化学物質による子どもへの健康影響に関する研究―恒常性維持機構発達の過渡特性に立脚したリスク評価研究―

文献情報

文献番号
200501155A
報告書区分
総括
研究課題名
化学物質による子どもへの健康影響に関する研究―恒常性維持機構発達の過渡特性に立脚したリスク評価研究―
課題番号
H17-化学-001
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
江馬 眞(国立医薬品食品衛生研究所安全性生物試験研究センター)
研究分担者(所属機関)
  • 桑形 麻樹子(食品薬品安全センター・秦野研究所・試験部・安全性試験室)
  • 中島 欽一(奈良先端科学技術大学院大学・分子神経分化制御学分野)
  • 竹田 潔(九州大学・生体防御医学研究所・発生工学分野)
  • 渡邉 肇(自然科学研究機構・基礎生物学研究所・岡崎統合バイオサイエンスセンター・生命環境)
  • 田上 昭人(国立成育医療研究センター・薬剤治療研究部)
  • 菅野 純(国立医薬品食品衛生研究所・安全性生物試験研究センター・毒性部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 化学物質リスク研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究費
60,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は、離乳や性成熟などの外的・内的な大変動を経て成人に至る過程で子どもが経験する、高次恒常性維持機構の過渡的アンバランスの特性を踏まえた、化学物質の有害作用発現の子どもとしての特異性を解明することである。
研究方法
研究班を「恒常性維持機構発達解析」と「外挿問題解析」に分けて組織する。「恒常性維持機構発達解析」は更に、発生成長段階検討、神経、免疫、及び内分泌に分け、「外挿問題解析」は、化学物質の大人への影響評価結果を子どもへの評価に外挿する研究と、実験動物とヒトとの間を結びつける研究とに分ける。
結果と考察
「恒常性維持機構発達解析」:紫外線吸収剤DBHCBを6週齢のラットに反復経口投与し、雄でのみ肝臓重量増加等を認め、新生児期投与では雌雄ともに肝臓への影響が認められた。BrdUのラット妊娠9-15日投与で出生児に多動性障害が認められ、9-10日投与では多動性障害はみられず、投与が後期になるほど多動性障害が顕著になる結果を得た。マウス神経幹細胞を用い、催奇形物質であるレチノイン酸がマウスES細胞の早期アストロサイト分化を誘導し、抗痙攣剤であり自閉症を誘発するバルプロ酸が神経幹細胞からオリゴデンドロサイト分化を抑制することを見出した。自然免疫系がToll-like receptorを介して病原体を認識し活性化されることを明らかにし、さらに核に発現するIkB分子IkBNSが、自然免疫を介した炎症刺激により誘導される遺伝子発現の一部を選択的に抑制し、炎症程度を調節していることを個体レベルで明らかにした。マウスの新生児期、幼若期、成熟期にジエチルスチルベストロールを曝露し、DNAマイクロアレイにより膣遺伝子発現変化を解析した。「外挿問題解析」:ヒドロキシクエン酸による精巣毒性が若齢ほど強く発現することをマウスを用いて見いだし、そのメカニズムを精巣恒常性維持機構発達と関連づけて解析した。マウス胚性幹細胞を用いたEST法にて薬物の毒性評価を行い、5種類中4種類は既存情報と同程度の毒性を示した。
結論
「子どものリスク評価」を科学的に検討する基礎とするため、発生成長段階検討、脳神経系、免疫系、内分泌系、及び外挿問題解析の各テーマについて基礎研究を推進し、次年度につながる成果を上げた。今後も同構成で基礎研究を進め、知見を集積する。

公開日・更新日

公開日
2006-06-06
更新日
-