際的に注目を浴びている。この知見を基礎にして、製薬会社との共同研究のもとで、新しい薬剤の開発を手がけている。

発表件数

原著論文(和文)
4件
原著論文(英文等)
53件
その他論文(和文)
3件
その他論文(英文等)
1件
学会発表(国内学会)
51件
学会発表(国際学会等)
7件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計8件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Shinji Yokoyama,Mariko Harada-Shiba,Atsuko Takagi,at al.
Disruption of autosomal Recessive hypercholesterolemia gene shows different phenotype in vitro and in vivo
Circ Res. , 95 , 945-952  (2004)
原著論文2
Shinji Yokoyama,Jin-ichi Ito,Yuko Nagayasu,et ai.
Astrocytes produce and secrete fibroblast growth factor-1 which promotes production of apoE-high density lipoprotein in a manner of autocrine action
J.Lipid Res. , 46 , 679-686  (2005)
原著論文3
Shinji Yokoyama
Assembly of high density lipoprotein by the ABCA1/apolipoprotein pathway
Curr.Opin.Lipidol. , 16 , 269-279  (2005)
原著論文4
Shinji Yokoyama,Michi Hayashi,Sumiko Abe-Dohmae,et al.
Heterogeneity of high density lipoprotein generated by ABCA1 and ABCA7
J.Lipid Res. , 46 , 1703-1711  (2005)
原著論文5
Shinji Yokoyama, Maki Tsujita,Cheng-Ai Wu,et al.
On the hepatic mechanism of HDL assembly by the ABCA1/ApoA-1 Pathway
J.Lipid Res. , 46 , 154-162  (2005)
原著論文6
Shinji Yokoyama
Assembly of higt density lipoprotein
Arteriosclr.Thromb.Vasc.Biol. , 26 , 20-27  (2006)
原著論文7
Shinji Yokoyama,Jin-ichi Ito,Alireza Kheirollah,et al.
Apolipoprotein A-1 increases association of cytosolic cholesterol and caveolin-1 with microtubule-cytoskeleton in rat astrocytes
J.Neurochem.  (2006)

公開日・更新日

公開日
2015-11-20
更新日
-