分子疫学に基づいた高血圧・糖尿病の予防的介入

文献情報

文献番号
200501173A
報告書区分
総括
研究課題名
分子疫学に基づいた高血圧・糖尿病の予防的介入
課題番号
H16-健康-010
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
今井 潤(東北大学大学院薬学研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 岡 芳知(東北大学大学院医学系研究科)
  • 荻原 俊男(大阪大学大学院医学系研究科)
  • 檜垣 實男(愛媛大学医学部)
  • 松原 洋一(東北大学大学院医学系研究科)
  • 大久保 孝義(東北大学大学院薬学研究科)
  • 戸恒 和人(東北大学大学院薬学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 健康科学総合研究
研究開始年度
平成15(2003)年度
研究終了予定年度
平成17(2005)年度
研究費
3,060,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
高血圧・糖尿病の発症・進展機序に関わる遺伝要因、及びこれらと相互作用を有する環境要因の解明により、遺伝子型に応じた予防医療への方図を探ること。
研究方法
詳細な臨床情報・環境要因・遺伝要因のデータが整備されている前向きコホート研究である大迫研究において、高血圧・糖尿病と関連する遺伝要因および環境要因の検討を行った。
(倫理面への配慮)
大迫研究は定期的に東北大学医学部倫理委員会の承認を受けて継続されている。 またヒトの遺伝子解析研究は、3省庁合同ガイドライン「ヒトゲノム・遺伝子解析研究に関する倫理指針」に基づき、東北大学・大阪大学・愛媛大学の各医学部倫理委員会の承認を受けている。
結果と考察
1) RGS2 (regulator of G protein signaling-2) 遺伝子・ウェルナー症候群WRN遺伝子の各多型が、 それぞれ高血圧発症・糖尿病発症と関連していることを明らかにした。 2)βアドレナリン受容体の各種多型が、肥満に伴う血圧上昇や血圧日間変動に関連すること、 Urocortin3遺伝子多型が医療環境下に血圧上昇(白衣効果)と関連していることを示した。 3) 近年のライフスタイル変化によるインスリン需要増大のなかで膵ベータ細胞小胞体ストレス反応関連遺伝子が糖尿病の重要候補遺伝子であることを示した。 4) Interleukin-10 遺伝子多型が長寿と関連している可能性を示した。 5) 詳細な家族歴・血圧情報に基づき、長寿である親の子の血圧レベルは低く、高血圧有病率も低いことを見出した。6) 大迫女性住民におけるメタボリック症候群の頻度は1%であるがインスリン抵抗性は20%に存在することを見出した。 7) 24時間血圧・家庭血圧を用い、危険因子表現型としての新規血圧パラメーターを同定した。 8) イムノクロマトグラフィー試験紙を用いて簡便に遺伝子型を判定し得る遺伝子診断法CASSOH法、および唾液からの簡易DNA調製を行う新技術を開発した。
結論
大迫研究において、詳細な表現型に基づき高血圧・糖尿病と関連するいくつかの遺伝・環境要因及びそれらの相互作用を同定した。また簡便な遺伝子診断を行う新技術を開発した。今後、本研究成果に基づいて効果的な予防的介入方法に関する検討を行うことにより、各個人のライフスタイル・遺伝的要因に応じたよりきめ細かく、かつ無駄のない高血圧・糖尿病の予防対策が可能となることが期待される。

