環境ナノ粒子の動脈硬化促進メカニズムの解明

文献情報

文献番号
200501169A
報告書区分
総括
研究課題名
環境ナノ粒子の動脈硬化促進メカニズムの解明
課題番号
H17-化学-008
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
岩井 直温(国立循環器病センター研究所疫学部)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 化学物質リスク研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究費
18,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
ナノ粒子・マテリアルの人体に対する影響を体系的に理解する。特に、動脈硬化を促進させるのか、血栓線溶系への影響、血圧への影響、自律神経系への影響などを中心に解析する。本研究の成果により、ナノ粒子リスクに関する安全対策確立の一助となることを目指す。
研究方法
血管内皮細胞に対するナノ粒子の影響を調査する。細胞膜への障害、増殖能への影響、細胞死を招くのか、などを、酸化ストレス、炎症性反応、アポトーシス、小胞体ストレスなどの観点から明らかにする。また内皮細胞に特徴的な機能(NOやPGI2産生・ギャップ・ジャンクションの発現など)がどのように修飾されるのかも明らかにする。血小板や単球(マクロファージ)に対する直接作用も検討する。
ナノ粒子投与による生体内分布の解明および生理機能への影響調査を行う(主に急性効果)。今年度は、ラットあるいはマウスをに対する、吸入および経口投与の手法開発を目指す。ナノ粒子の毒性が強い可能性もあり、実験者、周りの環境への影響を考慮し、適切な処理施設を持つ委託業者と相談しながら進める予定である。
結果と考察
カーボンブラック(CB)は内皮細胞に直接作用し、細胞障害作用と増殖抑制効果を併せ持つこと、更に、動脈硬化促進性の炎症性メディエーター発現を増加させることが明らかとなった。水溶性フラーレンも、同様、血管内皮細胞に直接作用し、細胞障害性並びに増殖抑制効果を持つことが明らかになった。しかしながら、CBは炎症性メディエーターの発現を促進するのに対して水溶性フラーレンはユビキチンープロテアソーム機構の遺伝子群の発現を促進した。粒子により細胞障害のメカニズムが異なり、ナノ粒子ごとの検討が必要であると思われた。血小板に対する作用では、水溶性フラーレンがADPによる血小板凝集反応を促進させることが観察された。粒子径が平均200nm程度のCBを曝露するシステムの構築を行ない、ラットへの曝露実験を行った。
結論
ディーゼル排気ガスの代用としてのCB、環境中に流出し易いものの代表としての水溶性フラーレン、両者共に、培養内皮細胞に対して細胞毒性を示した。更に水溶性フラーレンは血小板凝集を促進させる作用もあった。心筋梗塞などの血管障害を引き起こす可能性は高いと考えられた。今後、in vivoでの検討を目指す予定である。

公開日・更新日

公開日
2006-06-06
更新日
-