化学物質の標的としての膜機能タンパク質発現系を利用したリスク評価法に関する研究

文献情報

文献番号
200501167A
報告書区分
総括
研究課題名
化学物質の標的としての膜機能タンパク質発現系を利用したリスク評価法に関する研究
課題番号
H17-化学-006
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
大和田 智彦(東京大学大学院 薬学系研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 中澤 憲一(国立医薬品食品衛生研究所 薬理部)
  • 赤羽 悟美(東邦大学医学部薬理学教室)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 化学物質リスク研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究費
21,250,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
エストロゲンアンタゴニストであるタモキシフェンに含まれるジアリールエチレン構造を有する化合物を合成し非ステロイド作用として電位依存性あるいはリガンド依存性イオンチャネルに対する作用を調査する。また自然界に豊富に存在する松脂の成分であるデヒドロアビエチン酸の誘導体の化学合成を行い,天然資源誘導体が持つイオンチャネルに対する作用を調査する。
研究方法
ATP受容体チャネル(P2X2受容体)をアフリカツメガエル卵母細胞に発現させた。この卵母細胞に双ガラス電極膜電位固定法を適用し,タモキシフェンをのぞく化合物は本研究事業の主任研究者である大和田の研究室で合成された誘導体について膜電流測定を行なった。また,Ca2+依存性K+チャネル、遅延整流性K+チャネル、電位依存性Ca2+チャネル、電位依存性Na+チャネル、Na+-Ca2+交換体の哺乳動物細胞を用いた一過性発現系の構築を行った。
結果と考察
タモキシフェン類縁化合物が1 nMあるいは10 nMという極めて低い濃度で効果を示した。非ホルモン性の急性の作用がこのような低濃度で認められることはこれまで看過されていた可能性もあり,種々の化学物質の有害性を検討する上で考慮に入れる可能性も考えられる。
Ca2+依存性K+チャネルの活性に対するタモキシフェン誘導体化合物の作用を検討した。タモキシフェンは10 μMの濃度で弱い増強を示した.誘導体が1-10 μMにおいて増強作用を示した。一方、12,14ジクロロデヒドロアビエチン酸は10 μMにおいて弱い増強作用を示したのに対し、誘導体が著明なCa2+依存性K+チャネル開口作用を示した。
結論
アンチエストロゲンであるタモキシフェンおよびそのフラグメント構造を持つ関連化合物のイオン・チャネル型ATP受容体に対する作用をアフリカツメガエル卵母細胞発現系で行ない, nMという低濃度で作用を示す化合物も検出され評価系の有用性が確認された。哺乳類細胞発現系を用いた化学物質リスク評価系として各種イオンチャネル(Ca2+チャネル、Na+チャネル、K+チャネル、Na+-Ca2+交換体)の一過性発現系を構築した。その一部を用いてタモキシフェン誘導体およびデヒドロアビエチン酸の誘導体について作用を検討し、いくつかの化合物がカルシウム依存性K+チャネルに対して著明な開口作用を示すことを見出した。

公開日・更新日

公開日
2006-06-06
更新日
-