公開日・更新日

公開日
2006-04-18
更新日
-

文献情報

文献番号
200501173B
報告書区分
総合
研究課題名
分子疫学に基づいた高血圧・糖尿病の予防的介入
課題番号
H16-健康-010
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
今井 潤(東北大学大学院薬学研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 岡 芳知(東北大学大学院医学系研究科)
  • 荻原俊男(大阪大学大学院医学系研究科)
  • 檜垣實男(愛媛大学医学部)
  • 松原洋一(東北大学大学院医学系研究科)
  • 大久保孝義(東北大学大学院薬学研究科)
  • 戸恒和人(東北大学大学院薬学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 健康科学総合研究
研究開始年度
平成15(2003)年度
研究終了予定年度
平成17(2005)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
高血圧・糖尿病の発症・進展機序に関わる遺伝要因、及びこれらと相互作用を有する環境要因の解明により、遺伝子型に応じた予防医療への方図を探ること。
研究方法
詳細な臨床情報・環境要因・遺伝要因のデータが整備されている前向きコホート研究である大迫研究において、高血圧・糖尿病と関連する遺伝要因および環境要因の検討を行った。
結果と考察
1) RGS2遺伝子・ウェルナー症候群WRN遺伝子の各多型が、 それぞれ高血圧発症・糖尿病発症と関連していることを明らかにした。 2) 肝細胞増殖因子HGF遺伝子多型が非肥満者・女性の高血圧リスクと関連している可能性を示した。 3) Urotensin2遺伝子多型が高血圧・糖尿病と、GPLD1遺伝子・味覚細胞うまみ受容体TAS1R2遺伝子・転写因子FOXC2の各遺伝子多型が糖尿病と、アディポネクチン遺伝子・Uncoupling Protein2遺伝子・サイアザイド感受性NaCl共輸送体遺伝子の各遺伝子多型が高血圧と、Urocortin3遺伝子・βアドレナリン受容体の各遺伝子多型が種々の血圧変動と、またInterleukin-10 遺伝子多型が長寿と関連している可能性を示した。 4) 詳細な家族歴・血圧情報に基づき、高血圧の同胞相対危険度(λs)を算出した(λs=2.311)。 長寿である親の子の血圧レベルは低く、高血圧有病率も低いことを見出した。 5) 高血圧・糖尿病発症と共通に関連する環境要因として、高齢・肥満を同定した。 6) 75g経口糖負荷試験2時間後の血漿インスリン値が糖尿病リスクに関連していることを明らかにした。 大迫女性住民におけるメタボリック症候群の頻度は1%であるがインスリン抵抗性は20%に存在することを見出した。 7) 24時間血圧・家庭血圧を用い、危険因子表現型としての新規血圧パラメーターを同定した。 8) イムノクロマトグラフィー試験紙を用いて簡便に遺伝子型を判定し得る遺伝子診断法CASSOH法を開発した。また、唾液からの簡易DNA調製を行う新技術を開発した。
結論
今後、本研究成果に基づいて効果的な予防的介入方法に関する検討を行うことにより、各個人のライフスタイル・遺伝的要因に応じたよりきめ細かく、かつ無駄のない高血圧・糖尿病の予防対策が可能となることが期待される。

公開日・更新日

公開日
2006-04-18
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2008-01-31
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200501173C

