前向きコホート研究による先天異常モニタリング、特に尿道下裂、停留精巣のリスク要因と内分泌かく乱物質に対する感受性の解明

文献情報

文献番号
200501171A
報告書区分
総括
研究課題名
前向きコホート研究による先天異常モニタリング、特に尿道下裂、停留精巣のリスク要因と内分泌かく乱物質に対する感受性の解明
課題番号
H17-化学-013
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
水上 尚典(北海道大学大学院医学研究科生殖・発達医学講座産科・生殖医学分野)
研究分担者(所属機関)
  • 遠藤 俊明(札幌医科大学産婦人科学講座)
  • 石川 睦男(旭川医科大学病院)
  • 櫻木 範明(北海道大学大学院医学研究科生殖・発達医学講座婦人科学分野)
  • 野々村 克也(北海道大学大学院医学研究科外科治療学講座腎泌尿器外科学分野)
  • 藤田 正一(北海道大学大学院獣医学研究科環境獣医科学講座毒性学分野)
  • 中澤 裕之(星薬科大学薬品分析化学講座)
  • 飯田 隆雄(福岡県保健環境研究所保健科学部)
  • 佐田 文宏(北海道大学大学院医学研究科予防医学講座公衆衛生学分野)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 化学物質リスク研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究費
70,965,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
内分泌かく乱物質では次世代影響が懸念される。そこで本研究では、尿道下裂、停留精巣等の先天異常の疫学研究をpopulation-basedで行い、我が国における発生率の増加の有無、リスク要因を検討する。
研究方法
北海道の39産科施設の協力を得て、妊婦を対象に前向きコホートを設定し、55のマーカーとなる先天障害についてモニタリングを行う。ダイオキシン類、有機フッ素系化合物の曝露量の測定、それらに関連の深い代謝酵素の遺伝子多型を解析し、リスク評価を行う。併せて症例対照研究も行なう。
結果と考察
平成18年1月までの参加妊婦数は9721人であった。新生児個票の戻った5998人中、先天性心疾患28人、ダウン症候群10人、口唇口蓋裂8人、副耳、水腎症各6人、多指症5人、停留精巣4人等で、尿道下裂は2人であった。既に出産を終えた妊婦1789人の妊娠12週時の血清葉酸の平均値は7.3±2.4ng/mlで、葉酸値が5.7ng/ml以下であると出生時体重との間に負の関連がみられ、子宮内発育遅延のリスクが上昇した。妊婦70人の母体血中及び60人の母乳中ダイオキシン類平均濃度は、各々13.42 、11.23pg-TEQ/g lipidであった。10年前と比較すると約1/2程度に低下していた。しかし、母体血有機フッ素系化合物を分析した結果、PFOS及びPFOAは447検体の9割以上で検出された。尿道下裂の症例対照研究では、CYP19遺伝子 R264C多型において、変異型ではオッズ比が有意に上昇し、ホルモンに対する母と児双方の感受性素因の関与が示唆された。尿道下裂症例の長期予後の調査では、尿の切れなど機能障害の割合が高かった。また、COMT遺伝子V158M多型と子宮内発育遅延、IL1A遺伝子A114S多型と早産、PAPPA遺伝子Y1224S多型と不育症との関連がみられた。
結論
葉酸値が5.7ng/ml以下であると出生時体重との間に負の関連がみられ、子宮内発育遅延のリスクが上昇した。ダイオキシン類濃度は低下傾向が認められたが、有機フッ素系化合物は広く曝露している危険性が示唆され、今後、そのほかの内分泌かく乱物質について継続的な調査が必要と考えられた。今後も前向き研究を継続し、尿道下裂や停留精巣などの先天異常や子どもの発達など次世代影響と内分泌かく乱物質などの関係、遺伝的な感受性素因などについての疫学的な検討でリスク評価を進めることが必要である。

公開日・更新日

公開日
2006-06-07
更新日
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