化学物質感受性の個人差を決定する遺伝子的要因の検索とその作用機構解析

文献情報

文献番号
200501157A
報告書区分
総括
研究課題名
化学物質感受性の個人差を決定する遺伝子的要因の検索とその作用機構解析
課題番号
H17-化学-010
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
永沼 章(東北大学 大学院薬学研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 久下 周佐(東北大学 大学院薬学研究科)
  • 大橋 一晶(東北大学 大学院薬学研究科)
  • 黄 基旭(東北大学 大学院薬学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 化学物質リスク研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究費
33,700,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
健康影響が懸念されている化学物質や重金属類に対する感受性決定遺伝子を網羅的に検索・同定し、その作用機構を解明することを目的とする。
研究方法
siRNA発現ライブラリーを用いてヒトの各遺伝子をそれぞれノックダウンさせることによって、発現量の減少が細胞の化学物質感受性に影響を及ぼす遺伝子群を検索した。同様に、酵母を用いた信頼性の高い機能遺伝子検索法による感受性決定遺伝子の検索も行った。
結果と考察
 siRNAライブラリー導入細胞(HEK293細胞)をメチル水銀で処理した後に、全細胞中での導入siRNA発現量をマイクロアレイ法で解析して各siRNA導入細胞の生存率を求めたところ、高い発現量を示したsiRNAが85種存在した。この中からランダムに選んだ10種についてそれぞれの遺伝子を各々dsRNAによってノックダウンさせた際のメチル水銀感受性を確認した結果、ノックダウンによってメチル水銀耐性を与える遺伝子3種(UBE4B、ATF3、UTF1)が同定された。また別に、siRNAライブラリー導入細胞をメチル水銀処理した際に増殖可能な細胞を検索したところ、グルタミン酸の代謝に関わるTgm4、Grm6、Oat、及びピルビン酸生成に関わるEno2のノックダウンが細胞にメチル水銀耐性を与えることが判明した。メチル水銀毒性とピルビン酸との関係を検討したところ、ヒト脳由来細胞であるIMR32のメチル水銀感受性をピルビン酸が顕著に増強させることが判明した。同様の現象が酵母でも認められ、ピルビン酸のミトコンドリアへの流入促進がメチル水銀毒性を増強させることが明らかとなった。ミトコンドリア中に蓄積したピルビン酸はアセチルCoAへの変換およびそれに続くTCAサイクルでの代謝を受けることなくメチル水銀毒性を増強することが判明した。また、酵母を用いた感受性決定遺伝子検索法についても検討し、これまでの我々の方法を改良した新しい高効率の感受性決定遺伝子検索法を確立することができた。本法によって亜ヒ酸に対する感受性に影響を与える遺伝子を検索したところ、欠損により亜ヒ酸感耐性を与える遺伝子59種、高感受性を与える遺伝子83種が同定された。
結論
これまでの我々の方法を改良した新しい高効率の感受性決定遺伝子検索法を確立することができた。今後これらの方法を用いることによって、化学物質感受性決定遺伝子が同定されるものと期待される。

公開日・更新日

公開日
2006-06-06
更新日
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