成果

専門的・学術的観点からの成果
RGS2・ウェルナー症候群WRN・肝細胞増殖因子HGF・Urotensin2・GPLD1・味覚細胞うまみ受容体TAS1R2・転写因子FOXC2・アディポネクチン・Uncoupling Protein2・サイアザイド感受性NaCl共輸送体・Urocortin3・βアドレナリン受容体・Interleukin-10 の各遺伝子多型が高血圧または糖尿病と関連していることを明らかにした。また詳細な家族歴・血圧情報に基づき、高血圧の同胞相対危険度(λs)を算出した。
臨床的観点からの成果
24時間血圧・家庭血圧を用い、危険因子表現型としての新規血圧パラメーターを同定した。高血圧・糖尿病発症と共通に関連する環境要因として、高齢・肥満を同定した。 75g経口糖負荷試験2時間後の血漿インスリン値が糖尿病リスクに関連していることを明らかにした。大迫女性住民におけるメタボリック症候群の頻度は1%であるがインスリン抵抗性は20%に存在することを見出した。 
ガイドライン等の開発
24時間血圧・家庭血圧に関する成果の一部は、2004年日本高血圧学会ガイドラインに引用された。
その他行政的観点からの成果
イムノクロマトグラフィー試験紙を用いて簡便に遺伝子型を判定し得る遺伝子診断法CASSOH法、およびCASSOH法のマルチプレックス化により複数の遺伝子型判定を可能としたCASSOH-ELISA法を開発した。また、唾液からの簡易DNA調製を行う新技術を開発した。今後の健診・臨床への応用が期待される。
その他のインパクト
大迫町における家庭血圧測定の取り組みは、NHK「ご近所の底力」にて紹介された。また主任研究者・分担研究者は日本高血圧学会・糖尿病学会・日本心臓財団・日本薬学会などにおける市民公開講座等の講師として、家庭血圧・高血圧・糖尿病に関する正しい知識の普及活動を行った。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
56件
その他論文(和文)
3件
その他論文(英文等)
5件
学会発表(国内学会)
51件
学会発表(国際学会等)
33件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
8件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Katsuya T, Sugimoto K, Hozawa A, et al.
Genetic risk factors for cerebral infarction using data from a largescale genetic epidemiological study: the Ohasama Study.
Geriat Gerontol Int , 3 , 150-153  (2003)
原著論文2
Iwashima Y, Katsuya T, Ishikawa K, et al.
Hypoadiponectinemia is an independent risk factor for hypertension.
Hypertension , 43 , 1318-1323  (2004)
原著論文3
Ohkubo T, Asayama K, Kikuya M, et al.
How many times should blood pressure be measured at home for better prediction of stroke risk? : 10-year follow-up results from the Ohasama study.
Journal of Hypertension , 22 , 1099-1104  (2004)
原著論文4
Hozawa A, Ohkubo T, Kikuya M, et al.
Prognostic Value of Home Heart Rate for Cardiovascular Mortality in the General Population: The Ohasama Study.
American Journal of Hypertension , 17 , 1005-1010  (2004)
原著論文5
Shao C, Suzuki Y, Kamada F, et al.
Linkage and association of childhood asthma with the chromosome 12 genes.
J Hum Genet , 49 , 115-122  (2004)
原著論文6
Kanno K, Suzuki Y, Yamada A, et al.
Association between nonsyndromic cleft lip with or without cleft palate and the glutamic acid decarboxylase 67 gene in the Japanese population.
Am J Med Genet , 127 , 11-16  (2004)
原著論文7
Hasegawa K, Tamari M, Shao C, et al.
Variations in C3, C3a receptor, and C5 genes affect susceptibility to bronchial asthma.
Hum Genet , 115 , 295-301  (2004)
原著論文8
Hiratsuka M, Ebisawa A, Matsubara Y, et al.
Genotyping of single nucleotide polymorphisms (SNPs) influencing drug response by competitive allele-specific short oligonucleotide hybridization (CASSOH) with immunochromatographic strip.
Drug Metabol Pharmacokin , 19 , 303-307  (2004)
原著論文9
Kamada F, Suzuki Y, Shao C, et al.
Association of the hCLCA1 gene with childhood and adult asthma.
Genes Immun , 5 , 540-547  (2004)
原著論文10
Metoki H, Ohkubo T, Kikuya M, et al.
Prognostic significance for stroke of a morning pressor surge and a nocturnal blood pressure decline: the Ohasama Study.
Hypertension , 47 , 149-154  (2006)
原著論文11
Hashimoto J, Watabe D, Hatanaka R, et al.
Enhanced radial late systolic pressure augmentation in hypertensive patients with left ventricular hypertrophy.
American Journal of Hypertension , 19 , 27-32  (2006)
原著論文12
Ohkubo T, Kikuya M, Metoki H, et al.
Prognosis of “masked hypertension” and “white-coat hypertension” detected by 24-Hour ambulatory blood pressure monitoring: 10-year follow-up from the Ohasama study.
Journal of the American College of Cardiology , 46 , 508-515  (2005)
原著論文13
Kikuya M, Ohkubo T, Asayama K, et al.
Ambulatory blood pressure and 10-year risk of cardiovascular and noncardiovascular mortality: the Ohasama study.
Hypertension , 45 , 240-245  (2005)
原著論文14
Ugajin T, Hozawa A, Ohkubo T, et al.
White-Coat hypertension as a risk factor for development of home hypertension: the Ohasama study.
Archives of Internal Medicine , 165 , 1541-1546  (2005)
原著論文15
Asayama K, Ohkubo T, Kikuya M, et al.
Use of 2003 European Society of Hypertension - European Society of Cardiology guidelines for predicting stroke using self-measured blood pressure at home: the Ohasama study.
European Heart Journal , 26 , 2026-2031  (2005)
原著論文16
Yamaguchi J, Hozawa A, Ohkubo T, et al.
Factors affecting home-measured resting heart rate in the general population: The Ohasama Study.
American Journal of Hypertension , 18 , 1218-1225  (2005)
原著論文17
Iwashima Y, Katsuya T, Ishikawa K, et al.
Association of hypoadiponectinemia with smoking habit in men.
Hypertension , 45 , 1094-1100  (2005)
原著論文18
Otomo J, Kure S, Shiba T, et al.
Electrophysiological and histopathological characteristics of progressive atrioventricular block accompanied by familial dilated cardiomyopathy caused by a novel mutation of lamin A/C gene.
J Cardiovasc Electrophysiol , 16 , 137-145  (2005)
原著論文19
Suzuki Y, Yang X, Aoki Y, et al.
Mutations in the holocarboxylase synthetase gene HLCS.
Hum Mutat , 26 , 285-290  (2005)
原著論文20
Niihori T, Aoki Y, Narumi Y, et al.
Germline KRAS and BRAF mutations in cardio-facio-cutaneous syndrome.
Nat Genet , 38 , 294-296  (2006)

公開日・更新日

公開日
2015-11-20
更新日
-