核内受容体結合能およびホルモン活性同時測定法による化学物質リスク評価

文献情報

文献番号
200501158A
報告書区分
総括
研究課題名
核内受容体結合能およびホルモン活性同時測定法による化学物質リスク評価
課題番号
H17-化学-011
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
下東 康幸(九州大学大学院 理学研究院)
研究分担者(所属機関)
  • 下東 美樹(福岡大学 理学部)
  • 野瀬 健(九州大学大学院 理学研究院)
  • 松島 綾美(九州大学大学院 理学研究院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 化学物質リスク研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究費
29,400,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
我々は、化学物質の内分泌かく乱作用性を高精度に予測する方法として、「化学物質のホルモン受容体への結合に伴う受容体コンホメーション変化を感知・センシングする」という、新しい着想に基づく「ホルモンの受容体結合性およびホルモン活性の同時測定評価法」の開発に成功した。内分泌かく乱作用は、核内受容体が複合的に関与する複雑な制御機構に対して化学物質が影響を及ぼす結果として発現される可能性が高い。本研究では、それぞれの核内受容体に対するコンホメーション変化センシング抗体を作製し、ヒト核内受容体48種すべてに対する化学物質の内分泌かく乱作用性の予測・順位付けを行うことを目的とする。
研究方法
センシング抗体として、化学合成した抗原ペプチドを免疫して、ウサギ・ポリクローナルおよびマウス・モノクローナル抗体を調製する。また、抗体ファージディスプレイ法を用いてセンシング抗体を取得する。これらを用いた競合ELISA法で化学物質をアッセイし、内分泌かく乱作用性の順位付けを行う。
結果と考察
甲状腺ホルモン受容体α型、β型(TRα、TRβ)を初めとして新たに17種の核内受容体についてポリクローナルセンシング抗体の作製を完了した。現在、エストロゲン受容体α型(ERα)など既にアッセイ法を確立したもの7種を含め、合計22種について統一的なアッセイ法の確立に取り組んでいる。ファージ抗体およびモノクローナル抗体についても、GR、TR、AR等についてクローンのスクリーングから有効なクローンを得ることに成就した。特に、GRファージ抗体についてはアッセイ系を確立した。一方、センシング抗体に対して化学物質が100%結合したような異常な応答性を示したエストロゲン関連受容体γ型(ERRγ)について受容体結合試験等で精査した。その結果、ビスフェノールAがERRγに非常に強く結合してinverseアンタゴニスト活性を示すという、全く新規な事実が判明した。これは、ERRγを介して低用量のビスフェノールAが内分泌かく乱作用を発現する可能性を示唆するものである。
結論
核内受容体コンホメーション変化センシング抗体を用いての化学物質のスクリーニング法を確立した。ビスフェノールAがERRγに非常に強く結合してinverseアンタゴニスト活性を示すことを明らかとした。こうした化学物質の発見、核内受容体の発見は、試験する核内受容体が増えると当然ながら予想される事態であり、当初計画に付け加えて、鋭意に取り組む必要がある。48種すべての核内受容体をターゲットとする研究、試験の重要性が強調される。

公開日・更新日

公開日
2006-06-06
更新日
-